第7話 一緒に下校
「ハァハァ……た、高嶺さん、待って……早いよ……」
(僕みたいなデブボッチは高嶺さんに追いつくのも一苦労だけど高嶺さんの足が特別早い訳じゃないけど……僕がそれ以上に遅いんだ……!)
「ハァハァ……す、すいません……私、思井くんのことを考えないで……」
「い、いい、よ……ハァハァ、ま、待ってくれて、ありがとう……」
「そんなに、息があがるまで……本当に、すいません……」
(う~ん、やっぱ、ダイエットした方が良いかな……。あまりにも肉が重すぎる……)
「あ、あの、それじゃ、ここからは並んで帰るということで……い、いいですか? も、もちろん、思井くんが休まるまで待ちますので」
「い、いえ、もう大丈夫ですので。か、帰りましょう!」
「ホント、ですか?」
「は、はい! もう、元気百倍、アンマンマンですよ」
「アンマン、マン……? 思井くんが元気になってくれて、よ、良かったです。それじゃ、行きましょう」
(はぁ~、歩き出してくれて良かった~。道のど真ん中でいるのも変に目立っちゃうしね……。
……にしても、高嶺さんのうなじに汗で張りついた長くて美しい黒髪が妙に色っぽい……。見てて、ドキドキする。グッジョブだ、太陽!)
「どうしたのですか、思井くん。ボーットしていますけど……は、や、やっぱり、実はまだ疲れていて――」
「う、ううん、ホントにもう大丈夫だから!」
「そうですか? もし、疲れたらいつでも言ってくださいね。ちゃんと、休んでからいきましょう」
(言えない……こんな、純真無垢のような子に、あなたの髪で興奮してました! ……なんて、絶対に言えない!)
「そ、それに、そうすれば……もう少し、長く、一緒に……」
「ん、何か、言いました、高嶺さん」
「い、いえ! なんでも、ありません。そ、それより、何か話しませんか?」
「何か……あ、五時間目の授業の映画、本当に面白くなかったのに、高嶺さん、最後まで起きていられたなんて流石ですね! 僕は、普通に爆睡してましたよ」
(ここは、高嶺さんの名誉のためにも、気づいていないようにしておいた方がいいのかな……? クッソう! 女子との会話なんて、何話せばいいか分からないんだよ! スペックなんて、ゲームかマンガかアニメしかないんだから!)
「い、いえ、皆さんが気づいていないだけで……実は、お恥ずかしいことに私も少し居眠りしちゃったんです……」
(知ってます! 可愛いところ、ちゃんと見てたので!)
「へ、へぇー、そうだったんですねー」
「は、はい。昨日、少し眠れなくて……夜更かししちゃったんです」
「高嶺さんでも、夜更かしするようなことあるんですね!?」
(僕は毎日と言っていいほど、睡眠時間は約三時間程だ。帰ってから、昼寝すればいいだけの話だからね。
しかし、僕のイメージでは、高嶺さん、九時には就寝してそうなんだけどな……何か、あったのかな?)
「き、昨日だけですよ。毎日、九時には就寝しています」
(やっぱり、九時には寝てるんだ……健康的だなぁ……!)
「で、でも、昨日はドキドキしていて……その、布団に入っても中々寝つけなくて……」
(……それ、僕のせいですね! っていうか、高嶺さんもドキドキ……!? 昨日も思ったけど、高嶺さんみたいに綺麗で美しい人は告白なんて、学校に行く回数と同じくらいされてるんじゃないの!?
僕は、告白と玉砕覚悟と意外な結果で……ドキドキしまくってたけどね!)
「あの、なんだか、ゴメン、ね?」
「い、いえ、思井くんのせいではありません。私が不甲斐ないせいで……」
「う、ううん、僕もその全然眠れなかったので……今日は一日中、眠くて仕方なかったですよ。それにしても、お昼後の眠くなる時間に映画はダメですよね。ついつい、睡魔に負けてしまって」
「ですね~。普通の授業でしたら、そんなことにはならなかったのですが」
(むむむ……って、自分に怒ってるのかな? にしても、美少女は怒り方も可愛いのか……こんな子に怒られるなら、逆にご褒美だよ。怒られてても幸せだろ!)
「高嶺さん、テストも毎回高得点ですしね」
「そ、それは、まぁ、普段の授業を聞いて、予習と復習をしているからで」
「それだけで、あんなにもとれるものなんですか!? スゴいです! 僕なんて、いっつも赤点ギリギリですし、尊敬します!」
「そ、そんな、見つめないでください……恥ずかしいので……。ほ、本当は、こんなにも点数をとりたいわけではないんですよ……。皆さんから注目は浴びるし、先生からは期待もされて……毎回、成績を落とさないかヒヤヒヤなんです……」
「そうなんですね……」
(毎回高得点をとるのも大変なんだな……。僕には、高嶺さんの気持ちは分からないけど、苦労してるんだってことは覚えておこう)
「でも、僕はやっぱり、スゴいと思いますよ。嫌なことにもちゃんと努力してる――結果がどうとかじゃないはずです。高嶺さんの努力が僕にはスゴいと思います!」
「そ、そんなことは……でも、その、そう言ってもらえて嬉しいです……ありがとうございます……!」
(……っ、僕にはその笑顔が眩し過ぎますよ、高嶺さん……!)
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