第18話 私と私
いや、違う。彼女はラベンダーだ。
私が…ラベンダーになる前のラベンダーだ。
「こんにちは、私。」
「………こんにちは。」
「私っていうのは面倒だから私に名前つけてよ。」
「貴女はラベンダーでしょう?」
「私は今はラベンダーじゃない。あと、私はもうラベンダーにはなれない。」
なれない?ってどういうこと…?
え、待って待ってたんまたんま…いつもは動く思考回路がプチんっとはさみで切られたようだ。
「…私ね、貴女に感謝してるの。きっと私達は生まれた時から魂として2人で1人だったのよ。表に出ていたのが私なだけで。私が初めて見た予言がローズが国外追放されるって事だった。」
「え?」
そんなこと覚えていない、私の記憶があるのはだいたい3歳頃だ。
「その時は貴女の魂起きてなかったんじゃないかな?私はだから彼女を愛せなかった。だけど私が裏に行ってから貴女が未来は帰られるって教えてくれたの。」
「私は自分がしたいことしただけだから!」
「それでも私は救われたわ。それに…私は貴女を守ったせいでもう表には出れない。だから…私の分までローズを愛してね?」
「そんな…」
私には資格がない。
私が異質な存在なのに。
トラウマすら解決していない…前世を引きずる私が。
私がローズを愛する資格なんてない。
「私に何が出来るの?」
「今までみたいにすればいいの!私が望むのは新しい名前。」
「貴女の名前…」
フローレス家に相応しくて私の瞳に由来する名前。
すっと私は考えがまとまった。
さっきまでの混乱が嘘みたいに。
「ヴィオレッタ…」
「ヴィオレッタ…いい名前ね!…そろそろ時間みたい。さよなら…また話せることを、ラベンダーの幸せを願ってる。私は貴女の味方だから!」
私の味方…私は勇気をだして橋を渡った。
目を開けるとそこはいつものベットではなくて…
「病院…?」
「目が覚めたの?はぁ…よかったわ…」
白衣の先生が優しく微笑んでくれて、その顔が最後に見たヴィオレッタの顔に似ていて…
私は思わず泣き出した。
心の底から大声で。
ごめんなさい、ごめんなさい。
貴女の一生を奪ってしまって…貴女が欲しかった物を全て私が貰ってしまった。
私は大丈夫だから泣いちゃダメよ。
聞こえないはずの声が聞こえて…
私は前を向かなくちゃ。
私は背中を押されているんだ。
「ラベンダーちゃん。大丈夫よ。貴女は3日も眠っていたの。」
あの時間が3日とは思えなくて…10分もないと思ってたのに。
「ラベンダーちゃん、貴女はここで休んでなさい。」
先生が出て行ったあと10分くらいして少し泥を付けたロータスが来た。
王宮の騎士団本部で訓練でもしてたのかな?
「ラベンダー………お前泣いて…?」
恥ずかしい。泣き顔なんて見られたくない。
でも今は…弱みを見せてもいい気がして。
ロータスはそっと私の横に座ると背中を撫でてくれて、暖かくて…まるで私がここにいていいんだよ?って言ってくれてるみたいで。
「ありがとう。」
私は心の底から微笑んで。
彼の手をぎゅっと握ると彼は強く握り返してくれた。
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