第5話 天国か地獄か
いよいよ待ちに待ったこの日が来た……。
5月8日──勉強合宿1日目の朝、快星はいつも以上に気合いを入れ集合場所に向かって歩いていた。
「今日こそは、今日こそは距離を縮めるんだ。」
快星はあのイメチェン以降周りからの目が熱く、俗に言うモテキを迎えていた。朝、靴箱を開けるとラブレターが入っていたり、放課後に人気の無いところに呼び出され直接の告白、なんてことは指の数以上にあった。
しかし、それでもなお、愛奈とは全く話せておらず距離は1日目とは全く変わらずにいた。
「俺は本当に何をしているんだ……せっかくお金をかけて周りからも認められるくらい変われたっていうのに……」
「なぁーに朝から暗い顔してんだぁ」
いきなり肩を組んできたのは大那だった。
「ダイダイは朝から相変わらずのテンションだな……」
「カイカイは逆に暗すぎんだよ!まだ愛奈さんと話せてないこと気にしてんのか?」
「そうだよ、話したくてもどうしても話しかけられない話したいことたくさんあるのにぃ……」
快星は単に仲良くなりたかったのもあったが、おそらく自分だけが知ってしまった、『年齢』のことについても知りたかったのである。
「お前がチキンすぎんだよぉ!!」
そう言うと大那はうじうじしている快晴にローキックをお見舞いした。
「イタァ!え、普通にイタァ!普通背中トンとかだろそう言うとき!」」
「あぁすまん!ついムカついて。まぁとにかく大丈夫だ。今日は私服もバッチリ。愛奈さんもカイカイを見るに違い無い!今日こそ話しかけるんだぞ!じゃなきゃ、またローキック食らわすぞ!」
「サッカー部がそんなことに足使っていいのかよ……」
そうだこの日のために服も買ったんだ、今日のためにイメトレだってした。話しかけるんだ俺。
◇◇◇◇◇◇
「はーい、じゃあ全員揃ったんで乗ってくださーい。」
だるそうなトーンで国木先生がバスに乗るように3−5の生徒に言った。
「ダイダイ、見たか愛奈さんの私服……なんだよあのお方は……天使に見えたぞ一瞬。」
白いワンピースに身を包んだ、愛奈を見て快星は大那に言った。
「いやいや何を言っているんだ。ヒカリさんを見たのかカイカイは。」
大那は例の如く、ヒカリにしか興味がなくその日も足の細さが際立つ黒いスキニージーンズに大きめの白いパーカーと、とてもラフな格好に惹かれていた。
「いやなんか俺の格好と似てね?」
「なんでカイカイがヒカリさんとペアルックしてんだよぉ〜。」
快星にはあんな態度をとっていた大那だったが、ヒカリと全く話せておらず快星となんら変わらない状況なのであった。
「まあいい、それは置いといて、いいか、カイカイ。今回の俺らの最大目標は連絡先の交換だ!」
「わかってるぜ、ダイダイさん(ニヤリ)」
快星はいつも大那のノリに乗ってしまう性格であった。
「晴人くん昨日は持ち物のこと急に聞いちゃってごめんね!」
バス入り口前で、愛奈が突然晴人に話しかけた。もちろんその言葉を快星は聞き逃すはずがなかった。
「う、嘘だろ……。」
快星の口から魂が抜けてしまいそうになったところに大那がすかさず声をかけた。
「大丈夫だ!あの二人学級代表になったから交換しただけで絶対事!務!的!」
「まぁ感謝してるけど、文字打つのめんどくさいからって電話かけてきたのはどうかと思ったけどね。」
相変わらずのツンツン口調でヒカリも愛奈に続き話しかけた。
「う、嘘だろ……。」
こうして快星と大那は合宿最悪のスタートを迎えたのであった。
「あれ、俺なんかまずいことしちった?(汗)」
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