第24話 ぷんぷん

「ふぅ~……」


(さてと、黒板消しも終わったし、待ちに待った――昼休みだ!

 高嶺さんがさっきお弁当を持って教室を出ていったのを見たし、僕も手を洗ってから弁当を持って中庭にいこう――!)


「しかし……もし、高嶺さんがいなかったら……」


(手を洗い終わって、弁当を持って――もうすぐで中庭に着くけど……高嶺さん、ホントにいるのかな……?

 いや、一緒に食べる約束をした訳じゃないし、僕が勝手に良いように解釈しただけかもしれないから、いなくても何も文句はないんだけど……そうだと、寂しいな。そう思っちゃうのは自分勝手なのかな……。

 とにかく、この角を曲がって、眩しかったら――)


「いた……」


(――いてくれた。ヤバい、勝手に嬉しくなって走り出しちゃってるよ)


「た、高嶺さん……お待たせしました」


「……いえ」


(あ、あれ? 一瞬だけ、パアッっと輝いたような気がしたけど、すぐにプイッってそっぽを向かれた!?)


「あの、高嶺さん……どうかしました?」


「……いえ」


(も、もしかして、来るのが遅かったことに怒ってるの!?)


「ご、ゴメン、高嶺さん。来るのが遅くなって……黒板消しに予想以上に時間かかっちゃって……」


「……いえ」


(遅れたことに怒ってるのじゃないのか!? なんか、段々高嶺さんからぷんぷんすかすかぷんすかぷんすかってのが見える気がするんだが……分からん!)


「え、え~っと、高嶺さん……僕、なにか高嶺さんにしましたか?」


「……どうして、そう思うんですか?」


「いや、その……機嫌、悪そうに見えるので……」


「……あの子とはなにを……」


「え……」


「だ、だからですね! あの子とは……か、笠井さんとは何を話していたんですか!?」


(……ええええええっ!? ま、まだ、朝のこと気にしてるんですか、高嶺さん!?

 あ、うん、多分だけど、そうっぽい……。プクーって膨れてる気がする……。可愛い……)


「な、何って……特に何もない、ただのお話ですよ?」


「嘘です! 思井くん、楽しそうにしてました!」


「いや、本当に笠井さんとはプリッキュアというアニメに関して少し話していただけで……」


「なんですか、それ! 私は知りません。やっぱり、思井くんも話が通じない相手より楽しく話せる相手の方が良いんじゃないですか!?」


「そ、そんなことないですよ! 僕の彼女は高嶺さんだけです! 笠井さんと話すより、高嶺さんと話してる方が僕は嬉しいです!」


(何も悪くないけど……ゴメン、笠井さん!)


「ほ、本当に、ですか……?」


「本当です! 僕の目を見てください!」


(信じてもらうために、ジィィィって高嶺さんを見てるのに……なんでだろう? 高嶺さんの視線が徐々に徐々に逸れていく……?)


「い、いえ、あの……その、は、恥ずかしいのそんなにまじまじと見ないでください……!」


(これは、もう立場が逆転したのでは!? 許してもらうために、もう少しここは攻めてみるか……?)


「……そうですか。高嶺さん、信じられないですか……。そうですよね……。全面的に僕が悪かったですもんね……」


「そ、そんなことありません。私の方こそすいません……。思井くんは悪くないのに勝手に勘違いして……なんだか、ムカムカしちゃって……私、可笑しかったです……」


「……じゃあ、許してくれますか?」


「はい。だから、その……私も許してくれますか?」


「当然です!」


(だって、僕は高嶺さんに怒ったりしてないですから! むしろ、高嶺さんの気持ちが聞けて幸せいっぱい胸いっぱいです!

 逆に、騙すような演技をしちゃって僕の方こそ本当にごめんなさい!)


「それじゃ、高嶺さん。お弁当、食べましょうか?」


「はい!」

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