第25話 あ~ん
「あ、高嶺さん。また、タコさんウインナー入ってるんですね」
「はい、好きなんです!」
(知ってます!)
「タコさんウインナーは、どれだけ食べても飽きません!」
(熱い……それだけ、タコさんウインナーに燃えてるんですね、高嶺さん!)
「今日は思井くん、お弁当なんですか?」
「うん。お母さんが作ってくれたんですよ」
「あ、思井くんのお弁当にもタコさんウインナーが入ってます!」
「本当ですね」
(今日は珠も弁当がいる日だったし、お母さんそれで作ったんだな)
「高嶺さんは、自分で作ってるんですか? それとも、お母さんが?」
「私です。朝はマ……お、お母さんも忙しいので。それに、自分で作ると好きな物ばかり詰め込めるんですよ!」
(高嶺さん、小さな宝箱を見つけたように喜んでる……そんなに、好きなんですね!
確かに、高嶺さんの弁当は一段と輝いて見える……!)
「高嶺さんの手作り弁当……美味しそうですね」
「えっ! そ、そうですか!?」
(そりゃ、そうだよ。だって、高嶺さんの手作りだよ? 食材だって、高嶺さんに調理されて喜んでるよ!
さてと、僕もお母さんが作ってくれた弁当を――うん、美味い!)
「美味しそう……美味しそう……」
「高嶺さん、早く食べないと時間なくなってしまいますよ?」
「あ、あの、思井くん! その、よ、良かったら、タコさんウインナー、交換しませんか!? お、お互い入ってるので……」
「……い、良いんですか!?」
「はい。その、思井くんのタコさんウインナー、食べてみたいです……。後、玉子焼き、落としてます……」
(そ、それは、意味深です……)
「じゃ、じゃあ、お願いします……」
「はい。どうぞ」
(た、高嶺さんのタコさんウインナーが僕の弁当箱に……!
入った瞬間、僕の弁当箱が輝きだした!?)
「た、食べてください」
「い、いただきます……」
(ヤバい……落としたら、ダメなのに手が震える……。い、いくぞ! パクッ……モグモグ……――)
「ど、どうですか?」
(あぁぁぁぁぁ――僕は今、天国に――)
「美味しい! 美味しいです、高嶺さん!」
「よ、良かっ――って、思井くん。どうして泣いてるんですか!?」
「いえ、気にしないでください……美味しすぎて涙が出てきただけですから……」
(高嶺さんの手作りタコさんウインナーは危険すぎる……! タコさんウインナーの味なんて、そうそう違わないのに、言葉では言い表せない。世界から争いを消すか、世界に新たな争いを生む力をもっている……!)
「た、高嶺さん……こんな、素敵な物をありがとうございます……。お返しに僕のもどうぞ……あ~ん、してください」
「えっ!? えっ!?」
「えっ……!? あ、ああああ、ごめんなさいごめんなさい! 間違えました!」
(何をやってるんだ、僕! ついつい、珠にしてあげるように、高嶺さんにまであ~ん? 調子にのるのもいい加減にしろ!
だいたい、高嶺さんがあ~ん、なんてするはずないだろ! 子どもじゃあるまいし!)
「……お、思井くん。あ、あ~ん……」
「た、高嶺さん……しなくていいんですよ。僕が間違えただけで……」
「い、良いんです……。そ、それよりも、お願いします……。ずっと、この状況は……恥ずかしい、です……」
「は、はい……!」
(目を瞑って、口を小さく開けてる高嶺さん……うわ、まつげ長くて綺麗……。
って、口を開けてる高嶺さんをいつまでも堪能してるんじゃない、僕! 早く、してあげないと変な気分になる……!)
「い、いきます……あ、あ~ん……」
「んっ……はむ、はむはむ……うん、とっても美味しい、です……!」
(ぷしゃーって高嶺さん、蒸発しちゃった……。僕ももう、心臓がうるさすぎて……あ~んって、この世で最強の攻撃だったんですね――!?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます