第149話 万能薬
ゆらゆらと揺れる感覚が気持ちよく覚醒してきた意識が再び奥へと落ちていくかのような感じがした。瞼に当たる光りはかなり弱くむしろ暗い。まだ朝になっていないのかもしれない。
それにしてもなぜこんなにふわふわと揺れるのだろうか。まるで誰かが揺すっているかのようだ。いや…本当に揺すられているのかもしれない。よく考えたら俺はまだ今日は布団に入った覚えがない。
まだ少し眠いが瞼に力を込め起きようと努力をして見た。すると口の中が変な味がするとこに気がつく。
「まずい……なんだこれ」
「おっ よっすー起きたわ」
視界には健太の顔が入った。頭を動かし周りを見るとファーナさん、ミネ、リノとそろっている。どうやらここはダンジョンの中みたいだ。
少しだけだるい体を起こし今の状況を思い出そうとしてみる。緑色のスライムが少し離れたところでうろついていた。
「あーもしかして俺なんか罠踏んだ?」
「踏んでない。むしろ、踏んだのは、ケンタ」
チラリと健太のほうを見るとゆっくりと視線をそらしていく。多少は申し訳ないとでも思ったのかもな。
「でもしかたないでしょ? あれは多分誰も気がつかないよっ」
「どういうことだ?」
「罠じゃない。踏んだのは、スライム。紫の」
どういうことかと聞いてみるとミネの魔法の音と衝撃に驚いた紫のスライムが姿を隠しており、健太が踏んだことによって攻撃とみなされ反撃してきたということのようだ。実際スライムを踏んだ健太はスライムが要ることを認識すらしていなかった。踏んでから初めて気がついたくらいだ。姿を隠していたか周りと同化していたか何かしらの手段で姿を隠していたことは間違いないだろう。ということはだ、俺が嗅いだあの甘い匂いが紫スライムの攻撃だったということなんだろう。
「あー…それで後ろにいた俺が攻撃されたのか…」
「そう。睡眠状態、になった」
何度か体を揺すったり頬をたたいてみたりしたけども起きなかったみたいで、万能薬を使用し俺を起こしてくれたということだった。つまり今口の中がまずいのは…
「万能薬ってまずいな」
「まあくすりですからね」
「口直し…ファーナさんおやつ余ってない?」
「えっ だ、だめです! 別にまずくたって死ぬわけじゃないんだからねっ」
いやまあそうなんだけどね? ファーナさんはポーチを抱えて後ずさりしている。よっぽど取られたくないみたいだな。親にもそうやればよかったんではとかおもってしまうくらい必死だ。出来なかったから取り上げられたんだろうけどね。
それにしてもまずい…こりゃ~口直しのために飴とか少し用意しておいたほうがいいかもしれないな。
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