第9話 聞きたいことがありまして

 勉強を教えるということで一気に愛奈と距離を縮めることができた快星であったがより一層深まっていた、謎があった。


 ──年齢についてである。


 愛奈と話すことができ幸せに満ちていた快星であったがやはり、年齢についてはきになるばかりだった。


 勉強を教えるのに近づいても、一緒に話しても、表示されている『26歳』という年齢は快星の脳には意味不明であった。ただの高校生にしか見えないのである。


 聞きたい気持ちは大いにあった。ただ、海和快星は臆病者のチキンだった。


「あ、あのさ愛奈さん?……ここの問題はわかる??」



 聞けネェーーーーーヨ!!!!なんだよこれ、聞けるわけないだろ!なんて聞けばいいんだよ!仮に『なんで26歳なんですか?』なんて聞いてみろ。殺される。俺と愛奈さんのハッピースクールライフが終わる。どうすりゃいいんだヨォ!!


「どうしたの快星くん?ここの問題もわからないから教えて欲しいんだけど……。」


「あ、うん、任せて!」


「ごめんね、自分の課題もあるのに。」


「いや気にしないで少し教えたら愛奈さんが黙々とやってくれるから、その間に俺もコツコツ終わらせてるから!」


「すごいねいつの間に数学の課題なんかやってるの?!」



 いやいやもっと聞けない状況になってんだけど……。これはもうあれだ、無理だ。



 3時間後──



「はーい、お疲れさん一旦休憩入っていいぞー。」


 3−5の生徒はそれぞれ体を伸ばす者、ケータイをいじる者、トイレに行く者、それぞれが有意義に休憩時間を有効活用していた。


 そんな中快星は……


「おいおいカイカイくん、君は何があってあんな幸せそうな時間をすごしていたのかね。」


「あ、いや愛奈さんが教えてっていうから教えさせていただいたんだけどさ……。」


 快星はどこか深く考え込んでいるような表情をしていた。


 確かに愛奈とあんなに話すことができて快星は嬉しかったが、3時間経った現在でも『年齢』のことが気になっていた。


 快星の頭の中では、26歳ながら愛奈さんが高校に通っている理由ばかり考えていた。


「なぁ、ダイダイ、お前が例えば高校を4回くらい繰り返したら、頭は良くなると思うか?」


「そんなの地獄だけど4周もすればいやでも頭は良くなるだろ。漫画4周したら内容はともかく台詞すら覚えちゃってるやつと一緒だな。って何だこの質問は?」


「いや、ただ聞いただけ。やっぱりそうだよな。」



 何度も留年してるとしてもさすがに26歳はしすぎだし、仮に何か特別な理由で繰り返していたとしても、さっきの問題だってあそこまでわからないものなのか?4周もすれば学年の上位層にいてもおかしくはないが廊下に張り出された順位表に愛奈さんの名前は一度も見たことがない。


 愛奈さんってどうなってるんだ……?




「何そんな一人で考えてんだよ、俺にも教えろよぉ〜。」




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