第三章―3

「今からあなたの心の状態を分析します。身体の中の状態を調べるのにレントゲン写真を撮りますよね。同じようなことをするのだと考えてください。そのために、僕はあなたの心の中へと入ります。いいですか?」


 俊太郎は頷く。それを確認してから、シンは赤い石の首飾りを俊太郎の首にかけた。


「少しの間僕は脱力状態になりますが、お気になさらず。すぐに戻ります」


 シンは夕貴にしたように、自分の心を患者の心へ移し、状態を分析する。また時に、対話する。そうすることで病の原因を探り、取り除くための足がかりをつくるのだ。原因を取り除かなければ、ソロンは除去しても、再び生まれる。


 胡坐を掻き、座っていたシンの身体から力が抜け、床に倒れる。心のない、抜け殻状態だ。平均して約五分ほど、シンは心の中を見る。さすがに驚いたのか、俊太郎は目を丸くしている。翔はシンの身体を抱えた。そうしていつも、シンは翔の腕の中で目覚める。止めてくれと言われるが、シンの身体をそのままにしておくことが、翔は嫌だった。


「大丈夫だよ、すぐ起きる」


 そう言った瞬間だった。翔の顔に、生温いものが飛びかかった。それが何か、考える暇もなく、視界が赤く染まる。


 血だ。


 大量の、鮮血。


 それがシンの身体から噴き出ているものだと理解するのに数秒かかり、理解した時には混乱状態に陥っていた。なぜ、どうして。考えても状況の説明がつかない。

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