第10話 お胸の話

「高嶺さん、牛乳お好きなんですか?」


「えっ!? そ、それは、まぁ……その、ちょっと、理由がありまして――」


(あれ、なんだ? 急にゴニョゴニョしだしたし、訊いたらいけない質問だったのか?)


「あ、そ、そうなんだね」


「はい……」


「……あの、言いにくいんだけど、牛乳、ついてるよ?」


「……~~~っ、す、すいません」


(真っ赤になりながら、ティッシュで牛乳拭いてる。にしても、理由ってなんだろう?)


「訊いていいのか、分からないんだけど……牛乳を呑まないといけない理由って何? もしかして、何か病気でも――」


「ち、違います! 病気だなんて、そんな……私は健康体です。

 ……でも、その……大……きく、したくて……」


「あ、ご、ゴメンね……む、無理に答えなくていいよ」


(最後の方、なんて言ったんだろ……?)


「い、いえ、か、彼氏の思井くんには……ちゃんと、言います。でも、恥ずかしいので……そっちに、行ってもいいですか?」


「はい、どうぞ……」


「し、失礼します」


(僕の隣にちょこんと座ったけど……高嶺さん、今から何を言うつもりなの!? もしかして、高嶺さんが今から言おうとしてることは重大機密事項なの!?

 っていうか、僕のお肉、邪魔じゃないですか!?)


「な、内緒にしてくださいね……」


「う、うん……」


(あぁぁぁ~耳がくすぐったいよ!)


「そ、その、牛乳を飲む理由は――お、お胸を、もう少し大きくしたくて……です……」


(ああ~、はいはい、お胸を大きくね。牛乳って、身長だけでなく、そういう話もあるもんね――)


「…………ゲッホゲッホゲッホ!」


「だ、大丈夫ですか!?」


(……今、なんて? あの高嶺さんの口からお胸……!? 僕の聞き間違いじゃなくて!?

 ……あ~、真っ赤になってるし聞き間違いじゃないな、多分……)


「た、高嶺さん……」


「うぅぅ~、そ、そんなに見ないでください……。消えてなくなりたいほど恥ずかしいですから……」


(……た、確かに、高嶺さんのお胸は、今も手をおいてらっしゃるけど、ふ、膨らみはない感じだ……)


「で、でも、高嶺さんは綺麗だし、気にしなくてもいいのではないでしょうか……?」


「だ、ダメです! も、もう少しだけ、大きくしたいんです! く、クラスの皆さんのお胸を盗み見みても、多分、私が一番ち、小さいんです! だから――」


(や、やっぱり、女の子って胸が大きい方がいいのかな……?

 ……にしても、む、ムキになってる高嶺さん……可愛い)


「そ、それに、思井くんも……お、大きいお胸の方が好きなんじゃないですか!?」


「なっ……!?」


(う、上目遣いでそんなこと、訊かないでください! た、確かに、僕も大きい方が好き……っちゃ、好きだけど……でも、そんなこと言えるわけがない。言ったら多分嫌われる!

 じゃ、じゃあ、真剣に潤んだ瞳で訊いてくる高嶺さんになんて答えるのが正解なんだ!? ラブコメの主人公、答えを教えてくれ!)


「ぼ、僕は……好き、ですよ……。その、高嶺さんの努力してるところが……」


「そっ……で、でも、きっと残念だ……って思井くんも思うはずです!」


「そ、そんなこと思いませんよ! 僕は、どんな高嶺さんも可愛くていいと思ってます! お、お胸のひとつやふたつ、小さくても高嶺さんの魅力が下がったりしませんよ!」


(それに、お胸まで大きい高嶺さんを想像すると逆に華麗さが落ちる気がする……いや、それも、また、可愛い気が――)


「……っ、ほ、本当ですか……? が、ガッカリしてませんか……?」


「当然です!」


「そ、それなら、良かったです……。あ、く、くれぐれも内緒ですよ!」


「わ、分かってますよ! 口が割けても言いません!」


(こんな可愛い高嶺さんを誰にも言いふらすものか!)


「や、約束、してくださね?」


「う、うん……」


(今どき、高校生にもなって指切りとか……でも、高嶺さんの手に触れられるし、しておこう……。

 あ、高嶺さんの手、スッゴいほそくて柔らかい――)


「ふ、ふふ……楽しいです」


(これくらいで楽しんでもらえるのなら四六時中やりますよ!)


「あの、思井くん――」


「ただいま、帰りました~! あれー、氷華~、誰かお客さんが来てるのですか~?」


「え、だ、誰か帰ってきたよ、高嶺さん……」


(……っ!? た、高嶺さん……どうして、そんなに焦っているの!?)

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