第25話25
5章 死者の臭い
「今日も晴れだなぁ」
ぼくはそうつぶやいた。学校の自転車置き場に自転車をおいて、下駄箱の前に行く。朝の柔らかい陽光が自分の中の小さな花を咲かせる。
ただ、そうしてる中でも……。
だんだん、思い出してきた。学校のことを。自転車をこぎながら段々思い出してきたのだ。
そういえば、学校であんな事があった。これから、どうすればいいんだろう。そう思っていると段々鬱(うつ)になってきた。いじめを見ていると自分の人間性もけがされるようなそんな気がしてくるので本当にいやになる。
だけど、ここで、寺島さん達と待ち合わせをしているのだ。寺島さんには暗い顔を見せたくないので、普段通りにしないといけない。そういう精神体勢を作りながら待っているとすぐに寺島さん達が来た。
「おっはー!笹原君!」
「おはよう、寺島さん」
寺島さんは今日も明るい笑顔をしてぼくに挨拶(あいさつ)をしてくる。寺島さんはいつものようにバカ明るい声を出した。まるで鶏のように元気のある人だな、この人は。
そう思う反面、しかし、僕は寺島さんのことを好ましく思っていた。威勢としての興味はなくなったが、その明るい声は僕に元気をくれるからだ。
「おはよう、笹原」
「おはよう」
真部も手をあげて挨拶(あいさつ)をしてくれるし、フレイジャーも挨拶(あいさつ)ぐらいはしてくれるようになった。ぼくもみんなに挨拶(あいさつ)をする。
「おはよう、みんな。今日もいい天気だね」
「ああ、そうだな」
「まあね、でも、岡山はほとんど晴れだけどね」
フレイジャーがこんなことを言ってきた。
「まあね、でもいいじゃん、リンちゃん。晴れの国なんだから。私たち得をしているよね」
「まあな、でも、時々岡山は渇水があるけどな」
今度は真部が気がかりなことを言っていた。
「渇水?岡山には渇水があるんですか?」
「ああ、あるよ。そうか、笹原は東京から来たんだったな。岡山は日本一日収がある場所なんだけど、その分時々渇水があるんだ。この前ニュースでやっていたよ。まあ、俺が生まれてからこの方そんなことはないんだがな」
真部はそう言った。そうかそういう事もあるのか。ぼくはまた岡山のことがしれて不思議な気持ちになった。特に知りたいと思うわけではないけど、まあ知ることはそんなにいやではないという気持ち。という変な思いだった。
「それはともかく、学校に入ろうよう。ここで立ち話をしても仕方ないでしょう?」
「うん、そうだね。話は放課後にしよう」
それで僕たちは学校に入ろうとしていた。僕は学校に入ろうとする瞬間下駄箱の門のそばにある雑草を見てしまった。みんなに踏んづけられてひしゃげている雑草をなぜかまじまじと見た。よく、あんな所に咲いたなぁ、という感想を持って。
「笹原」
フレイジャーが下駄箱の門の前から顔を出していた。
「早く行かないと遅れるわよ」
「ああ、わかった、すぐ行く」
それでぼくは学校に入っていった。雑草のことなど忘れながら。
寺島さん達と別れてフレイジャーと一緒に教室に入る。教室に入るとそこにはなにもなかった。みんなが普通におしゃべりをしている光景だけどがそこにあった。村田も金村さんも金田君も普通にしゃべっている、なにも変わらない空気のような日常だけがそこにあるのだ。
ぼくは教室に入って自分の席に行こうとしたら、後ろにぐいっと引っ張る力を感じた。
振り返るとフレイジャーがぼくの袖をつかんでいた。
「なに?フレイジャー」
「私の席に来て」
フレイジャーがそう言うのでフレイジャーの席に言った。フレイジャーは座ってこう話した。
「何でもいいから、お話ししましょう。この理由はあとで言うから、今は何も聞かないで」
そういうことになったのでぼくはにも聞かずに適当に話を合わせることにした。ただ、なぜこういうことをしたのかだいたいわかってきたが。
「じゃあ、ここら辺で美味しいラーメン店は?」
「そうね、それは岡山にあるわ。私も詳しいことはわからないけど、冬になったらみんなで行きましょう」
こういう他愛のない会話をして僕らはホームルームまでの時間をつぶした。
教室がざわめいている。先生がホームルームになっても教室に入ってこないのだ。
最初はみんなは先生が遅刻したのだと思った。だから軽い冗談を言っていたが、やがて30分が経過した頃にクラスの中でよどんだ空気がじわじわとあたりを立ちこめていき。やがて黒い魚の群れがびちびちとはねるようにみんなの話し声がはねていった。45分がの時間がきたらよりいっそういなごの大群があたりを渦巻いたいたが、一時間を過ぎた頃には誰も何も言わなくなった。
それから十分たって、これから授業はどうなるんだろう、と思ったときに先生がやってきた。
「先生!」
「はい、皆さん。今から下校して下さい。理由は聞かないでとにかく今から何も言わないで下校して下さい。いいですね?」
ごぉぉぉぉぉぉぉ!
疑問の声が怒濤の嵐になって三枝先生に襲いかかった。先生の言葉はその嵐には勝てなかった。まだ、嵐が教室に吹き渡る。
「はい、はい、皆さん!落ち着いて下さい!いいから、今から皆さんは帰るんです!」
ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
ぼくはどうしたんだろうと思いつつ、しかし、ぼくはその嵐に加わらず、帰宅の途についた。
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