第8話 科学者
科学者。
世の中に科学者が存在することは、事実だ。だが――到底生計を立てることができるような職業ではない。
入学式と履修登録を済ませて帰宅したユキは、早速母親に報告する。
「お母さん! あたし、科学者になる!」
母親は、飲んでいたお茶を盛大に吹き出した。
「か、科学者!? そんな――何のためにあの学校に――」
「だって、科学は絶対に必要だもの! ロストテクノロジーなんかじゃない! あれも、これも、それも、ぜーんぶ根底に科学があるじゃないの!」
家の中にある、科学技術が使われたモノを次々に指さしながら答えるユキ。呆然とする母親。それでも続けるユキ。
「科学がまた発達すれば、きっと世の中はもっと暮らしやすくなるはずよ! 動画で観るような胡散臭い科学者とは違う、ちゃんとした科学者の先生が居るはずの学校でしょう!? あたし、学校を出たら、科学の先生になりたいの!」
呆れるしかなかった。安いとはいえない学費を払うのに、魔術ではなく科学を学びに行くなどと言われたのでは、一体何のためにこの子をここまで育てたのか、と。
だが、母親はそれほど頭が悪いわけではなかった。自分の所有物でもなんでもないユキの人生はユキのものであり、他ならぬ彼女自身が科学という道を選択するのであれば、それは応援すべきだと考え直した。
「わかったわ。あなたがそうしたいというなら、必ず私やお父さんを納得させるだけの科学の知識を身に着けることね。それすらできないのなら、科学の先生になろうと、科学者になろうと、誰もあなたには付いてこない。まずは私たちを納得させることのできるだけの先生になりなさい」
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