明日死ぬなら

瀬尾速水@せをはやみ

明日死ぬなら

「私が明日死ぬとしたらさ、君は私に何をしてくれる?」


 放課後二人っきりの図書室で、少女は少年にそう聞いた。


「うーん……そうだなー…明日死んじゃうんだったら……」

「だったら?」

「……告白するかな」

「告白?」

「うん。小学生の頃からずっと好きでしたって伝える」

「へー……」

「『月が綺麗ですね』とか一回くらい言ってみたいな」

「あはははは。きっざー」


 窓から射し込む夕日に照らされて、少女は心底しんそこ楽しそうに笑った。


 少年は笑わなかった。


「……明日、死んじゃうの?」

「死なないよ」

「そっか」


 少年は小さくため息をついて、それから何かに呆れるようにして苦笑した。


 再び辺りを静寂が支配する。



「ねえ」


 と、今度は少年が切り出す。


「あのさ」

「うん」


「今夜は月が綺麗だって」

「!……それって、」








「私に『死ね』ってこと?」

「ちっ、気づいた」

「小学生の頃から変わらないなぁ君は!」

「お前もな!」

「あはははははは」


 明日も学校。

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明日死ぬなら 瀬尾速水@せをはやみ @Ippai

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