願わくば、ずっと(俺はスーパーヒロイン!)
「雨宮先輩にとって、橘先輩ってどういう存在なんですか?」
この間の放課後、下級生の女の子に呼び出されて告白されて。珍しくボクをちゃんと男の子だってわかっていた彼女に、今はまだそういうのには興味ないからって断ったら、そう聞かれたんだ。
せめて思い出に一緒に帰りたいって言われたのを、今日は帰りに翼と映画を観に行く約束してるからって断っちゃったからだろうけど。だってさ、ちょうどいい時間の上映があるのその日までだったんだよ。あれずっと翼と観てる映画のシリーズだし、前売り券ももう買ってあったしね。悪いなあとは思ったけど、タイミングが悪かったとしか言いようがない。
まあそれはともかく。ボクはその質問にきょとんとしちゃって、うまく答えられなかったんだよね。それからずっと、時々思い出してはなんとなくボクはそのことについて考えてる。
だって、ボクと翼は彼女が疑うみたいな色っぽい関係ではもちろんないけど、かと言って確かにただの友達というにはちょっと足りないような気がするんだ。
翼は、幼馴染でお互い小さい頃から知っていて、いつも一緒にいる、家族の他で一番知っていて、ボクを知ってくれている人。ボクの『好き』を当たり前にして、ボクの世界を守ってくれた人。だからだろうか、ボクは翼が大切なんだろうと思う。守るために、思わず自分の身を顧みずに飛び出しちゃうくらいには。
翼が、異世界に召喚された時。底の見えない穴に落ちたり、戦いに立ち尽くしたりする翼の姿を見て、考えるよりも先に体が動いてた。自分がどうなるかなんて二の次になって。ただ、翼を守りたい。その一心だったんだ。
堅物で、真面目な翼。そのしかめっ面を崩すのがすごく楽しい。たくさん笑って欲しいし、困った顔も時々見たい。怒ったり泣いたりしてたら、すぐに助けてあげたい。翼が、ずっと幸せで楽しく元気でいてほしい。そして、ボクはその隣でずっと笑ってたいって思う。それって、ボクにとってどういう存在なんだろうね。うまく当てはまるものが見つからなくて、ちょっとよくわからないや。
きっとこれから大人になるにつれて翼にも好きな人なんかができて、翼の隣はボクじゃなくなる日がくるかもしれない。それを思うとちょっと寂しいけど、でもそれが翼の幸せならボクは喜んで隣をその子に渡すと思う。翼が幸せになるのが、ボクは嬉しいから。
だからね、それまでの間だけ。翼の隣は、ボクの特等席であってほしい。だめかな?
「……………まあ、俺も朔也といるの楽しいしな。別に、好きなだけ一緒にいればいいと思うけど。っていうかそれ、どう考えても俺本人に言うことじゃないだろ……」
「えー、だって翼のことでしょー? 本人以外に言ったら陰口になるじゃん!」
「別に陰口っていうほど悪く言ってないだろ! って、お前俺の反応見て楽しんでるな⁉」
「きゃーバレたー! 照れるべきなのか困るべきなのか複雑な翼楽しかったよー! さすが翼、期待を裏切らない!」
「さーくーやー! お前ってやつはー!」
「あはははっ! あー楽しい!」
「俺は楽しくないからなー!」
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