第26話 提案
いつまでたってもファーナさんは箱を開けられないようなので俺が変わりに開けてあげた。点線が入ってるから開けるのは簡単なのだが、そもそもその作り自体が理解出来ていなかったみたいだ。
「ふあぁぁ~…すごいいい匂いがしますっ」
早速とばかりにファーナさんは1枚手に取り口へと運んだ。どうやら言葉にならないくらい喜んでくれているようで、クッキーを眺めながら目を潤ませそれでも口は休まずに咀嚼している。
「おいふぃーです~…んっく。これ全部いただいていいんですか?」
「もちろんファーナさんに上げたんだから全部どうぞ」
「やったーーあ。後でお茶と一緒にゆっくり味わいます!」
ファーナさんはいそいそとクッキーの箱をポーチの中へと押し込んだ。甘いもので正解だったみたい。
「…っと。今日はどうしましょうか。このまま少し狩りますか?」
「あーそれなんだけど…」
俺はもうダンジョンに来たくないことを言った。健太は防御重視にするからまだきたいともファーナさんの前でも言っている。
「んー…そうなんですね。でも狩りとかしないと生活困ったりしないんですか?」
「「…は?」」
この言葉には俺も健太も驚いてしまった。親の稼ぎで生活している俺達にはまだ働く必要がないのが当たり前で、ファーナさんが何を言っているのか直ぐに理解できず、顔を見合わせ首を傾げた。
「あれ…なんか変なこと言いました??」
「…もしかしてファーナさんダンジョンで生計立ててるの!?」
「えーと…こっちでは成人したら当たり前なんだけど…ダンジョンとか森の中とか…畑仕事とか?」
どうやら俺達の生活環境はかなり違ったらしい。ファーナさんのところでは16歳ですでに成人とされ自立するのが当たり前で、その生計を支えるためのものの1つとしてダンジョンで稼いだりするものなのだそうだ。
「じゃあやっぱりお菓子だけじゃ割に合わないだろう…?」
「んー…ヨシオはそう思うのね??それならこうしたらいいんじゃないかな」
ファーナさんの提案はこうだった。俺達がお菓子を提供する代わりにファーナさんはここでの狩りに付き合ってくれ、さらにアイテムも全部くれるとのことだ。3人ならかなり安全になるしこの間の毒とかの対策として解毒剤を買う費用も直ぐ出来るそうだ。現にこの間の短時間の狩りで解毒剤1本分は出来ているくらいだった。装備用の費用も少しずつ増やせる事だろう。
「悪くないと思うんだけどどうかな?」
「でもまったく危険が無いわけじゃないだろう?」
「まあね…でもこのダンジョン地下10階が最下層と浅いし、一度くらいダンジョン攻略したら何があるか体験してみたいと思わない?」
ふふっとファーナさんが笑った。一瞬だけ俺はドキッとした。
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