第三章―5
二日が経った。シンはまだ目覚めない。翔は傷ついたシンと二人、いまだ俊太郎のところで世話になっていた。俊太郎は翔と一緒になって包帯を替えたり、シンの身体を拭いたりと、献身的に尽くしてくれている。
看病疲れか、シンの隣で俊太郎が眠ってしまった。翔も眠気が襲っていたが、寝ている間にシンの容態が急変するのを恐れ、眠らないよう耐えていた。眠気覚ましに、と縁側から庭に出て風に当たる。風は冷たくて芯まで冷える。
翔は俊太郎のことを考えた。彼は一日中家から出ない。そのことについて、翔は聞いたりすることは控えていた。下手に翔が動くと、いつもシンに怒られる。翔さんは何にもわかってない。人の気持ちを何にも考えてない。
「お前は人のことばっかり考えすぎなんだよ」
いつもは口うるさく感じるシンの小言も今は恋しい。翔はシンのことを想った。早く元気になるようにと、祈る。少しでも祈りが届くようにと願いながら。
腰を下ろし、庭に植わっている花に触れる。俊太郎が寒い冬でも毎日水を遣っているため、元気だ。だが、やはり悲しみが漂っている。よし江が死んだことに対する悲しみなのだと思ったが、それとはまた別の悲しみもある。だが表象は捉えられても、具体的なものが掴めない。
「お前たちに、何があったんだ?」
植物達はざわめく。口々に何か言っているが、同時に叫んでいるので、うまく聞き取れない。かろうじて聞き取れたのは、おばあちゃん、後悔、その二単語だけだった。
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