第25話 ファーナさんへのお礼

 ダンジョンに入って数分。俺達は出口のところに立っている。健太がそわそわして進みたがっているが今日の目的はファーナさんに会って健太の無事を教えることだけだ。スライムを狩る予定はない。それでもたまーに出口近くにあわられるスライムは処理しなければならず、そのスライムを狩りながらファーナさんが来るのを待っていた。最悪2時間くらい待っても来なければ今日は引き上げるつもりだ。


「折角のダンジョンなのに…」

「今日はファーナさんに会うだけだよ?」

「けち…」

「………」


 ほんといらいらするなこいつ。誰のためだと思ってるんだ…そんなことを考えつつスライムを狩り待っていると30分くらいだろうか?そのくらいしたときに背後の壁が開いてファーナさんが入ってきた。


「あ…っよかったーちゃんと治った?」

「毒消しよく効きますね」

「うんうん。直ぐ飲めばもっと早く治るんだけど…やっぱり高くて持ち歩けないし。早くそこまで余裕が持てるだけの稼ぎが欲しいところね」


 ファーナさんの薬についての話が途切れたところで俺は持ってきていたお礼を差し出した。まあお小遣いが少ないから多少は目を瞑ってもらいたいところで、箱に入った100円くらいで買えるクッキーを渡す。


「これは?」

「何か健太が世話になって悪かったなーというお礼?アイテム貰ったし、こんなんじゃ割に合わないかもだけど…」


 首を傾げつつもファーナさんがクッキーを受け取ってくれた。女の子だから甘いのとか喜んでくれるといいのだが。

 クッキーの入った箱をくるくると回しファーナさんは匂いまで嗅いでいる。流石に箱のままじゃ匂いはしないと思うんだけど…

 最後にはそれを軽く振り始めた。


「ん…中に何か入ってるっ」

「あーうん。そっちにはそういったのは無いの?」

「うーん…そもそも何が入っているのかわからないんだけど、とりあえずこう…紙の入れ物に入ったものはないわね。とにかく、この紙は壊しても大丈夫かしら?」

「もちろん。中身は甘いお菓子だよ」


 箱をくるくると回していたファーナさんの動きが止まった。ギギギと音がしそうなほどゆっくりと首を回しこちらを向くと、口をパクパクとして箱を指差していてまるで金魚みたいだとか思ったけどそれは口にはしなかった。


「え…ちょ…こ……え?」

「えーと…甘い焼き菓子なんだけどもしかして食べれなかった?」


 住んでいるところが違うし好みも違うからもしかしたら食べられないのかと聞いてみたが、どうやら違うらしい。すごい勢いで首を横に振っている。


「ちがっ…むしろ嬉しすぎます!!甘いお菓子なんて珍しすぎて高級でめったに食べられないんですっ」


 目を輝かせているファーナさんの目はクッキーの箱に釘付けになった。

 

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