第6話 昇降口にて

(う~ん、終わったぁ~。皆はこれから部活とか委員会か~。急がしそうだなぁ~。ま、デブボッチの僕には関係ないけどね。さ、帰って珠の相手でもしてやるか……。

 そう言えば、高嶺さんはどこに住んでるんだろう? 僕は割りと近くの方だけど、高嶺さんは遠いのかな?

 ってか、一緒に帰ったり出来ないかな……。ダメか、僕なんかが高嶺さんといれば、高嶺さんの美しさが汚れてしまう。

 それに、ほら。もう、高嶺さんは教室を出ていったし……)


「僕も帰ろう。いつも通り、音楽という友達と一緒に……!」


(授業終わりの昇降口って込むんだよな~。僕みたいに帰宅部の人も結構多いし、下駄箱から靴を取り出すのも精一杯だ。それに、音は出してないけどイヤホンもつけているし、人には十分気をつけないと)


「……っと、ようやく取れた。人も少なくなってきたし、今の内にささっと履き替えて……。よし、帰ろう……!」


「……あの、思井くん……!」


「ウワァ! た、高嶺さん!?」


「シ、シィー! し、静かにしてください」


「あ、ゴメン……」


(な、なんで、高嶺さんが下駄箱の影に隠れてたんだ!? もう、帰ったはずじゃなかったっけ!?)


「あ、あの、思井くんさえ良かったら……その、一緒に帰りませんか……?」


「い、良いんですか!?」


「は、はい……。その、私は思井くんと一緒に帰りたい、です……。お、思井くんはどうでしょうか……?」


「は、はい! ぜひ、お願いします!」


(これか! これが、あの、有名な一緒に帰りませんか? シーンか。アニメでは、よくあるけど、実際にしている人なんて見たことなかった! いや、僕がされないだけで、実は結構してるのか……? なんて、今はどうでもいい。あの高嶺さんがやったんだ! 断る訳がない!)


「そ、それじゃ、帰りましょう……!」


「……はい。あの、高嶺さん、もしかして、待っててくれた、んですか……?」


「……っ、い、いえ。その、少し、靴を履くのに手間取っていまして。そしたら、思井くんが見えたので……」


「そ、そうですか。内の学校の靴、少し硬くて履きづらいですもんね。分かります!」


(なんだ、ただの偶然か……。い、いや、ガッカリするな、僕。高嶺さんと帰れるだけありがたいと思え。入学して今まで一人で帰ってたんだから、誰かと帰れるだけ感謝しろ。しかも、相手が高嶺さんなんだ。もっともっと感謝しろ!

 神様、ありがとうございますうぅぅぅ!)


「あ、あの、嘘です……。ホントは、思井くんのこと……待ってました……。一緒に帰りたくて……っ!」


「た、高嶺さん!? 早いよ、走らないで!」


(高嶺さん、先に行っちゃったけど……もう一回言わせてください……。神様、高嶺さん様、ありがとうございますうぅぅぅぅ――!)

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