第11話  五十嵐愛奈②


 医師から話を聞いた愛奈の母はすぐに戻り愛奈に現在の痛みはあと2日ほどで治ることを伝えた。


「そっか、じゃああと何日かの辛抱だね。頑張るよ私。」



 ──二日後


 医師の言っていた通り、愛奈は謎の痛みから解放された。


 2日経ってもなお、愛奈は『不老』について全く聞かされていなかった。それも愛奈の母の頼みであった。


 そして完全に痛みがなくなったとわかった母は担当医に愛奈への説明を頼んだ。


「愛奈さん、全くお母様からお話は聞いていないそうなので一から説明させていただきます。……



 愛奈は自分の謎の病について愛奈の母が受けた説明をそのまま聞いた。


「それって命に関わることではないんですよね?」


「はい、死の危険性は全くないと思います。」


「え?!ってことはですよ?私はずっとこの18歳の姿で居られるんですよね?!」


「え、えぇまぁ……。」


「キタコレ!!不老の女子ってわけですよね?!ヒロインじゃないですか私!」


 五十嵐愛奈はポジティブだった。



 しかしそんなポジティブはいつまでも続かなかった。



 愛奈の前例のない病は日本の医療界ですぐさま知れ渡った。


 それだけでは終わらなかった。


 医療界の中でささやかな憶測が出た。『不老』とはその名の通り、体の細胞全てにおいて細胞老化が起こらないことであり、それすなわち他の病にかからない限り老衰することはありえないのではないかという憶測であった。


 そこで動いたのは、医療界だけでなかった。


『不老』だけでなく『不死』が実現していたとすれば、人類の大発見となる。気付いたのは日本の政府だった。


 他の国には知られてはいけない、この大発見を活かさねばならない。


 そして政府は五十嵐愛奈のこの病名を『Now continues病』と名付け国家機密事項に指定した。


 政府の頼みの元、愛奈は精密検査にかけられた。


 数日間検査により入院したものの、自分の病はしには関係ないことを知っていた愛奈は安心して検査を受けた。


 その検査は定期的に行われ1週間学校を休むことも多々あったが検査が終わるとまた次の週から元気に学校へ登校した。


 気づけば愛奈が倒れたあの夏の日から3ヶ月経っていた。


 検査の数も次第に減り、愛奈は卒業後の進路も考えながらスクールライフを送っていた。


 この時は自分の病のことなど何も悪く思っていなく、むしろ最初に聞いた時のポジティブな気持ちはまだ残っていた。周りの人に言いたい気持ちはあったが、国家機密ということは知らされていたため誰にも言えずにいた。


 いつか大人になったらバレてしまうことだろうと思えば言いたい気持ちを何とか我慢できた。


 そんなことを考えながら楽しく過ごしていた。





 ──1年後


 五十嵐愛奈。19歳。



 高校1年生。

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不老の女子と年確男子 どるとん @doruton

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