第2話 彼女が悪役になった理由

「お父様が書斎でお待ちよ。」


さすが侯爵家。家が広い。

いや〜小さなアパートに母さんと妹の3人で住んでたからなぁ。母子家庭だったし。

大学行けるかも分からなかったしなぁ。


かわいい百合が廊下に飾ってある。今までは当然だと思っていたけれど…些細なところに使用人の気遣いが見える。


「綺麗…」


「まぁ!ララは百合も好きなのね!」


「私も好きです!」


「貴女には話しかけていないの。黙っていて。」


「はい……お母様。」


どうしたんだろう……お母様が急に怖くなった。ええっと……思い出した前世の記憶が強すぎて思いだせない……。


というか……何故こんなヒロイン級の優しくてかわいい子が悪役になってしまったのか。なんでだろう……???


「ローズ。気にしなくていいわよ。ローズには百合も似合うわね。」


「お姉……様……?」


あれそんなに驚かれることしたかな……?でも事実だし。

お母様……目の開きようがすごいよ……人ってこんなに目開くんだ……。

顔芸みたいになっている……美人かもったいない……


コンコン


「お父様失礼いたします。」


「ララ!無事だったか!」


「ええ、お父様。」


「それは良かった。」


「ローズ。ちょっとこっちに来なさい…」


怖い……優しかった声色が急に誰でも恐怖する声色だった。

低いだけではなく、執念のようなものがこもっているように感じた。


パシン!


え?……どうして?お父様がローズの頬を叩いた。


「お前は部屋の中にいろと言っただろう!」


「私はお姉様が心配で……」


ああ……そういうことか。

そうだ、そうだった。

ローズの黒髪に赤い瞳は神話に出てくる悪魔と同じだった。


こうやって理由をつけてお父様は鬱憤晴らしのようにローズを叩く。

お母様はローズを無視したり怒鳴りつける。

わざとローズが迎えに出ても止めなかったのは叩きたいからなんだろう。


私は……思い出すまで両親のお人形だったんだなぁ……。両親に嫌われないように……生きてきた。ローズを無視した。

それでもローズは慕ってくれた。妹を守らなきゃ。


私はこの世界で初めて自分で決断した。お人形になんかならない!


もう一度ローズが叩かれそうになると私は前へ出た。


「お待ちください、お父様。今回はわたくしのことが心配でこのような事をしたのです。もう止めてもらえませんか。」


「……ララがそう言うなら。」


わたくしは少し気分が悪いので失礼します。ローズ、お話がありますわ。」


「え?私ですか……」


「貴女以外にこの屋敷にローズという名前の人はいないはずよ。」


口をあんぐり開ける両親をほっといて2人は部屋を出た。


「お姉様……何故助けてくださったんですか?」


「そうね……死ぬ怖さを知ったから……?かしら。変わらないといけないと思ったの。」


これは半分本当で半分嘘だ。

1番はかわいいローズが傷つくのが嫌だったから。


2つ目はあんなクソ親のお人形になってたまるか〜!って話。


というかゲーム中の私ってクッソ性格悪かったんじゃね?ヒロインに優しいふりして〜みたいな!?


「貴女、家庭教師もいないでしょう。わたくしが教えてあげるわ。というか教えさせてちょうだい。そして……私のお部屋に遊びに来て欲しいの。」


「いいんですか?…」


「違う。来て欲しいの。姉妹なら当然でしょう」


「……はい!!!」



-----


「ラベンダー様。今日はどうなされたのですか?」


「言ったでしょう。変わりたいと。」


「では楽しみですね。変わったベンダー様もきっと素敵でしょう。」


「ありがとう。」


さて、明日から何を始めようかな?天使な妹を守り切ってみせましょう!

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