第16話 東雲菓子店に急ぐチョコちゃん
私はマルさんに、携帯電話のトキさんからのメッセージを見せてから席を立った。
「せっかくですが、すいません。私、トキさんの所に行きますっ!」
慌てて走り出しそうな勢いの私を、マルさんが手首を掴んで慌てて止めた。
「僕も行くよ」
えっ?
びっくりした。
それにマルさんの手が私の手を握っている。
ごめんなさい。そんな場合じゃないのに。マルさんに
(ごめんなさい)
私はトキさんに心の中で謝っていた。
「ほら、バッグ忘れてるよ」
マルさんは私のバッグを渡しながらレジに向かう。
「チョコちゃん、少し待って」
貴教さんや克己さんではなく、アルバイトの子が会計の対応をしてくれ、マルさんが会計を済ませたら、私たちは喫茶『MOON』のドアを出る。
私とマルさんは
「チョコちゃん! 何があったの?」
呼び止められ、私はその声に振り返る。
慌てた様子の私とマルさんに気づいたからか、貴教さんが喫茶『MOON』から出て来て私たちを追って来ている。
簡単に説明すると貴教さんは顔色をさっと変えた。
いつも柔和な顔つきの貴教さんのそんな表情は見たことが無かった。
「店はさっき克己と交代したから俺も行くよ」
「貴教さんも?」
「あぁ。急ごう」
私とマルさんと貴教さんの三人は、軽く早足でトキさんの元に急いだ。
トキさんのお
私の息が上がる。
貴教さんは途中から全速力で走って行き、マルさんは後ろで走る私を時々振り返り気遣いながら、駆けていた。
東雲菓子店に着くと、営業していなかった。
今日は定休日ではないはずだ。
「トキさーん?! トキさーん? いる? 大丈夫ですか? いらっしゃいますか」
貴教さんが呼び掛けている。
「東雲さん?」
「トキさん!? トキさーん!?」
私も何度かガラス扉を叩きながら呼び掛けてみたが、トキさんからの返事はない。物音は何もせずに静かだ。
嫌な予感がしてた私は、裏手にまわって勝手口のドアノブを思い切って引っ張ってみた。
「きゃあっ!」
ドアを開けた先に見えた光景に、私は思わず声を出してしまった。
うつ伏せに倒れているトキさんの旦那さんらしき人と、階段から落ちてしまったのか、階下に
「うー…ん、ううっ」
「トキさんっ!」
トキさんのすぐ横には、携帯電話が落ちていた。
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