第29話 精霊契約 〈契約〉 (ミント視点)


「んっ…」


暖かい…強くて柔らかい…


「あれ…?」


お兄様…?ローズ…?みんな…?ここはいったいどこ?

地平線まで何も無い…大地が広がっていた。僕は茜の滝に飛び込んだはず…


「お主が我の契約者か?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


強い芯の通った低い声につい驚いてしまった。というか後ろから不意打ちで話しかけてくるのが悪いのだ。


「随分小ちゃいやつが来たものだな。エミリアも何を思ったのものか…」


かわいた肌に赤色の瞳。輝くような茶髪は何か惹かれるものがあった。


「貴方はいったい…?何者なんでしょうか…?」


「我が名はガイア!土の精霊王だ!」


「そうなんですね〜で、僕と契約してくれる精霊さんはどこですか?」


「お主!ちょっとは驚かんかい!我は精霊王なんだぞ!」


「いやぁ、エミリアと友達になってからはそんなことでは驚きませんよ!で、僕と契約してくれる精霊さんはどこですか?」


「………。」


「ガイアさん?聞いてます?ガイアさん〜?」


「もうよい!お主と契約するのは我だ!」


え…?


「ええええええええええええええぇぇえええ!?精霊王と契約なんて恐れ多い…」


「その恐れ多い精霊王を雑に扱ったのはどこの誰じゃ!…取り敢えずこっちにこんかい!!」


「はっはい!」


「我の手を離してはいかんぞ。」


大きな手だった。暖かく力強いお父様を思いだす手だった。


『ミント、お前はライムを支え素晴らしい国を作るのだ。分かったか?』


景色が変わった。ここは山だろうか。生い茂る木。木漏れ日が暖かい。


「見てみろ。この木を支えているのはなんじゃ?」


「土ですか…?」


「そうじゃ。木は土がなければ生えない。木の栄養源は土だ。人々を癒す川も土、山がなければ流れない。土は全てを支えるものなのじゃ。お前は人々を支えるとなれ。目立つことは無いがお前がいなければ何もはじまらない存在になれ。」


「僕になれるんですか…?そんな存在に!」


「そんなものお前次第じゃ。自分で考え。だか…才能はある。努力出来る才能がな。心配せんでもお主を認めてくれる人がいるじゃろう?」


「…はい!ありがとうございます!…えっと…ガイラさん…?」


「ガイアじゃ!それくらい覚えんかい!」


「ごっごめんなさい…」


「はぁ…ちょいと目を瞑っておれ。…お主に土の精霊王ガイアの名のもとに。土と自尊の祝福をミント・フォーサイスに。誓華の祈りを捧げる。…ではまたな。ミント。」


優しい声が頭に響く。僕は一瞬で眠りについてしまった。

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