第11話 押し倒し

「ま、不味いです……お姉ちゃんです……!」


「高嶺さんのお姉さん……?」


「そ、そうです……」


「高嶺さんのお姉さんか――」


(きっと、高嶺さんみたいに、見た目はクール系美少女って感じの歳上女性なんだろうなぁ……。

 高嶺さんを大人にしたら……――って、想像しちゃったけど……いや、高嶺さんから溢れ出る大人の女性の魅力って破壊力強すぎそうじゃない!?)


「もっと、帰りは遅いはずなのに……どうしましょう……どうしましょう……」


「あの、高嶺さん……アワアワしてるけど、大丈夫? 何か問題でもあるの?」


「あります! 問題、大ありなんです!」


(あ、そっか、僕がいることが問題なんだ。そりゃ、僕なんかといるところを家族には見られたくないよね……。

 ヤバい、そうなると、高嶺さんのプライドのためにも、僕もどうにかして気づかれずにここから帰らないと!)


「高嶺さん、お姉さんを部屋に閉じ込めておくことは出来ませんか? そうしてくれたら、その間に僕が音も立てずに帰ってみせます」


「え、もう帰っちゃうんですか!?」


「帰った方がいいんじゃないですか!?」


「居心地悪かったですか? それとも、つまらなかったですか?」


「いや、あの……高嶺さん、お姉さんに僕といるところを見られたくないんじゃ……」


「そ、れは、そうですけど……」


(……ほらな、やっぱり、高嶺さんも僕みたいなデブボッチといることが、本当は恥ずかしいんだ……。大丈夫、全然気にしない! 太った僕が悪いんだから! ダイエットしない僕が悪いんだから!)


「い、いえ、やっぱり、そんな理由でお客様を帰らせる訳にはいきません! ……それに、もっと、一緒にいたい、ですし……」


(また最後の方だけゴニョゴニョして聞き取れなかった……。

 でも、だったらどうするんだ? 高嶺さん、何か素晴らしい作戦があるんですか!?)


「氷華~、いないのですか~?」


「ど、どんどん、近づいてくる気配ですけど……」


「だって、私の部屋の隣がお姉ちゃんの部屋なんです……」


「ど、どうするんですか!?」


「し、仕方ありません! 思井くん、隠れてください!」


(…………えーーーっ、作戦って隠れるだけですか!?)


「か、隠れるってどこに……?」


「どこでもいいです。急いでください!」


(と、言われましてもこの部屋に隠れる場所なんて――。

 ――ない。どこにもない。いや、タンスの中って手はあるよ!? でも、タンスの中には高嶺さんの私服やし、下着があるはずだ……。そんな所に仮にも彼氏が隠れるってありだろうか? いや、なしだ! 何より、僕が隠れるサイズじゃない!)


「と、とりあえず、ベッドの中にでも隠れてください」


「いや、それは――」


「氷華~、返事はないですけど、ドア開けてもいいですか~?」


「は、早く、立ってください……!」


(高嶺さん、立ちながらそんなに引っ張らないでください。それに、高嶺さんが小声でどうするんですか? 大きな声で、『ちょっと待って』って、言ってくださいよ!)


「た、高嶺さん、そんなに引っ張られると――」


(本当は、正座なんて好きじゃない。なのに、無駄に強がってたせいで、足が痺れて……ヤバい、倒れる――)


「お、思井くん!?」


「……ったたた……っ!?」


(えっ、な、何、この状況……!? 高嶺さんが僕の上に……。これ、僕が押し倒されたって感じになってる……!?)


「は、はわわわわ……お、思井くん……す、すいません、こんな……こんな体勢になってしまって……」


「う、ううん……あの、僕の方こそゴメン……。足が痺れて……」


「いえ……」


(や、ヤバい……高嶺さんの髪が頬っぺたに当たってくすぐったい。高嶺さんの顔……赤くなって、涙目になってる……。なんだろう……このままキスしてしまいそうな雰囲気は――。

 ……っ、想像するとドキドキが鳴り止まな――)


「氷華、どうしたのですか!? 大きな音が聞こえました……けど……」


「「……あ……」」

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