第5話 準備、帰還の決意
「レベルを上げるって何をするんです?」
「基本的に戦うと上がるが、こんな常識も知らねぇのか」
「言うの忘れてたな、ミライは異世界の人なんだよ」
「異世界!?」
リアさんが大声を出す。
「えっと、そうですけど」
リアさんの大声に驚きながら返事をする。
「ストルフ、何故言わなかった!」
リアさんの声がどんどん大きくなってゆく。
「だから忘れてたんだって、落ち着け」
「えっ あ、そっそうだな落ち着かないと」
周りの視線に気づき、リアさんは顔を赤くしながら席に座った。
「どうしてリアさんはあんなに興奮してたんだ?」
小声でストルフに聞く。
「リアは異世界とか大好きなんだよ」
「なるほどだからあんなに」
リアさんはまだ下を向いて顔を赤くしている。
「とりあえず、ミライの武器を買いに行かなくちゃな」
ストルフが場所を変える為か、俺の武器を買いに行こうと言った。
「「そうだな」」
俺とダログナが同時に返事をし、リアさんも頷いている。
「じゃあ行くか」
ストルフの言葉で三人全員が立ち上がり、ダログナがお金を払って酒場を出って武器屋に向かった。
「じゃあ、この中から一つ選んでくれ」
そう言いながらストルフが大剣、両手剣、片手剣、ダガー、斧、槍、木槌、弓矢、クロスボウを机の上に置いていく。
「買ってもらっていいのか?」
武器はよく分からないが、ある程度質のいい物なのは分かる。
「いいも何も武器が無いと駄目だろ?」
ストルフ達が不思議そうにこっちを見てくる。
「いや、俺荷物持ちだし、ここにあるの安くないだろ?」
「確かに安くはないけど高くもないから一個ぐらい大丈夫だし、ミライのステータスだと十分戦えるから荷物持ちにするのは勿体ないんだよ」
「えっと、そうなのか?」
ダログナとリアを見ると二人とも頷いている。
「じゃあお言葉に甘えて選ばせてもらうよ」
そう言ったのはいいが、武器なんて持った事は無いから何を選ぶか迷う。
簡単に使えそうな片手剣でいいかなと思い、片手剣を手に取る。
「うん、これなら問題なく使えそうだ」
思ってたよりは重いが、この感じだとちゃんと振れるだろう。
「じゃあそれに決まりだな」
ストルフが店員にお金を払い、ダログナとリアさんが他の武器を片付ける。
「防具も無いとまずいよな」
そう言いながら服を渡してくる。
「防具? 服じゃなくて?」
俺の手にあるのは篭手や肘当てもあるがどう見ても服だ、それ以外に見えない。
「確かに服だけどモンスターの毛を使われているから丈夫なんだよ」
その説明を聞いて納得する。
「着替えるんならあっちな」
ストルフが指を指してる方を見ると試着室のような所がある。
「わかった」
試着室のような所に入り、着替える。
「あっスマホ」
着替えてるとズボンのポケットにスマホが入っているのに気づく。
「そういや、元の世界では俺って今どうなってるんだろう?」
今まで色々ありすぎて考える暇が無かったが、俺は元の世界ではどういう扱いになってるのか。
行方不明?それとも死んだ事になってる?
分からないが帰りたいという気持ちがあふれてくる。
「帰れんのかな、俺」
藁にもすがる思いでスマホの電源をつけてみる。
つきはしたが、圏外でネットも繋がってない。
「まぁ、そりゃそうか」
何となく分かっていた事だが、かなり不安になってくる。
もう親や友達に会えないのだろうか?そう思いながらスマホの写真を見る。
バカな事して一緒に笑った友達、小さい時の俺と両親の写真などを見てるといつの間にか涙が出ていた。
「もう一度会いたいなぁ」
気付けば声に出ていた。
色々な写真を見ていると何かメールがあるのに気付いた。
一人の友達からだった、そいつはオタクで結構変わってる奴だった。
そのメールを見るとこう書かれていた。
[ジーっとしてても、ドーにもならねぇ!]
[駄目で元々、人生はギャンブルZOY☆]
「ふっ」
つい笑ってしまった。
「そういや、こいつに将来どうしようか相談してたんだっけか」
俺はあまりお金が無いため、大学に行くかどうか相談していた。
最初のはまだいいのだが、二個目がなんかむかつく、特に最後の星がすごいむかつく。
まったく、何の作品の台詞なんだか、これを見てると不安になってるのが馬鹿らしくなってきた。
そうだな、帰れるかを考えるんじゃ無くて帰る方法を考えよう。
「おーい、まーだかー?」
ストルフが聞いてくる。
「悪い、少し考え事してた」
早く着替えを済ませないといけないな。
「これで大丈夫か?」
着替えを済ましたので着方があってるか確認する。
「大丈夫だ、それであってる」
「おぅ、問題ねぇな」
「うむ、似合ってるぞ」
ストルフ、ダログナ、リアさんの順で話す。
「あのぉ、リアさん、似合ってるかじゃなくて着方があってるかを聞いたんですけど」
「あぁそうか、それであってるぞ」
良かった、何となくで着たけどこれであってた。
「そういや、考え事って何考えてたんだ?」
「えっと、どうやって帰ろうかなって」
「「帰るのかぁ!」」
「いや、帰るのは当たり前じゃぁねぇのか」
ストルフとリアさんが叫んで、その後にダログナが普通に話す。
「何言ってんだ、ダログナァやっと仲間が増えたんだぞぉ」
「何を言ってるんだダログナ、やっと異世界人に会えたんだぞ」
ストルフとリアさんが同時に話す。
「同時に話すんじゃねぇ、何言ってるかわっかんねぇだろうがぁ」
それに対して、ダログナが叫ぶ。
「まあ、今は帰り方どころか帰れるかどうかも分からないんだけど」
「「「そうなのか」」」
ストルフ達が仲良く同時に喋る。
「じゃあ、今は焦る必要は無いって事か」
「そうゆう事だなぁ」
「それならそうと早く言えば良いのに」
またストルフ、ダログナ、リアさんの順で話す。
「じゃあ、ミライの装備も買ったし今度こそレベル上げだな」
「「「そうだな」」」
俺、ダログナ、リアさんが同時に返事する。
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