第17話 内緒です

「高嶺さん、とお姉さん……今日は、こんな時間までありがとうございました。とても楽しかったです!」


(――あれから、高嶺さんの部屋に戻って、『何を話してたんですか』って、スゴい追求されたけど……世間話って嘘をついた。嘘をついてごめんなさい。だって、高嶺さんへの愛を語り合ってたなんて恥ずかしくて言えません!)


「いえ、こんな時間まで大したおもてなしも出来ずに……」


「そうですよ。こんな時間まで居座って……。せっかく、仕事が早く終わったので氷華とイチャイチャしようと思って、急いで帰ってきたというのに……もう、夜になりかけているではないですか!」


「お姉ちゃん?」


「な、なんでもないですよ?」


「……って言うか、どうして、お姉ちゃんも思井くんの見送りに来てるの!?」


「そんなの、私と彼氏さんの仲だからに決まってるではないですか? ですよね?」


「~~~っ、ホントに何もなかったんですよね!?」


「な、なかったですよ!」


「ええ。ただ、互いに愛を語っていただけで……」


「も、もう、お姉ちゃんは入ってて!」


「はいはい、分かったのですよ。それでは、思井くん――また、遊びに来てほしいのです」


「お姉さん……」


(僕の名前、覚えててくれたんだ……!)


「お姉ちゃん!」


「はいはい、邪魔物は消えるのですよ」


「はぁ、やっと入ってくれた……」


「高嶺さん、ずっと思ってたんですけど、お姉さんの前だと口調が変わるんですね」


「……っ、そ、それは、その……妹だから――こ、子どもっぽいですか……?」


「い、いえ。そんな高嶺さんも新鮮でとても良いと思います!」


「そ、そうですか? えへへ、それは、良かったです。あ、因みに、お姉ちゃんもあんな話し方でしたけどお嬢様ではないですからね!」


「う、うん、それは、なんとなく見てて分かりましたから」


(見た目だけなら完全に騙されてたと思いますけどね!? 中身があれでしたから……)


「次に会えるのは月曜日ですね……そう、思うとせっかくの休日も少し寂しく感じてしまいます」


(高嶺さん……!)


「あ、あの、高嶺さん!」


「なんですか?」


「あの、こんなこと訊くのは失礼なんだけど……高嶺さんはどうして僕なんかに興味をもってくれていたんですか?」


「ど、どうして、そんなことを……」


「い、いや、だって、自分で言うのもなんだけど……こんな、デブボッチのどこに興味なんかあったのか不思議で仕方ないんですよ。僕みたいなののどこに興味が――」


(高嶺さん……い、いきなり、僕の口に人差し指を当てたりして、何を――)


「思井くん。思井くんは自分が思うよりも魅力が詰まった素敵な方ですよ。私はその魅力を知っています」


(魅力……? 僕なんかにどんな魅力が……あるっていうんですか?)


「そ、その魅力とは……?」


「その魅力は――」


(……ゴクリ!)


「まだ、内緒です」


(そんな……高嶺さん。僕の口に当てていた人差し指を自分の口に当てていたずらっぽく微笑むなんて……ズルいです……! 見惚れてしまいます……!)


「……あ、あの、思井くん……何か言ってください……」


「はっ、そ、その、綺麗で可愛いです……!」


「~~~っ、そ、そういうのはいいですから……!

 わ、私は思井くんのことをまだ全然知りません。でも、今日頑張ってみた結果、やはり、思井くんは私が思っていた人でした! だ、だから、その、自分のことをあまりよく思わないようにしてください!」


「は、はい、ありがとうございます……」


「そ、それでは、月曜日にまた会いましょうね。さ、さようなら!」


(ペコって頭を下げて高嶺さんは玄関まで走っていっちゃったし……僕も帰るか。

 ……にしても、高嶺さん……今まで全然関わってこなかった僕のどこを見て魅力があるなんて言ったんだろう……?

 まぁ、でもどうでもいいや。高嶺さんが言ってくれるなら、僕は幸せだ――!)


「ルンタッタールンタッター!」


(周りから不自然な目で見られるけど関係ない……僕は今、最高潮に幸せなんだ! だから、家までスキップして帰る!)

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