第7話 勉強どころじゃないって!

 2時間かけて水蓮高校一行は恋無山合宿施設に到着した。


「いや〜長かったな!」


 快星はバスの中で愛奈と少し話せたこともあって上機嫌であった。


「あぁ長かったな。」


 一方大那はヒカリの拒絶により精神的ダメージを負いさらにバスに酔うというダブルパンチをくらっていた。


 その後バスをおりた一行は施設へと入りそれぞれの部屋へと移動した。


「勉強時間が始まるのは1時間後だっけ?」


 そう快星は同じ部屋のメンバーに聞いた。部屋のメンバーと言っても3−5の男子の人数は少ないため大部屋を3−5男子が全員で使うことになっていた。当然女子も同じである。


「あぁ、うん。1時間後の11時半開始のはずだよ。」


 学級代表も務める晴人が真っ先に答えた。


「あーぁ、ありがとう。」


 朝のこともあって敵対視した様子で快星は答えた。


 ──1時間後


「じゃあみんな勉強部屋に行こう。」


 晴人がそう言うと3−5男子は全員だるそうにしながらも移動を開始した。


 部屋に入ると長いテーブルが二つ並べられていてテーブルに沿って座布団が敷かれていた。部屋の入り口には名前が書かれていてどうやら指定の席で勉強するらしく、先に来た女子はもう着席していた。


「おいら床に座って勉強するの苦手なんだよなぁ〜。」


「ここは寺か!」


 それぞれ文句を言いながらも指定された席へと向かった。


 その中で密かに緊張の様子を隠せない者がいた。


「おい!カイカイお前愛奈さんの隣じゃん!」


「ア、ア、ア、アーウン。」


「おいお前大丈夫か?いつも通りだぞ!普通に平然としてれば大丈夫だ!」



「はーい。全員席に着いたか〜。じゃあ今からそれぞれの教科から出た課題をやってもらう。お前らは進路の内定はもらってるが何も勉強をしなければその後ダメな人間になってしまう。そのためにも今のうちからこうやって勉強してもらう。まずは現代文の課題からだ。とりあえず終わった者から俺に出すように。出し次第次の課題を渡す方式でいく。それじゃ頑張れ。」


 国木先生のスタートコールとともに全員が配布された現代文の課題に目を通した。

 3−5は成績により進学先を決めた者もいるが、大那のようにスポーツ推薦者のほとんどは勉強が苦手であり全員が全員勉強ができるわけではなくもちろん大那以外にも勉強が苦手な者はいた。


「頭が爆発しそうだぁ。」


 例のごとく大那はいきなりの現代文課題に頭を抱えていた。一方快星は。



 愛奈さんがこんな近くで勉強してるとこ見るの初めてだな。真剣な姿もなんて素敵なんだぁ。おっといけない俺もちゃんと課題をやらねば。って言っても現代文苦手なんだよなぁ。チャチャっと終わらせよう。



 と、愛奈効果もあって勉強がはかどっていた。


 ◇◇◇◇◇◇


「やっと終わったぁぁ。」


 一番最初に終わったのは快星であった。それもそのはず快星は進学が美大ではあるものの、成績は学年でも常に3位以内であり3−5の中でももちろん上位層であった。


「カイカイのやつ、どうしてこういうときに限って席が遠いんだよぉ。ヒカリさんの近くにもなれなかったし。」


「早いね!快星くん!」


 突然小声で愛奈が話しかけた。


「あ、あ、うん。現代文はあんまり得意じゃないけどこの問題に出てくる『試練』っていう小説は前に一度読んだことがあってさ。」


 いきなり愛奈に話しかけられた快星はかなりテンパりながらもそう答えた。


「この小説話の書き方が難しくてどういう内容かよく掴めないの……。」


「あ、あのもしよかったら、俺でよければ、教えてもよろしいですか?」


 テンパりながら話すとこの語彙力である。ただしこんな話し方を快星は気にしていなかった。そもそも愛奈に勉強を教えるなんて偉そうなことをしていいのか言った矢先に後悔していた。


「え、いいの?お願い!逆にお願いします!」


 快星のとっさに出た言葉が愛奈との距離を縮めるきっかけになったのであった。




「おいおいカイカイなんでそんなに仲良くなってるんだ?」





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