第21話 月曜日

「ファァ……眠い……」


(目覚ましがわりにアニソン聴いてるけどまだ眠い。あくびと一緒に涙が出てくる。

 はぁ、休み明けの学校ってなんでこんなに嫌になるんだろう? ずっと、休みが続けばいいのに……。

 ……って、つい一週間前の僕なら思ってたよな。けど、今は学校に行けば高嶺さんと会える……! それだけで、学校に行く価値がある! 最高だぜ!)


「……っ、高嶺さん……?」


「あ、お、おはようございます。思井くん」


「お、おはよう、ございます。高嶺さん」


(登校中から高嶺さんに逢えるなんて月曜早々ついてる!

 ……にしても、朝日を浴びながらただ立っているだけなのに……それだけなのに、高嶺さんが神々しく見えて眩しい……!)


「あの、良かったら一緒に学校行きませんか?」


「う、うん! あ、ちょっと待ってくださいね。今、イヤホン片づけるので」


(うわ! 隣の高嶺さんからいい香りが……! 朝イチの香りってなんか新鮮でドキドキする……)


「何を聴いていたんですか?」


「あ、アニソンです……」


「アニ、ソン……?」


「知りませんか? アニメソングっていうんですけど」


「あれですか? 昨日、放送されていた登場人物のほとんどがお野菜の名前をしているという国民的なやつのですか?」


「ゴボウさん、ですね。でも、僕が聴いているのはもっと深夜帯に放送されているものでして」


「そうなんですね。すいません、私、そういうの疎くて……。きっと、他の方なら話もついていけると思うんですけど……」


「そ、そんなことないですよ。僕だって知らないこと沢山ありますし、高嶺さん落ち込まないでください!」


(シュンって落ち込む高嶺さんも可愛いけど……アニソンを分かってくれる人なんて同じ種族の人だけだから……高嶺さんが落ち込むことなんてないんですよ!)


「そうなんですね。あ、そ、そうだ。金曜日はありがとうございました。その……お、お家、デート……と、とても楽しかったです」


「っ、ぼ、僕の方こそ。楽しかったです。多分、今までで一番……!」


「そ、そうですか!?」


(パアアアッって輝いてる。その笑顔に僕の眠気は全部吹き飛ばされちゃいましたよ!)


「あの、それで、帰ってから……その、お姉ちゃんとは何を――」


「あ、ああ~。それは、ですね……」


(答えにくい……。高嶺さんの可愛いところを一方的に語られてた……なんて)


「こ、答えにくいんですか!? も、もしかして、私に隠れて二人で密会でも……」


「し、してませんよ」


「お姉ちゃんはズルいです。私だって、まだ、思井くんのアカウント持っていないというのに……」


(……は、今なんじゃないか!? このタイミングなら、不自然なく聞ける――)


「あ、あの、高嶺さん。もし、良かったら――は!」


(い、今まで気づかなかったけど……しゅ、周囲に結構人が……もう、だいぶ学校にも近づいてきたし、ヒソヒソと僕たちを見て何か話してる人もいるし……ここで、聞いたら高嶺さんの価値が……)


「なんですか、思井くん」


「い、いえ、今日も頑張りましょうね!」


(高嶺さんのアカウントはいつか必ず……!)

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