第8話 英雄、伝説の始まり
いろいろあったが無事に町に戻ってこれた。
凶暴化したモンスターの出現を伝えるため、冒険者ギルドに向かうと入り口に人溜まりができていた。
「何でこんなに人がいるんだ?」
ストルフは近くの冒険者に聞く。
「なんかよ、王都から人が来たらしくてな」
聞かれた冒険者が答える。
「王都から人が? 何があったんだ?」
ストルフはさらに聞くと、冒険者は答える。
「わるい、それまでは知らない」
その会話からしばらくして人溜まりはなくると、ギルドの入り口に、俺の鞄が置いてあるのが見えた。
「俺の鞄! なんでここに?」
その鞄は俺がこの世界に来たときに落とした物で、中を見ても、何か無くなってる事はなく、そのままだ。
「君はそれの持ち主なのかい?」
俺が鞄の中を確認していると、横から声をかけられる。
「えっと……そうですけど」
声の方を見ると、鎧を着た人がいた。
「それじゃあ、ついてきてくれ」
その人に腕を掴まれ、そのまま引っ張られる。
「ちょっと、なんですか!」
急いで手を振り払おうとするが、無理だった。
「ミライどうしたんだ、急に走り出してって、何やらかしたんだお前!」
ストルフ達がこちらに走ってきて俺の様子を見た瞬間、驚きながら叫ぶ。
「なんもやってない、急にこの人に腕を掴まれたんだよ」
俺は若干パニックになりながらストルフに説明する。
「何もしてないのに捕まるわけないだろ!」
ストルフも若干パニックになりながら言い返す。
「とりあえずよぉ、相手の話聞こうぜ」
ダログナが間に入ってくる。
「すいません、とりあえずついてきてください」
鎧の男にギルドの中に案内される。
俺達はギルドの部屋に案内される。
「それでは、こちらの事情を話しますね」
「まず、モンスターが凶暴化している件は知ってますよね」
「「「「はい」」」」
「その件は王都でも問題視しされていまして、解決策を探していたのです」
「すると、これが見つかったのです」
鎧の男はテーブルの上に紙を置く。
「これ、なんて書いてるんですか?」
ストルフは紙を手に取るとすぐに質問する。
「解読した結果、モンスターが凶暴になりし時、異世界から英雄が現れる、そう書かれていたのです」
「そして王都の近くにこの鞄が落ちていたと報告があり」
「偶然ではないと、持ち主を探すことになったのです」
「つまり、ミライが英雄じゃないかと?」
ストルフは質問する。
「はい、異世界から人が来ることは滅多にないこと」
「しかし、ミライさんはこのタイミングでこの世界に来ました」
「これはもう、ミライさんが英雄と考えるほかないかと思います」
「確かに筋は通っていますね」
鎧の男の説明を聞き、俺はそう言い考え込む。
「…………そちらの事情は分かりました」
「つまりは俺をを王都に連れて行かないといけないと」
「はい」
俺が喋り、それに対し男は静かに頷く。
「それじゃあ、皆で行こう、王都に」
「申し訳ありませんが、それは無理です」
「えっ……なんでですか!?」
俺は四人で行くつもりしかなかったので驚く。
「そう簡単に王都に人をいれるわけにはいかないのです」
それに対し、鎧の男はとても冷静に返す。
「ってことは、ここでストルフ達と別れなきゃいけないんですか?」
「そういうことです」
「嫌です、と言ったらどうするんですか?」
「とても困りますね、国の危機とも言える状況なので」
「場合によっては無理矢理でも連れて行くことになるかもしれません」
俺は質問するが、鎧の男はまた冷静に返す。
「横から入ってすいませんが、俺もミライを王都に連れて行くのは反対です」
「私も反対だな」
ストルフそれに続いてリアさんも喋る。
「でもしかたねぇんじゃねえか? 国の危機なんだし」
それに対し、ダログナが返す。
「たしかにそうかもだけどよ、ミライはやっと新しく出来た仲間だ」
「それに初めて出会った異世界人だぞ」
「確かに最初のは分かるが、その次はそんな大事じゃねぇだろ」
「何を言ってるダログナ、初めて会った異世界人だぞ、それ以上に大事なことはないだろう」
ストルフ、リアさんが喋り、ダログナが返し、それに対してさらにリアさんが返す。
しばらく四人で話し合っていると鎧の男がなんだか疲れた様子で話す。
「それでミライさんは結局どうするのでしょうか?」
「王都に行きます」
「本当にいいんですね? 三人とはもう会えないと思いますが」
「はい……立派な英雄になって国の未来を守るって約束をしたんです」
「そうですか、ならば絶対にその約束果たしましょう」
「外に馬車を止めてあります、どうぞついてきてください」
鎧の男について行き、馬車に乗る。
「ミライ、さっき話したとおり、約束を破ったら私達のパーティーに戻ってきてもらうからな」
馬車の外からリアさんが話しかけてくる。
「わかってる、精一杯がんばるよ」
返事をすると馬車が動き出し、後ろでストルフ達が手を振っていた。
俺は三人に手を振り返した。
そうして俺の英雄生活がはじまるのだった。
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