第5話 突然の訪問 <願う>

コンコン




「…はい。」




「お客様が来たわ♪」




気持ち悪い……上機嫌な母の声が堪らなく嫌で、吐きそうである。

きっとあの2人が来たのだろう。ローズは無事だろうか……




「どうぞ。」




2人の少年が私の部屋のソファーに腰掛ける。




「初めまして。僕はライム。でこっちがミント。」




「よろしくお願いします……。」




「こちらこそよろしくお願いします。ライム殿下、ミント殿下。」




そう、彼等こそゲームの本命キャラで王道爽やか王子兄弟。


兄のライムは聡明な爽やかお兄さんなのに対して、弟のミントは爽やかだけど可愛い弟キャラ。


2人を攻略するために先生ルートに何度挑んだか……思い出すだけで頭が痛い……




「あの……フローレス家の侯爵令嬢は2人いると聞いていたんだけど……侯爵夫人にも誤魔化されてしまってね。何か知ってる?」




「そのことについてお話があります。私の妹ローズは赤目黒髪です。」




「っ…!」




「聡明なお二人にはこの一言で大体わかるでしょう。彼女、ローズは両親から酷い虐待を受けています。家庭教師も付けてもらってません。最近、私わたくしが基本的なこと教えていますが……」




口元に手をあてて考えるような素振りをするとライムは溜め息を吐いた。


いや、イケメンは溜め息もカッコイイな。ミントは今にも泣きそう。というか怒っているんだろうな。




「そして私達は特殊能力者です。ローズは傷を癒す能力。彼女が殴られて無事なのもそのお陰でしょう。」




ミントの緑の瞳から涙がぽろぽろでてくる。泣き顔も可愛いな!最強か!?




「まだ、あったことない妹のために泣いてくれてありがとうございます。私の特殊能力は予知能力です。貴方達が来ることを知っていました。」




「じゃあ何故……彼女はここにいない?」




「やはり子供の力では無理でした。でもローズは庭にいます。だからちゃんとほら。」




鍵を鍵付きの箱から出す。やっとライムが口元にあてていた手を離す。




「庭に行く前にお願いがあります。まずミント様に。」




「…僕ですか?」




「私が学園に入ればローズを護る人はいなくなります。だからたまにうちに来て様子を見守ってたまには相談にのって、そして守ってあげてください。……心も体も。」




戸惑いの表情を浮かべるミントに対してニヤニヤと笑うライム。


戸惑う弟がそんなに面白いか。性格わっる……




「その感じだと僕にも何かあるのかな?」




「はい。貴方が王になった時、虐待を罪とする法律を作って貰いたいのです。もちろんお願いなので断って貰っても大丈夫です。」




いけるか……?ミントはいけるだろうけど……ライムはなぁ?

あって10分も経ってないし。こんな仏頂面だし。




「いいよ。ミントもいいだろう?」




「そうですね。」




「その代わり…敬語やめて貰えないかな?2つもお願いしたんだしこれくらいいよね!」




笑みが黒い……有無を言わせるつもりはない……か。

不敬罪に問われそうで怖いわ。




「わかりまし……はぁ……分かったわ。それじゃあ早く行こうよ。ローズのもとへ!」




決めれた物語シナリオが変わり始めた。

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