その3 王宮への荷物搬送
「これでこの世界での朝食は最後か、名残惜しいな」
「名残惜しいと言うより食べ足りないじゃないの」
「ばれたか。だって何を食べてもアトラスティアより美味しいし」
「ふふふ、その辺はジーナ、頼むぞ」
「ええ、わかっています」
「あっ、兄貴ずるい!」
そんな朝食が終わった後は、ついに王宮への帰還だ。
アイテムボックスに服だの何だの全部詰めて、全員で王宮へ。
まず王様を執務室に置いてから、後宮部分へ皆で移動。
「ここの3階、もう少し奥だな。そうそこを左、3つ目の部屋だ」
案内されたのは会議室のような部屋だった。
「この部屋は?」
「王族用の会議室とか応接室みたいなものかな。個人的な友人とかを招くときに使う時の、格式とかに拘らない部屋だ。ここのテーブルをまず片付けるぞ」
「何をするおつもりですか」
「まあその辺は片付けてからのお楽しみだ。まずは手伝ってくれ」
そんな訳で全員でテーブルや椅子を端に片付ける。
「ではジーナ、頼む」
「わかりました」
アイテムボックス魔法だけはこの空間内でも使える。
ジーナがアイテムボックスからユニット畳を幾つも取り出しはじめた。
それを
「そうか、あのペンションの部屋みたいな部屋にするつもりね」
「そうそう、あの部屋のように靴を脱いで上がれる空間が楽だと思ったんだ」
全員で手伝った結果、24畳の畳の部屋が完成した。
更にジーナが座卓だの座布団だのを出す。
ショッピングセンターでこんな物を買っていたのか、ジーナ班は。
「思った以上にいい感じの部屋になりましたね」
当然同じ班だった王妃様もこの件は了解済みだった模様。
「さて、これから戦利品をここに全部出すぞ」
そんな訳で向こうの世界で購入したものを出していく。
マリエラがまず出したのが各種洋服類とアクセサリー類。
「全部出すから自分用は分けてね」
「はーい」
靴だの靴下だのまで色々出てくる。
他に化粧品とかシャンプー・リンスとかヘアブラシとか。
更に食べ物類も色々出始めた。
こっちは焼き菓子とか袋入りとか日持ちがするもの中心だ。
一方ジーナが出したのはまずプラレールのセット。
次に畳では無い部分にマウンテンバイクを2台。
更に文房具色々、ナイフ色々、本棚、小学生用百科事典全12冊、人を駄目にするソファ4個、ボードゲーム色々……
「ジーナの処はバラエティに富んでいるね」
「兄様のところは色々買われたのですね」
王女組が若干呆れたような顔で見ている。
「向こうのキッズルームのように床に座れる部屋があると便利だし楽だと思ってさ。あとはまあ、王子3人と父様の意見だな」
「半分以上は
ジーナの指摘。
うん、そんな感じはしたんだ。
「でもこの敷物、便利だし楽でいいわ。寝転んだりも出来るし」
「お姉様、はしたない」
「いいじゃない、ここはどうせそんな事気にするような場所じゃ無いし」
「アリア、そういう時こそこの椅子の出番なんだ。使ってごらん」
「どれどれ。あっ、こんな風に動くのね。これは寝やすい!」
私も頼まれた物を色々出させて貰う。
100円ショップで購入したガラス製のコップや皿。
ディスカウント店で購入した各種の酒。
懐中電灯数種類と電池式ランタンと電池いっぱい。
化粧水と乳液の安い奴大量。
画用紙とOA用紙とノートとスケッチブックなど紙類色々。
とりあえずこんな処かな。
「さて、ひととおり分け終わったら埃を魔法で掃除して、それからお茶会にしましょう。ケーキや飲み物も買ってあります。これでしばらくヒロフミ殿やシェラ、アミュ、それにジーナとマリエラには会えなくなりますからね」
「えーっ」
王子王女の皆さんからブーイングが飛ぶ。
「今回の件が一段落するまでの間だけだよ。整理が付いたら今回の件の報償や叙爵をやって、晴れて全員王宮へ無条件で入れる身分になる予定だ」
皇太子殿下の説明に今度はマリエラが反応。
「ええっ、その辺私、聞いていない」
「まだ議会を通していないからさ。ジーナとマリエラは最低でも魔法騎士侯に任じられる予定だ。今回の件で議会にも大分貸しを作ったし、まあ通るだろ」
「えっ、マリエラも騎士侯になるの?」
「はいはい、その辺はデザートを食べながらという事で。まずは片付けて」
「はーい」
そんな訳でささっと物を仕分けつつ端に寄せ、清拭魔法で埃を取る。
王様が買ったガラス製のコップやお皿も清拭魔法で使えるようにする。
ジーナがケーキだのパック入り飲料だのをアイテムボックスから出し始めた。
あっという間に人数分のケーキが出てくる。
ケーキ用のフォークは
「それではいただきます」
10時のお茶会が始まった。
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