戦気眼VS戦気眼(4)
相手もこちらを認めたようだ。突出してくる気配を見せる。
(そう来なくっちゃな)
軽率に乗ってきたとはリューンも思わない。
(奴にしたって、俺を好き勝手暴れさせれば計算が狂うのは分かってやがんだろ。それなら正面から押さえ込んでやると思ってるに違いねえ)
彼の名は挑発にも使える。
(ただよ、その黄緑、オルドバンとかいう腰ぎんちゃくの機体もセットとなると、ちと荷が重いぜ。切り離して押し付けねえとな)
バックウインドウのアルタミラ編隊の追尾を確認しつつ機会を窺う。
射線を合わせるようにパシュランを移動させる。真っ正面から挑んでくると感じた副官のオルドバンが先制の一撃。それをリューンはジェットシールドで受けた。
それで、標的を絞るあまりに視野を狭くしていると思わせる。クリスティンが率いる一団が、シールドコアの融解を狙って集中攻撃のビームを浴びせてきたのをフォトンブレードで全て斬り裂く。そして後頭部を貫くように走る輝線を感じながら一瞬にして上体を屈ませた。
「なっ! ブラインド!」
「イムニ!」
ブラインド戦法と呼ぶにはあまりにギリギリな一撃は黄緑の機体に迫り、紙一重で躱したオルドバンの背後にいた二―グレンに直撃、爆散させた。
「馬鹿な! 閣下の直掩がこうも簡単に撃破されるだと!?」
「油断するな! 戦い慣れしているぞ!」
動揺が激しいらしく共用無線で吠え立てる。
(状況把握もできてねえのか。戦い慣れしてるに決まってんだろ)
(こいつら、お上品な戦い方しか知らねえんじゃねえだろうな?)
敵ながら指揮官に同情する。
「怖ぇんなら尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ、雑魚どもが」
得意分野の挑発で自分のペースに持っていく。
「最強たるゼムナ軍を愚弄するとは良い度胸だ! 思い知らせてやる!」
「その看板、俺がへし折ってゴミ箱に放り込んでやるぜ」
「奴の手に乗るんじゃない! 激発させて分断撃破しようとしているんだ」
肝を冷やしたほうの副官が諫めている。比較して冷静さは失っていない。
(だがな、完全に冷静ってわけでもねえ。俺が自分の主人と同じだとは思えてねえし)
リューンが意識的にジェットシールドで受けたのを誘いだと思っていない。
(唯々諾々と従ってきたんじゃねえはずだろう? 飼い主と実戦演習したことくらいはある癖に、俺が同じ
強者の侮りが抜けていないことを意味している。
集中する砲撃を避け、きわどい光芒だけは斬り裂いてパシュランを流す。と見せ掛けてビームを弾き散らしながら一気に突進した。
直掩機一機のビームカノンを右のフォトンブレードで腕ごと刎ね、左で鳩尾から斜め上に背部へと貫く。コクピットを直撃した力場刃を解除して戦闘不能となった敵機を蹴って一団へと飛ばした。
(掛かった)
口端を吊り上げる。
先ほどからあまり動かないエクセリオンに代わって直掩機の飛び出しを制したのは黄緑のオルドバン。彼らでは接近戦は危険だと感じたのだろう。自ら左腕にビームブレードを握らせると割り込んできた。
袈裟斬りにフォトンブレードを合わせて逸らす。手首を返した横薙ぎを左で受け、右を袈裟に落とすと半身で躱される。自然と引いた左が胸へと伸びてくるのを刃を交差させて跳ね上げた。
動きに雑なところがない。知覚した戦気の輝線と寸分違わぬ位置へ攻撃がくる。それだけに読み易くはあるが、洗練されているのも事実。無駄の排された攻撃はテンポよく連動していて隙も少ない。リューンはパルスジェットで姿勢を保ち、少しずつ後退していた。
「やるじゃねえか」
「これで退くようなら閣下に敵うはずもない! 身のほどを知れ!」
「そうかよ!」
浴びせたバルカンから機体を逃がしたオルドバンは、素早く構えたビームカノンを一射。それを斬らずに躱してリューンは再び相手の懐に飛び込んだ。
待ち構えていた突き込みを右の刃で削って逸らし、左を脇腹へと伸ばすが展開したジェットシールドで阻まれた。その時パシュランは、腰部の三連バルカンファランクスのスリーブを突出させ、ビームモードにした砲口を敵機の腹部に突き付けている。
「がっ! どうしてですか!?」
衝撃に驚いたイムニは、それをもたらしたのがエクセリオンだと知って二度驚く。
「狙われているぞ!」
「え? はっ!」
「面倒臭ぇ敵だな」
そのまま射線を振ってオルドバンを狙うが当たらない。
(だが、十分ってもんだ)
リューンはほくそ笑んだ。
直掩機は友軍機と交戦中。エクセリオンはパシュランの傍らへとやってきた。そして引っ張り出された副官のオルドバンは弾き飛ばされ、ビームを躱すのに機体を流している。
そこへ狙撃が襲い掛かる。隙を狙っていたフランチェスカの狙撃だ。僅かの狂いもなく急所を貫くビームを躱さずにはいられない。ペルセイエンと連動して一定間隔で撃ち込まれるビームにイムニは切り離される。アルタミラとミントが待ち受けている場所へ。
「なにぃ!」
連携の取れた接近戦に精密狙撃が加わってオルドバンは防戦一方になる。
「これほどの練度か!」
「当たり前じゃないのさ」
「僕たちがどれだけ訓練と実戦を重ねてきたと思ってんの!」
(そこで俺たちを嘗めたツケを払ってろ)
薄茶の瞳は、今度は水色の機体を標的に据える。
リューンは思惑通りクリスティンと一対一で対峙する状況を作り出した。
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