第23話 もしかして同士?

「そ、そうなんですね。日直、頑張りましょう」


「うん!」


(もうどこか行っちゃったし、わざわざ教えに来てくれたのか……優しいな笠井さん。

 さてと、まだホームルームには時間があるし僕は昨日録った動画でも――)


「あ、そうだ。先生から言われたんだけど、今日の放課後――あーーーっ!」


(な、なんだなんだ!? 笠井さんが僕を指差しながら叫んだ? 高嶺さんも教室にいる皆もビックリしてるじゃないですか!?

 そして、何故だか戻ってくる笠井さん!?)


「ねーねー、それ、プリッキュアダンスでしょ?」


(……えっ? な、なんで、分かるんだ!? 確かに、僕は昨日、珠から録って録ってとせがまれたから、珠が踊ってるところを録ったから、それを見ようと思って見てたけど――もしかして、笠井さん。こっち側の人間ですか!? 同士ですか!?)


「は、はい、そうですけど……」


「やっぱり~! 今、人気だもんね! こうやって――」


(スゴい! 笠井さん、教室で注目もされてるのに、気にしないで腕を回して、足で軽快にステップをふんで踊ってる。しかも、昨日録った珠の動きと全く同じだったし――完璧だ、この人!)


「「「オオオーー!」」」


(決めポーズをしながら、満足そうな笠井さんに、皆はよく分かってないようだけど拍手してる。僕もしちゃってるけど……)


「あの、どうして……踊れるんですか?」


(だって、プリッキュアは幼児対象アニメ。好き……って気持ちがないとここまで踊れる訳がない! 笠井さん、あなたはどっちなんですか!?)


「これ、好きなんだよね。毎週、見てるよ。面白いよね」


(……や、やっぱり!)


「じ、実は僕も――」


「それで、よく弟や妹に踊ってーってせがまれるんだよね。で、踊ってる間にいつの間にか覚えちゃったんだ。私もリズムとかいいし、踊ってあげると弟妹が喜ぶから……だから、好き」


(な、なんと! 好き……だけど、僕の好きとは微妙に違う!?)


「あ、あの……でも、恥ずかしくないんですか? その、これ、基本的には幼児対象向けですし……」


「あーー、全然、恥ずかしくないよ? だって、好きなものに年齢とか関係ないでしょ」


(うわぁ、この人、こういうことを素で言えるんだ。スゴいな。僕なんか中々恥ずかしくて言え出せないのに……『好きなものに年齢とか関係ない』か……。ご立派過ぎて、眩しいよ!)


「……うん、そうだよね。好きなものに年齢なんて関係ないですよね!」


「そうだよ。だって、私……未だに、ショートケーキの上にあるイチゴ大好きで一番最後まで残して食べるもん!」


「そ、それは、結構な人がしてるのでは……?」


「イチゴ、美味しいよね~」


(あ、もう、イチゴに想いを馳せて、僕の話聞いてないですね……)


「はーい、皆さん、席についてくださーい。朝のホームルーム、始めますよ~」


「あ、先生来ちゃったね。じゃあ、ペアとして、一日よろしくね!」


「はい!」


(あ~、なんだか笠井さん、話しやすいしいい人だな~。僕は今まで自分から関わろうとしなかっただけで、本当はこうやって話しやすい人がいっぱいいるのかな?)


「……っ!?」


(なんだ……? 何か、冷たい視線を感じ……あ、高嶺さんだ……。高嶺さんが、僕のことを、むぅぅぅってしながら見てる……。

 ヤバい……条件反射で背筋ピーンとして、前を向いちゃったけど……また、ヤキモチ妬いてくれたのかな……?

 だとしたら、相当にやけるんですが……)


「思井く~ん、日直だし、ニヤニヤしてないで先生の話、ちゃんと聞いてね~」


「ご、ごめんなさい!」


(注意された……)


「……キモッ」


(どこかから、小さくキモッって聞こえた……。さっきの言葉なんて前言撤回! やっぱり、僕は他人とは関わらない! 必要最低限だけ!)

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