第6話 いざ恋無山へ!

 合宿先の『恋無山』までは水蓮高校から約2時間ほどかかる。


 その長い移動時間の中で流行りのスマホゲームをする者もいれば、仲良くお喋りする者もいた。その頃快星と大那は先ほどとは打って変わって、満足げな様子であった。バスの基本ルールは特になく、自由席であったため当然どこに座ってもよかった。だが先ほど大きなダメージを受けた二人は何も考えることなくテキトーに座ってしまった。しかしそれが功を奏したのか、目の前の二人席にたまたま五十嵐姉妹が着席した。それによりこの二人はご満悦なのであった。


「おいダイダイもう少しそっち行けようまく見えねぇよ!」


「カイカイよ、そんな座席の隙間から覗こうだなんてみっともないと、思わんのかね……。男ならここはビシッと話しかけるんだ!」


 特大ブーメランである。


「やるしかねぇのか……でもなんて話しかける?」


「そりゃあれだろあれ。あれだよあれ。」


「なんだよあれって。」


「んあぁ、もういい!ここは俺に任せろ!」



「あの〜愛奈さん?こんな隙間からすみませんねあのなんかこいつが話したいことあるらしいんで聞いてやってください!あ、ヒカリさんおはようっす……あは。」



 おいぃぃぃいい!なんだよそのパス!キラーパスにも程があんだろ!一回も話したこと無いのにこんな展開やばすぎだろ……。どうしよなんて言おう。


「あ、あ、なんかすいませんいきなり。あ、あ、あのその白いワンピース似合ってますね!」


「ぷぷ。」


 快星のあまりのテンパり具合に思わず大那は顔を隠し吹き出してしまった。


「あ、ありがとう!快星くんだっけ?あのだし敬語なんか使わなくていいのよ?タメ口でいいからね全然!」



 なんていい人なんだぁ……。好きだやっぱり愛奈さん……。けど年齢についてはやっぱり嘘つくんだな。なんでなんだろう。まあ言えない事情は大きなことなんだろうけど。


「そ、そっかそうだよね!あの今更だけどよろしくね!」


「うん!よろしく!」



 え、なんか普通に仲良くなれた?おい!ダイダイ!なんか簡単に仲良くなれたぞ俺!



 という顔で大那の方を向くと大那の表情からは全く祝福する気は見えなかった。


「なんでお前だけ仲良くなってんだよぉおお!俺もヒカリさんと仲良くなるようになんかしろよぉぉお!」


「お前のアレはなかなかのキラーパスだったけどな……。まぁきっかけを作ってくれたのは確かだしな。よし、任せろ。」


「あの何回もごめんね愛奈さん。大那がさ、今度はというか、ヒカリさんに話があるるらしいんだけどいいかな?」


 この二人は似た者同士であった。


「あ、ヒカリね!ヒカリ、なんか話があるみたいよ大那くんが!」


「いやです。無理です。」


 ヒカリの返事は見事な即答だった。


「ダ、ダイダイ……?」


 ダイダイの目はまるで初期のちび○このように見事な点になっていた。


「カイカイ、合宿頑張ろうな。」


 大那は魂が抜けた表情で、そう快星に言って目を閉じたのであった。



「私はなんも悪く無いんだからねっ。」

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