第27話 精霊契約 〈契約の間〉

森の奥へ奥へ向かううちに空気が冷たくなっていく感じがするのは気のせいだろうか。


何となく草木も生き生きして見える。なんでだろう…なんだか懐かしい…?




「…ラベンダー?」




「…ごめん、ロータス。なんかぼーっとしてた…」




歩くうちにどんどん水の流れる音が近くなっていく。すーっと風が耳元を通り抜ける。




「みんな、ここが茜の滝よ!」




夕焼けの幻想的な赤がそのまま流れてきている…現実離れした光景に目を奪われてしまう。


隣の崖から流れる滝はキラキラと太陽に反射している。そして滝の周りには池が広がっていた。




「じゃあこの池に飛び込んで?」




「「は?」」 「「え?」」 「んっ?」




…死なない?大丈夫…?かなりの勢いの滝だけど…




「ねえ、エミリア…別ルートは…?」




「ミント…ごめんなさい…飛び込むしかないの。」




………誰も飛び込もうとしない。


まぁね!5歳児と4歳児にこんなことさせる事がおかしいよね、うん。




「手を繋ぎましょう!そしたらきっと怖くないでしょ!」




ローズ…貴女はどこまで心が綺麗なの…




私はぎゅっとエミリアとローズの手を握りしめた。ほのかな温もりが両手から伝わってくる。


……深呼吸、深呼吸。




「…行くよ?…せーの!」




ライムの合図で一斉に飛び出す。




やっぱり…死ぬんじゃね?


水面につく直前目をぎゅっと瞑ってしまったがいつまでも落ちている感覚…先ほどとは違う浮遊感を感じた。




ゆっくりと目を開けるとラベンダーと赤いアネモネの花畑が広がっていた。果てしなく続く花畑と青い空。




…ここが…契約の間…?




振り向くとそこには私にそっくりな純白の翼をはやした天使が立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る