第6話 魔術の世界
この世界で、科学を信望している人間は、皆無といって過言ではない。皆が皆魔術を操って家電を使い、車の運転をし、仕事なり家事なりをこなし、学校で習うことも歴史ですら科学信仰が失われたあとの世界のことが大半を占める。
だが、世の中には確かに科学が存在していた、その証拠はそこかしこに見られた。
例えば、車。
魔術でエンジンを動かすようになったとはいえ、機械でできていることには変わりはなかった。機械を作る手段が工業ではなく魔術に変わっているという点を除いては。
例えば、古い家屋。
今となってはどうやって動かすのかを誰も知らないボイラーや太陽光発電パネル、壁一面にあるスイッチの類は勿論押しても動きこそしないが、それが何であるのかはごく一部の不勉強な人間でなければすぐに「電気のスイッチだ」と答えることができた。無論、電気が何であるのか、スイッチとは何であるのか、そこまでを理解している人間は少ないのだが。
現状はといえば、当然ボイラーなどなくても風呂は湧く。だが、それはボイラーという仕組みが過去にあったからこそ、それを魔術に置き換えて動かしているだけのことであった。電気やガスの配線こそないものの、水道のポンプも電気で動いているわけではないものの、だが、水道という仕組みがあり、湯を沸かす仕組みがあり。
集中管理センターで水の生成をする魔術師がいて、それを送り出すポンプを動かす魔道士がいて、水道が動く。
湯沸かしや電灯など、ガスが必要に見えるモノに関しては、それぞれの家で家人が魔術で管理している。富豪の家庭では、それ専用にそれぞれ人を雇って済ませていたりもしたが。
つまりは、人間が科学力ではなく魔力に頼るようになっただけで、この世界と現代日本においてさしたる違いなど見られないのである。
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