その3 質疑応答の時間です
まずは簡単な質問から聞いていく。
「まずシェラとアミュの関係だけれど、二人は姉妹でいいのかな」
「はい。父と母、両方とも同じです」
妙に厳密な答え方をしてきたな。
そう言えば本当の父と会ったことはほとんど無いとも聞いたような気がする。
でもそれをつつくのは後にしておこう。
「ここに来る前に暮らしていた国は何処かな」
「アトラスティアです」
シェラは今度は簡潔に答えた。
私はこの前得た知識からアトラスティアについて思い出してみる。
向こうの世界の大陸の西岸に位置するアトラ亜大陸を領土とする王国。
亜大陸と言っても大陸とはかなり接近しており、大陸側でもっとも近い国ラステオとは小舟でも数刻で行き来出来る距離にある。
国としては中規模、主な産業は農業と漁業に海運業というところだろうか。
「では次の質問。シェラとアミュについて、今のところ元の国に帰ることが出来る方法はあるかな」
シェラは少し考えて答える。
「私やアミュは元の世界に帰る事が出来る魔法を持っていません。ただ国、いえ向こう側が私達の移動事故を分析して、この世界へ来ることは可能だと思います。その場合は当然元の世界と行き来することが出来るでしょう」
なるほど、技術的には可能という事か。
そして此処に来たのは事故が原因と。
国という言葉が入った事もおぼえておこう。
さて、次は元の世界に帰りたいかどうか聞くところだ。
でもこの辺ははいといいえで答えられるような簡単な問題では無い可能性がある。
聞き方を考えた方がいいだろうけれど、うまい言い方を思いつかない。
「シェラやアミュは、元の世界に帰りたいと思うか。もしも向こうの世界での現状がシェラ達にとっていい方に進んだ場合は」
「難しい質問です」
シェラはそう言って、少し考えた後に口を開く。
「私達にとって最善、というのが何を指すかによって答は変わると思います。でも元の世界で私やアミュがどうしても必要になる事態というのは、私達にとって望ましい事態では無いでしょう。何も無く静かに二人で暮らしていければ本当はそれが一番私としては幸せです」
難しい答が返ってきた。
これはただの事故じゃなくて、色々面倒くさい事が絡んでいるな。
何となくそれはわかる。
よし、これ以上細かく聞くのはやめておこう。
話したければシェラの方から話してくれるだろう。
「よし、大体質問はこれでいいや」
「いいんですか、ほとんど何も話していないと思いますけれど」
まあその通りだけれど私は安心して貰う為に大きく頷いてみせる。
「ああ、これで充分だ。あとはまあ、おいおいという奴だな」
そう言った後、聞いておきたい事を思い出した。
「そう言えば魔法って教えて貰えば私でも使えるのかな。もし使えるなら教えて欲しいけれど」
「使えるかどうかはわかりません。でも教えるのは簡単です」
簡単なのか。
そう思ったらシェラが整った顔を近づけてきた。
一瞬どきっとしたがすく気づく。
ああ、あのおでこをくっつける奴だな。
キスではないと。
こら私、何ロリコン的な事考えているんだ!
そう思っている間にシェラが顔をくっつけた。
あの時と同じように色々と頭の中に流れ込んでくる。
でも言葉の時ほど長くなかった。
「これで私の知っている魔法は一通りわかった筈です。ただし知識として知ってはいても、私自身は使えない魔法も含まれますけれど」
額を離した後、シェラがそう説明する。
「シェラも同じようにして魔法を教わったから」
「そうです」
便利だよな、こうやって知識をやりとり出来るのは。
さて、魔法が使えるかどうか試してみようか。
そう思った処でピンポーンとインタホンの音が鳴る。
「宅急便です」
二人の服が到着したようだ。
まずは服の方が先かな。
そう思いながら私はインタホン前まで行ってボタンを押す。
「はい、すぐ行きます」
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