第184話 10階層ボス戦
今わかっていることはここが10階層であること。それと目の前にいるもう一人の俺は多分10階層のボスだ。自分を倒さなければいけないというお約束な展開というやつだな。しかも同じ動きをする上に相手を傷つけるとこっちも傷つくとかめんどくさいパターン。
これは考えにも入れていなかったな…10階層はボスしかいないってやつ。階層移動せずにさっさと帰るべきだった。
でもまあこうなってしまった以上こいつを倒さないと外へ出られないってわけだ。どうやって仕留めるか考えないといけない。幸い相手はこちらが攻撃しない限り大人しいので時間だけはたっぷりとあるしな。
まずはどうにかして倒さないといけないことだけは確定だろう。それと外見上はそっくりだが中身がない。自分で考えて動かないし声も出ない。それにリュックの中身もないときたもんだ。まずは治癒の杖でさっき傷をつけた頬を直そう。
「やっぱりね…」
俺の頬の傷は治ったがボスの頬は切れたままだ。つまり魔法もスキルも道具も使用できないのだよボスは。ただお互いダメージを受けるだけ。俺が痛いのを我慢すれば倒せるのだろう。中々ひどい相手だな。
ということはだ、俺の精神力が尽きるのが先かボスのダメージ蓄積が限界を超えるのが先かっていう勝負か…えぐいな。やはりラスボス的な感じなだけあって今までで一番強いわ。
さっきリュックから出した短剣を構えた。ベルトに指してある剣でもいいんだけど、必要以上にダメージは受けたくない。お互いか切りつけたらダメージが2倍かもしれないし…それは少しいやだ。でもそのほうが早く勝負がつくし痛い回数も少なくなる…のか? というか治癒の杖や回復剤で失った血は回復するのだろうか…確認したことがないからわからないんだが。もし回復できないんだとすると先に貧血で俺のほうが倒れるんじゃないか?
ああくそっ…手が震えて短剣を落としそうだ! 刃物はだめか…じゃあ魔法かスキル…いっそのこと殴るか?
無駄にある時間が逆にイラつく。
「くそ…っ」
短剣を投げ捨て俺はその場に寝転ぶ。健太だったらこんな時後のことなんて考えず動けるんだろうな…いつも偉そうなことをいいながら肝心なところで俺は動けなくなる。
「なああんたも俺なんだからそうなんだろう…?」
話しかけても無駄だとわかっていてもつい話しかけてしまった。そんな自分がおかしくてちょっと笑ってしまう。
「ここまで来て攻略不可とかないわー…」
真っ白な空間で俺の声だけが響いていた。
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