第三章―7
「翔さんは、大丈夫ですか?僕が眠っている間に何もなかったですか?」
「馬鹿。俺は何もねえよ。お前こそ、大丈夫か?何でいきなり、あんなこと」
思い出すと、今でも震える。シンの身体が裂けていく、あの真っ赤な情景。
「俊太郎さんに拒絶されたんです。僕もまさか、こんなことになるとは」
身体の傷を、シンがさする。その動作を翔が目で追う。血は完全に止まっているものの、身体中にミミズ腫れができている。それでも、胸の傷跡よりましに見えた。一体、どうしたらあんな傷跡になるのだろう。刺青にしても、傷が生々しい。だが翔と旅を始めてから、ずっと寝食を共にしてきたのだ。刺青を彫る時間などはなかったはずだった。
「拒絶なんて毎回されてたはずだろ。なのに」
「もちろんちょっとやそっとの拒絶なら、僕はかわしますよ。でも今回は」
シンの声がか細くなっていく。最後の方がよく聞き取れず、翔は耳を近づけた。
「すみません。少し、寝ます」
そう言うと、吸い込まれるように眠りについた。今は寝かせておいてやろう。目が覚めただけでも良かった。翔はそう言い聞かせて自分を安心させようとする。
だが、最後にシンの言った言葉が頭から離れない。
罠にかけられた。
眠気声だったため、聞き間違いした可能性は高い。だが、翔にはそう聞こえた。
そして一旦そう解釈すると、それ以外に正解はないように思えてしまう。
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