第20話 返信
「と、とりあえず、返信した方がいいよな……。なんか、急かすように色々ときてるし……」
【もう、寝ちゃったの?】
【それとも、有名な未読無視?】
【返事、頂戴!】
「そ、それにしても、なんて返事すればいいんだ? 今まで、女の人とラインメッセなんてしたことないから分からないよ……」
(とりあえず、無難にお礼でも送ればいいのかな……?)
【お、遅くなってごめんなさい。その、お風呂に入っていたもので……。
きょ、今日は、僕もスゴい楽しかったです! ありがとうございました!】
(お、送っちゃったけど、これで、大丈夫かな……)
「あ、もう返事がきた」
【お風呂か~。それじゃ、仕方ないね。男の子のお風呂って、何かと時間がかかるって言われてるもんね!】
(な、何を言ってるんだ!? この人!)
【そ、そんなことないですよ! 僕は丁寧に洗っていただけですから!】
【丁寧……意味深だね。因みに、氷華も今、お風呂に入ってるよ。今日、思井くんが遊びにきてくれたのがそんなに嬉しかったのか、ずっとニヤニヤしたままで、なかなかお風呂に入らなかったよ】
「た、高嶺さんのお風呂……!?」
(や、ヤバい……しちゃ、ダメなのに……た、高嶺さんのお風呂なんて想像してしまって……)
【そ、そそそ、そそそそそなんなこと送ってこないでください!】
【今、氷華のこと想像しましたね!? もし、氷華でイヤらしいことすれば、許しませんよ!?】
【し、ししし、しししししてません!】
【焦ってるのがまる分かりだよ……】
(でも、そんなこと言われたって……高嶺さんがお風呂に入ってるんですよ!? 嫌でも想像してしまうに決まってるじゃないですか!)
【あ、氷華が出てきた。氷華は今どんな格好してると思う?】
(高嶺さんのお風呂あがり……!? 何を着てても、美しくて可愛いに決まってる……! 僕には想像できない!)
【わ、分かりません……】
【うふふふ~そうでしょう。お風呂あがりの氷華なんて私だけが堪能していいもの。ピンクのパジャマに、まだ、乾かしきれていない髪を拭くためにタオルを首にかけている姿なんて、私だけが見ていいものなのです!】
(お姉さん……興奮してるのか、全部言っちゃってます……でも、ありがとうございます! ありがとうございます!)
【今、氷華から『お姉ちゃん、何してるの?』って、聞かれたよ。だから、思井くんとラインメッセしてるって答えといた!】
「……は……ん?」
【そしたらね~、顔真っ赤にして『な、なんで、お姉ちゃんが思井くんとラインメッセなんて交換してるの!?』って、スゴい焦ってたよ! チッ!】
(な、なんで、この人はいちいち状況を全部説明するんだ!? そして、そんな高嶺さん見てみたいに決まってるじゃないですか!)
【今はね~、『なんで、いちいち全部言っちゃったの!? 恥ずかしいよ! お姉ちゃんやめて!』って、お風呂あがりなのに、さらに蒸発しちゃった】
(も、もう、それ以上、高嶺さんの可愛いところ送ってこないでください……僕が耐えられません……)
【それで、提案したいんだけど、私が氷華のアカウント教えてあげようか? 嫌だけど】
(た、高嶺さんのアカウント……? そんなの……そんなの、欲しいに決まってる!
……でも――)
【ありがとうございます。……でも、それは、いつか自分から教えてもらいます】
(高嶺さんのアカウントなんてめっちゃ欲しいよ!? でもね、それは、僕から教えてもらわないといけないことだと思うんだ!
あれ……なんだか、返信が途絶えて――)
「あ、返ってきた」
【ふぅ、ムカつきますが、あなたたちは相思相愛のようですね。では、私は氷華に怒られたのでそろそろお風呂に入ってこようと思います】
【あ、お姉さん。ありがとうございました。楽しかったです】
【……お姉さん――は、やめてください。私とあなたの仲なのですから。名前で呼んでください。思井くん】
【は、はい。水華さん】
【ふふ、それでは、今後とも妹共々よろしくお願いしますね。あ、私のお風呂を想像して変なことしないでくださいよ!】
【しませんよ!】
「……こんな、感じで終わっちゃったけど……良かったのかな? いや、ラインメッセに正解なんてないと思うけど……何しろ、初めての出来事でよく分かんなかった……。
しかも、結局、最後はお姉――水華さん、口調戻ってるし……何がしたかったんだろう?」
(でも、まぁ、楽しかったのは本当だし……いつか、高嶺さんともラインメッセでやり取りを……!)
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