第17話 病院に向かうチョコちゃん
私たちは血相を変えていた。
ショックで、私は息を呑んだ。
背中にひやりと汗が走る。状況を受け入れるのに数秒止まる。
トキさんとトキさんの旦那さんだと思われる人、二人が和菓子作りの作業場で倒れている。
私たちは中に飛び込むように駆け寄った。
マルさんは床に膝まづいてトキさんの旦那さんの顔に近づき何度も声をかけて、私はトキさんの背中に手を置き名前を呼び続けた。
貴教さんが携帯電話で救急車を手早く呼ぶ。
「チョコちゃん。揺さぶったり、無理に上体を起こそうとはしちゃだめだ。頭を打ってるかもしれない」
マルさんが眉根にしわを寄せながら、私に注意をしてくれる。
私はトキさんをなるべく揺らさないようにしながら、トキさんに声を掛け続ける。
「チョコです。トキさん、貴教さんが救急車を呼びましたからね、トキさん? 大丈夫ですか、分かりますか?」
「うー…」
「どこが痛むんですか?」
「……うぅっ。……ああ、チョコちゃん。来てくれたのね。ごめんなさいね、チョコちゃん。あの人の
「大丈夫ですからねっ」
私はトキさんの手を握った。
必死だった。
「足が動かなくって、でも助けを呼ばなきゃってねえ。そしたらどうしても救急車が何番だったか思い出せないんですよ」
トキさんはショックからか興奮状態にあったようで、一気に話をそこまで話して、涙を流していた。
「ありがとうね、チョコちゃん」
「トキさんっ!?」
そこまで話して気を失ってしまったトキさんの体を、私は抱きとめて支える。
電話を終えた貴教さんはトキさんの体を一緒に支えてくれた。
「トキさん、パニックになって救急車の番号が分からずに、チョコちゃんに連絡したんだな」
貴教さんの言葉に、私はそうか私を頼ってくれたんだと分かった。
トキさんは私を思い出し、頼ってくれた。
私の出来ることを、出来るだけしてあげたい。
何分か経って救急車が来て、トキさんと旦那さんは病院に運ばれた。
どうか助かりますように。
私たちは貴教さんの車で病院に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。