第5話 トドメにまつわるエトセトラ。

「やれやれ。オレ、またなんかやっちゃいました?」


 いつものことだ。


 オレがちょっと力を出すと、周りの人間が驚き、賞賛する。


 オレに与えられたスキル【パーフェクトヒューマン】の力を持ってすれば、こんなもの赤子の手をひねr……



「トドメぇ~☆」


 突然現れた金髪の少女が、男に鎌を突き刺した。


「……は? ……な、なんで?」


 男はそう呟きながら、吐血し、絶命した。



******



「艦長! 敵艦の数が余りにも多すぎます!」


 宇宙の遥か彼方。巨大な戦艦を模した宇宙船の中で、船員が叫ぶ。



「仕方あるまい。奥の手を使うか」


 髭面の艦長が、険しい顔でそう呟く。



「し、しかし艦長! アレを使えばこの艦はもう故郷へ戻れませんよ!」



「その故郷のためだ。……みんな、すまない」


「艦長! 謝らないで下さい! 私たちは皆、その覚悟で地球を離れたはずです! ……地球人の恐ろしさ、アイツらに見せつけてやりましょう」




「はい、トドメ~☆」


 戦艦の横っ面に、ミカンの乗ったミサイルが突き刺さる。



 戦艦は一瞬のうちに爆発し、宇宙の藻屑と化した。




******



 日差しの突き刺さるマウンドの上、タケシはキャッチャーのサインを注視する。



 地区大会、決勝。



 ここを勝てば、母校初の甲子園へのキップが手に入る。



 そして現在九回裏ツーアウト。点差は一点。ランナーは一人。



 幾度かサインに首を振る。



 ――ユウジ、悪い。ここはストレートで勝負をさせてくれ。


 

 キャッチャーマスク越しのユウジと目が合う。


 マスクの向こうで、ユウジが少し微笑んだ気がした。



 ゆっくりとセットポジションに入る。



 そして大きく振りかぶり、最後となるであろう一球を、



「トドメぇ~☆」



 いつの間にかバッターボックスに立っていたミカンがフルスイングをすると、打球は大きな弧を描き、スタンドへと吸い込まれた。

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