第7話 スキル、動き出す運命の歯車

 レベル上げの為にレッルシザースを倒しているとそれは起こった。

頭の中に何かのイメージがうっすらと浮かぶ。

「今の何だ?」

俺がキョロキョロしていると、ストルフが少し心配そうに話しかけてくる。

「どうした、何かあったか?」

「なんか、頭の中にイメージが浮かんで」

それを聞くとストルフは嬉しそうに言ってくる。

「それ、スキルが発現したんだよ」

「ほんとに!」

「あぁ、ステータスカードを見てみな」

言われたとおりステータスカードを見る。

_______________________________________________

 カトウ ミライ(竜)レベル10


    体力1120


  物理攻撃990


  物理防御660


  特殊攻撃630


  特殊防御655


    俊敏1000 


スキル 

      攻撃 ドラゴニックキック(物理80)(竜)

_______________________________________________

「おお!」

レベルも能力値も上がっており、何よりスキルがある。

「どんくらい上がったのか見せてくれよ」

俺はストルフにステータスカードを渡す。

「能力値もいい感じだし、なによりいいスキルが発現したな」

ステータスカードを見ながら、ストルフは言う。

「俺達にも見せてくれよぉ」

ダログナとリアさんも俺のステータスカードを見てくる。

「おぉ、いいスキルゲットしたなぁ」

「能力値も順調に上がっているな」

そしてステータスカードが返ってくる。

「このスキル、そんなにいいのか?」

「デメリット無しで威力80は結構いい方だ」

「へぇ、そうなのか」

そんな会話をしながらステータスカードをしまう。

「次はスキルを使ってみてくれ」

ストルフが言う。

「えっと、どうやって使うんだ?」

「スキル名を言えば使えるぞ」

「わかった」

それを聞いてモンスターを探す。

「よしっ、いた」

何かを食べてる所のレッルシザースの幼体を見つけた。

すぐにモンスターはこちらに気づき、威嚇してくる。


 「ドラゴニックキック」

モンスターの前に行き、スキル名を言う。

すると、さっきのイメージがハッキリと浮かび上がると同時に右足が青い火に包まれる。

火に包まれているが熱くはない。

そのままモンスターに向かって走り、目の前でイメージと同じようにジャンプし左足を畳み右足を前に出す。

モンスターの鋏に右足が当たった瞬間、火が爆発してモンスターが後ろに少し吹っ飛ぶ。

「すごいな」

右足が当たった鋏は砕け、モンスターは動かなくなった。

あんなに硬かった鋏が簡単に砕け、さらに倒せた。

予想以上の威力だった為、とても驚いてしまった。

 「ミライのスキルも試せたし、今日はこの位にして町に帰るぞ」

ストルフがこっちに言う。

「わかった」


 ストルフ達の方に歩いていると、ドッガーンっと大きな音が後ろからした。

後ろを振り返るとそこには5m程で鋏が盾のようになっている蟹がいた。

奴がレッルシザースの生体だと理解するのに時間はかからなかった。

「ミライ早くこっちに来い」

ストルフが焦りながら呼んでくる。

俺は急いでストルフ達の方に走る。

「吹っ飛べぇ、ストロングボンバー」

ダログナが叫びながらスキルを使い、鉄槌をレッルシザースに振り下ろす。

レッルシザースは後ろに少しとぶ。

ダログナのおかげで無事にストルフ達の所にたどり着く。

「あの目は今話題の凶暴化したモンスターだよな」

「間違いねぇ」

ストルフとダログナが喋る。

目に何かあるのかと見てみると、目が赤い。

あの感じ、俺がこの世界に来たときに見たモンスターの目と一緒だ、という事はあいつも凶暴化してたのか。

「逃げることは出来ないから戦うしかないな」

リアさんが言う。

「まっそうだな」

「そうだよなぁ」

それにストルフとダログナが返す。

「ミライも戦ってくれるか?」

ストルフが聞いてくる。

「ああ、当たり前だ」

かっこつけて返事したが、内心とても怖い。

あの目を見ているとあの時を思い出してしまう。

しかし、ここで戦わないと命の恩人を見捨てることになるかもしれない。

それは嫌だ、だからこれでいい。

レッルシザースはこちらに近づいてくる。

「ウィンドカッター」

リアさんがスキルを使う。

前に出した右手から風の刃がレッルシザースに向かって飛んでゆき、右前足の関節に当たる。

レッルシザースは少し怯んだが、止まらない。

「普通の個体ならこれで切れるんだけどな」

リアさんが苦笑しながら言う。

「凶暴化モンスターは普通のに比べて強いってのは本当だったんだなぁ」

ダログナがそれに返しながら、レッルシザースに向かって走り、ストルフもそれに続いて走る。

「ロッククロー」

「ストロングボンバー」

ストルフとダログナが同時にスキルを使う。

ストルフの右手に犬の爪のような形の岩が現れ、ダログナの鉄槌が白く光り出す。

ストルフは右前足をダログナは左前足を攻撃する。

スパッと音がして、右前足は切れて、バキッと音がして、左前足は折れる。

「グギィァァァ」

レッルシザースは青い血を前足から吹き出し、悲鳴を上げながら前に倒れる。

「今だ、たたみかけるぞ」

ストルフが全員に指示し、3人は頷く。

「ロッククロー」

「ストロングボンバー」

「ウィンドカッター」

「ドラゴニックキック」

全員が一斉にスキルを使う。

ウィンドカッターが顔に当たり、レッルシザースが怯む。

そして、ロッククローとストロングボンバーそしてドラゴニックキックが、さらに顔に当たる。

レッルシザースは2、3m吹っ飛び、動かなくなった。

「勝てたな」

「思ってたより苦戦しなかったなぁ」

「良い事じゃないか」

ストルフ、ダログナ、リアさんの順で喋る。

俺はまだ生き物を殺すのに慣れなく、向こうから襲ってきたとはいえ、罪悪感が沸いてくる。

こんな調子では慣れるのは時間がかかるだろう。

元の世界に戻った時を考えたら、慣れない方が良いのかもしれないが……。

「早く帰るぞ、ミライ」

そんな事を考えてるうちにストルフ達はレッルシザースの一部を剥ぎ取り、帰る準備が出来ている。

「わかった」

俺も荷物を持ち、ストルフについて行く。

「あれはもう持って帰らなくていいのか?」

レッルシザースの死体はほとんど残っている。

「持って帰りたいが、もう持てないんだよ」

確かに鞄はパンパンでもう入りそうにない。

「早く帰るぞぉ、また襲われたらめんどくせぇ」

「そうだぞ、ストルフ、ミライ、早くしないと置いてくぞ」

二人がこっちを見ながら言ってくる。

「「ちょっと、待ってくれよ」」

急いで二人の所に行く。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「様、こんな物が見つかりました」

「モンスターが凶暴化するとき、異世界から英雄が現る……か」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その時、静かに運命の歯車は動き出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る