その2 話を聞く準備

 無事パンもおかずも綺麗さっぱり無くなった。

 おかげで片付けるのが簡単でいい。

「こちらを片付けるの位は手伝わせて下さい」

「アミュも」


「なら皿を持って、こっちに来てくれ」

 私も皿を重ねて持ってキッチンへ。

 食洗機を引いて中に皿を入れる。

「こんな感じで残りの皿と箸やスプーンなどを入れてくれ」

「洗わないでこのまま入れていいのでしょうか」

「ああ、これは本来は自動で食器を洗う機械だから」

 しまうのが面倒なので昨日使った食器も洗ったままこの中に入っている。

 でもまあ問題は無い筈だ。

「便利ですね」

 持ってきた皿とかを入れながらシェラが言う。

 三人いるおかげで全部の皿が一度に片付いた。

 フライパンは鉄製だし特に焦げ付きも無いのでキッチンペーパーで拭いて終わり。


「さて、話を聞く前に服がどれくらいで到着するか確認しようか」

「うん!」

 アミュが頷いたので三人でパソコンの前へ。

 起動して通販のページにして、履歴から発送状況を確認。

 ステータスは『配送の為に営業所から出発しました』になっている。

「もう最寄りの配達所を出ているから、今日の昼頃までには来るだろ」

 なおこの業者がこの辺に配達に来る時間は大体午前10時過ぎである。


「それじゃ服が到着するまで、シェラは何故この世界に来てしまったのか、説明してくれるかな」

「アミュは昨日のゲームがしたい」

「はいはい」

 昨日の履歴からゲーム画面を引っ張り出す。

「やり方はわかるな」

「うん」

 アミュがマウスを手にゲームを開始した。

 既に慣れた感じの手つきになっている。

 このくらいの年齢の順応性って高いよな、本当に。


「あ、ちょっとだけ待ってくれ。メモその他用意するから」

 一度寝室へ行って小型ノートパソコンを取り出す。

 これは枕元でWeb閲覧等をするのに使っている機械だ。

 メモをとったり調べ物をしたりするのにパソコンがあった方が便利だろう。

 タブレットも持っていたのだが私はどうもパソコンの方が性に合うのだ。

 寝室用折り畳みテーブルも戸棚脇から出して、一緒に持って行く。

 Webゲームに夢中なアミュの後に折り畳みテーブルを設置。

 パソコンを置いて電源を入れ、エディタとブラウザを立ち上げて完了だ。


「さて、これで準備OKだ。ただそっちの状況を聞く前に、まずは私の状況について説明をしておこうか。シェラやアミュが安心出来るようにさ」

「すみません、色々考えていただいて」

「いいのいいの」

 そんな訳でWebタブにオンラインバンク3社のサイトとFXのサイト2つ、株取引のサイト1つを喚び出す。


「まず私は此処の年齢で49歳。職業は無職、2年前に退職して、今は貯金と金融取引で生活している。今の一日辺りの収入は大体1万円くらいかな。家も自己所有だし貯金もまだ二千万残っている。これが●●銀行の口座残高、こっちは○○銀行の残高。これがFX会社その1の残高と昨日のスワップでの収入額……」

 取り敢えずWebで見ることが出来る収入と資産について説明する。


「あと親戚関係だけれども、今生きているのは母と妹が一人。母は一人暮らしてここから車で2時間位の処で生活している。妹はそこから車で10分位の処で家族三人、夫と子供一人と一緒に生活している。皆さん健康で生活に困るような状況も無い。そんなところかな。だからシェラやアミュがここで暮らしたところで金銭的に困る事もそれ以外で困る事も全く無い。だから心配しないで必要なだけここに居ていい。以上、私関係で何か質問はあるかな」


「いいえ、でも何か申し訳無いです」

「単に私がそうしたいからそうしているだけ。だから申し訳無いとか思うのは野暮だと思うな。違うかな」

 悪いが公務員、それも窓口だの庶務だの文句を言われることが多い部門を中心に二十年ちょい勤め上げたのだ。

 相手を丸め込む台詞には長けている自信がある。

「ならもし疑問点があったら幾らでも聞いてくれ」

 お約束な台詞を挟んで、いよいよ本題だ。


「さて、それじゃシェラ、何故二人がここに来てしまったかの話を聞かせてくれ。基本的に私から質問するから、それに答えるという形でいい。あと、言いたくない事は言わなくてもいい。その時は、『言いたくない』ときちんと答えてくれ。同様にわからないことは『わからない』。教えたくないことは『教えたくない』。そんな感じで頼む」

「わかりました」

 シェラは頷いた。

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