社殿へ②

*宇宙単語説明




学園の校長であるナンシーは、軍人の接客対応を教頭に任せ、モニタールームで誰かと話をしていた。

「テレビでもご覧になられたと思いますが、先ほどシャトルが*中性子星がある宇宙空間へ向けて打ち上げられたそうです。以前から大反対していた民衆が、暴動でこちらに飛び火がないよう、警備力の強化ということで世界政府から軍が派遣されたそうですが・・・・・。念のため生徒と教育実習生全員を社殿へと移動させましたが」

「ご苦労様です。そのまま軍人の足止めを行い、生徒を家に帰すことだけ行ってください」

画面に映るのは人工的にボカシを入れられた機械音声のみ。

「ですが、私達の生徒数に対して、たった軍人四人の配置は充足していません。

まだこの学園に来たばかりの私では、事態を収拾できる力はありません。

理事長、恩自ら人道指揮を早急にお願いいたします」

この学園のトップは白人であるナンシー校長だと思っている生徒は多いが、実はもっと上の役職の学園関係者がいた。

学園の全権限を持つ理事長である。

だが、姿を見た者は誰もいなかった。

その理事長が部下の報告を受けて発した言葉は、

「検討しましょう」

それだけだった。

苦々しく思っていると、続いて画面越しにいる理事長は続けてこう言った。

「私の仕事が終われば、そちらで指揮が取れます。それまでは校長先生、貴方が学園の権限を使っていいので、なんとか頑張ってください」

そして、通信は途絶えた。





そんな軍靴の音が学園に響く頃、社殿の地下では厳しい尋問が行われていた――。

社殿の地下に太郎を追いかけていた薫だったが、なんとそこはこの社殿の主、宮様が住まう場所の涼風殿、地下だったのである。

住まう場所は女性でも迂闊に入ることは許されない、社殿の中でも神聖な場所。

そんな場所に男が入ってしまったのだから、薫は簡単に名乗れるはずがなかった。

だが、御簾越しにいる宮様は強い口調で、薫を問い詰めていく。

「ここをどこかわかっての侵入か!名を名乗れと言っている!」

(ヒ――!!知ってるからこそ名乗れないんです―――!!)

威圧的な言葉を投げかけられるたびに、絶対この人が宮様だと確信してしまうが、それが余計に薫が喋れない状況を創り出していた。

だが、相手はそんなことは知らぬ、存ぜぬことだ。

「わたくしの言葉がわからぬとシラを切るつもり?どうやら、ムチで縛りあげられたいようだ」

(ヒ―――!ムチとか嫌だー!)

これ以上無理!と涙を浮かべていた薫は、根負けして気づけば自分の名前を喋っていた。

「伊集院薫と言います!教育実習生です!」

緊張から早口で言えば、相手は、

「・・何・・!?」と、反応してくれた。

相手の反応が緩くなったことを鋭く察知して、俺は早く謝ってここから出ようと思い

「はい、間違って入っちゃたんです!ワザとじゃないんです、本当すみません!」と、太郎をお守りのように自分の顔を隠して平謝り。

相手の言葉をビクビクしながら待った。

「・・・・伊集院と言ったな。私が宮だということは、知っているか?」

「は、はい・・・」

一瞬の沈黙があった後、スルリと布が床に擦れる音がした。

「顔を上げよ」と言われ、薫はおそるおそる顔をゆっくりと御簾があるほうを見た。

そこには、御簾が揚がり、目の前に一人の人物をみて、薫は絶句した。

その人物は日本古来の衣装、十二単装束を着た一人の若い女性—―。

どこまでも白く透き通った肌に、整った鼻尖、折り重なる睫毛の下には憂いを帯びた大きく綺麗な瞳。

どこか妖艶さを感じられる顔立ち、どこを見ても完璧な麗人が目の前にいた。

「どうやら、本当に伊集院家の者らしいな」

そう言うと、嫌様の隣からリーンと鈴の音が鳴った。

「こんなときに軍の謁見とは・・・。伊集院薫、そなたと会うのは初めてか、よろしい。今回の無礼はなかった事にしよう」

「え、本当ですか?」

神聖な場所というところに間違って入って引け目を感じていただけに、宮様のこの言葉に全身の力が抜けた。

だが、目の前の麗人はそのあと、不思議な質問をした。

「だが、そなた、・・・家族に探してほしいと連絡はしたのか?」

宮様の言葉の意味は、俺にはわからなかった。どうゆうことかわからず、

「・・・?なぜ私を探すのですか?暴動が起きて、軍がこの学園に来たとしても、私の実習先である学校はココですから、連絡する必要はありません」と、自分のありのままの心情を話した。

「・・・・・・・そうか。やはり、まだ完全に戻ってはないか」

宮様はそっと呟き、扇で考え込む。

ただ太郎を抱きかかえている俺にとっては、何でお咎めに無しになったことや、知らない内容の質問をしてきたのかサッパリわからなかったが、とりあえず神聖な場所から去りたいという考えが湧き上がっていた。

そして、藤原麗奈のことも―――。

「あの、すみませんが、どちらの扉から行けば学園に通じる通路に出ますか?どちらかと言うと、自分は生徒を探してるんですけど、どこの扉から入ったかわかんなくなっちゃって」

正直に言うと、宮様は扇で室内に向けて一振りした。

すると、急に寝殿の灯篭に明かりが灯り、どこからともなく明るい光が頭上から降り注いだ。先ほどまで薄暗かった室内が光で姿を現し、隅には小ぶりながらも小さい木々や花々があった。ようやく自分がいる場所が屋敷からみた貴族の庭だとわかる。

「これならば、歩きやすいであろう。それで?何を探している」

「あ、藤原麗奈って子です。いなくなっちゃって」

宮様はまた扇を壁に向けて一振りすると、今度は巻物式の沢山の社殿内部の映像が映し出された。その中から、すぐさま麗奈の姿を探すと、映像の端に、麗奈が軍人と一人で会話している姿が写っていた。

麗奈がいる場所を訊くと、そう遠くないところで、俺は宮様にお礼を言って教えられた通路から出ようとしたら、再び呼び止められた。

「伊集院薫、そなたの実習が無事に終えること祈っている」

権威がある人の発言は心に響く。

薫は太郎を両手に抱えながら、お礼を言って急いで麗奈へと向かった。



                 ♢


薫が急ぎ足で寝殿から離れた少し後、薫が入ってきた入り口から軍靴の音が聞こえてきた。

「なにやら賑やかな声がしたのですが、私の空耳だったかな」

新たに足を踏み入れ、言葉を発した者は、薄い金色の髪の軽薄な印象の笑みを浮かべる人物であった。

「なに、お主のような邪念の空気を感じて眠っていた鳥が起きただけのこと」

「ハハ、隠しきれな才能は不利になるだけで困ったものですね。その辛辣なお言葉、そのお美しい美貌、お久しぶりです、宮様」

長いマントの軍服を着た若い青年は軽やかに挨拶を言う。

「私は世界政府直轄の枢機卿を招いたつもりはない。輸送機などと、たいそう物騒な物できおって、何をほざくかと思えば。お前たちこそ、最近は民衆の反感を買うまで、世界政府に媚を売っているらしいな」

現在、世界政府への支持率は20パーセントを切るほど、下落しており、民衆の声を聞かない政治に反感を持たれていた。

長い間平和的和解をお互い歩み寄ろうとしてはいたが、本日遂にある計画を世界政府が実行したことに激怒した民衆たちは、その対抗として暴動を起こしたのだった。

「わたくし共は、ただ戦艦の大量生産のお手伝いをしているだけです。この宇宙を駆け巡るだけの鉱物、金、銀の資源のために」

「それが、お前たちが作りだした計画への主張か」

――話は月基地の当初からさかのぼる。

選ばれた天才たちが発明の恩恵で、人類は月で地球にいたころと同じように生活できていたが、同時に人類の活動範囲を広げようと宇宙戦艦の開発も月基地当初から同時に行われていた。

だが、そんな資源の開発、発明でも、人間の力では難しいことに直面する。

宇宙戦艦を作るのに必要な資源である金や銀、ウラン、その他多くの鉱山資源というべき材料がここでは不足していたからである。

地球は現在熱く白いガスで覆われていたが、無人探査機を投下することは可能でも、その探す物質はとうに無く、地球の重元素は既に淘汰されていた。そのため、他の惑星で地下に眠る鉱物を採取する案もあったが、どの惑星も地表に降り立つまでが危険であり、かつあまりにも月から遠く非効率な方法のため、どうにか月以外の惑星から資源採取を行えないかと科学者たちが議論を重ねた結果、ある結論が出た。

たどり着いた結論 は先人たちの悲願の夢、錬金術であった—―。



科学者たちが立てた計画は、宇宙で鉄よりも重い重元素の生成を創り出すという計画。そのためには、太陽よりも大きな*赤色巨星せきしょくきょせいを、*超新星爆発という星の死を二つ同時に、人工的に起こすことだった。

そして、この超新星爆発後には、一つ*中性子星という天体になるのだが、この中性子星という天体同士が高い重力と超高温による爆発により、鉄よりも重い重元素の生成が生みだされる。

だが、この中性子星同士の爆発で生みだされるのは他にもあり、一兆℃を超えるほどの宇宙でもトップクラスの高エネルギーや、衝撃波のガンマ線バースト(超強力放射線)などがある。つまり、宇宙資源を得る代わりに、月から比較的近い場所にある宇宙の環境は数十年から数百年間、これまでとは変わった環境となる可能性が出てきたのである。この計画に反対している民衆は、宇宙のゆがみを発生し、自分たちが住む月にまで影響が出る恐れを懸念していた。その実験は、まさに人類の未知の領域。

そしてこの計画こそが、世界政府の政治派閥を二つに分けた。

 

第一の穏健派は、祖先である哺乳類が最初は地下で暮らしてきたように、これまでどうり宇宙から出ずこのまま地下で暮らせばいいという意見。

第二の推進派は宇宙への挑戦を推し進めていなかったからこそ、ブラットエンドの悲劇が起こったという考えだった。

そして穏健派の意見を押し切った議会、世界政府は宇宙の道の領域に踏み込むため、実験を行うシャトルを密かに発射させる。

その発射されたシャトルこそ、超新星爆発を人工的に生み出し、超長期間耐えうる宇宙戦艦に必要な重金属を発生させるためのもの。

それが、民衆の怒りを買い、デモを続けてきた民衆がとうとう暴動が発生したのだった。



「*ベテルギウスの爆発で発生した資源を採取すればよいであろうに」

宮の言うペテルギウスの爆発とは、人類がまだ地球にいたころに赤色巨星であったペテルギウスが超新星爆発で出来た資源ガスや少量である鉱物を月の巨大地下都市の資源に人々は活用していた。

「残念ですが、それはすでに枯渇していますので。それに、使われている金銀を集め直しても、人類全員の箱舟を大量生産するのは少ないでしょう。結局、作るしかないのです。我々の力を借りて作るには」

「そこまで自信があるとはな。昔と同じように人を丸め込むつもりか。だが、油断するとお前自身が喰われるぞ、せいぜい保身に気をつけることだ」

「・・・不思議なのはあなたです、宮様。貴方は盟約があるとはいえ、政治家たちよりも頂点に君臨できる方なのに、まったくそれをしようとはしない。小さい地位に納まっている。私は、宮様があの方と同じ考えでない事が今世紀最大の悲劇だと思っていますよ」

「私はお前たちのようなやり方は好きでないからな。民衆が、中性子星同士の爆破計画を反対するのは、当然。人類があの巨大なエネルギーを安全に制御できるとは思えん」

「ですが、第一の扉は開かれたのでしょう?上手く隠されていたが微力な電磁波はこの学園を昨日感知致しました。もう既に、目覚めたのだとしたら、あのお方は探しています。ブラットエンド後にこの世界の基盤を構築し、世紀の科学者といわれたルチアーノ博士の遺品を」





太郎を胸に抱きかかえ、宮様がいた場所から急ぎ足で薫はまだ地下を移動していた。宮様に教えてもらった場所にもう着くと思うのだが、人影が見えず焦りが再び湧き上がっていたとき、すぐ近くの場所から話し声が風と共に聞こえてきた。

そして、片方の声は若く、高い声、そして、知っている声だった。

近づいてみると、声は空耳ではなく、やはり自分の受け持ちの生徒の声、藤原麗奈だった。

「あなた、あの人と知り合いの人でしょう?」

どうやら麗奈は一人の軍人に対して質問をしているようなのだが、二人の間には誰も相いれない雰囲気があった。

また、薫がいる場所からは麗奈の顔は見えない位置にいたが、その声は真剣さを帯びたものであることは誰の耳にも明らかだった。

「教えて!あの人はいまどこにいるの!?」

「それを知ってどうするのです。貴方は、あの方には会えないというのに」

「・・・わ、私は、会って話がしたいの!!」

「私があなたに言えることはただ一つです。あの方は、役に立つ人間だけを傍に置きます。会わなくなったということは、貴方はもう用済みなのです」

冷たく低い声は、十分過ぎるほど耳に、心に入ってくるものだった。

「は――い、STOP。うちの生徒にひどい言葉言わないでくれますか」

俺は我慢できなくて麗奈の前に身を挺するようにして立ち、目の前の軍人に言った。

「せ、先生!?」

「ちょっと、後ろに下がってろ」

麗奈が何らかの事情を抱えて、この軍人に聞いているのは分かる。だが、生徒、ましてやまだ子供が非情な言葉を言われているのは黙っておけなかった。

「私はここの教師です。あなた方は、国の調査で戦闘機ごとこの学園に来ているはずだ。うちの生徒と話をするときは、我々教師同伴の許可を取ってから話をして頂きたい」





麗奈と一人の軍人の話に割り込んだ薫だったが、軍人も関心が更に薄まったようで、

「こちらもこれ以上話すことはない。我々は指示のもとに動いている。ただ、その生徒に私は呼び止められただけだ」と言って、暗い奥へと去っていった。

その姿が完全に隠れて、ようやく麗奈に俺は言った。

「麗奈~、皆の避難所から勝手に移動はダメだぞ~。特に、最近は宇宙のあの計画で、軍人は民衆と今は折り合いが悪いのに」

怒りは抑えているが、どうしても負のオーラが出てしまう。

これには麗奈も非を認めているのか、ごめんなさいと言って俯いていた。

素直に謝られ、肩透かしの俺だったが、麗奈は普段の活発さはすっかり身を潜めている。そして、そんな生徒に何も聞けなかった、冗談めいた話も出来なかった。

何も言わずに避難所へ太郎と一緒に向かっていると、麗奈が不思議な質問をしてきた。

「先生は運命って信じる?」

しばらく歩いたところで、ふと麗奈が呟くように言った。

「運命・・って、人生の?」

難しくて言葉に詰まり、聞き返すと、

「色々あるよね、両親だったり、好きな人だったり、自分のコンプレックスとかね・・・。凄くツライことがあっても、ああ、これが自分の運命なのかなって、感じちゃうことがあって」

たどたどしく、麗奈は話を続けてくれた。

「ごめん、すぐには答えられそうにない。難しい質問だな」

自分も人生の修行中、ましてやそんなに人生の全て、選択肢の中で何が一番の正解かはわからない。

先生もわからない事、悩むことたくさんあるんだ、と言えたらいいのに。先生のプライドというもので正直に言えなかった。

そして二人は、そのまま静かに生徒達の集合場所へと歩いていくのだった。




そして時間は過ぎて夜の八時。

「やっ、やっと、帰れた―――!!」

交通路の一部封鎖や渋滞によって生徒を迎えに行けない保護者の代わりに学園がバスを出して自宅に送り届けるという仕事もあったが、薫たちはまだ教育実習生ということもあり、早く帰れた。

だが、それでも帰宅時間が遅れ、実習二日目もめまぐるしい一日に変わりなかった。

覚悟してたけど、教育実習はやっぱ忙しい。

俺はいつものようにふかふかのベットへダイブして、日中の疲れ、緊張を解いた。

リラックスしていたが、ふと思い出すのはどうしても今日の学校の件だった。

特に、調理実習後の出来事、そして受け持ちクラスの保護者との挨拶。

暴動により、安全のため、保護者に学校に来てもらうようせいとの保護者へ一斉に学校側が連絡を入れていたのだが、真っ先に迎えに来たのは、美咲の家族だった。

たまたま麗奈と一緒に戻ったばかりだったので、俺は美咲の傍で泣き騒いでる若い男性が家族関係の人としか、最初わからなかった。

『ええ!?殺虫スプレーも警察くん出動ベルもすてちゃたのかい!?どうして、何で!?』

何かを言っている途中、美咲は俺に気づき、思いっきり視線が合った。

『あ、先生、お父さん迎えに来てくれたんで、帰りますね』

自分とさほど変わらない若い外見に、てっきりお兄さんかと思って驚いた俺は、

『え、お父さん!?あ、初めまして、私、教育G・・』と挨拶しようとしたんだが、美咲の父親は、

『君にお父さんと呼ばれたくない!』と言って般若のような怒り顔で去っていた・・・。

(・・・・アレ、完全に誤解されたよな~。どうしよう)

そして驚いた案件があと一つ。

『涼、迎えに来てやったぞ。』

黒光りの高級車からそう言って降りてきたのは、仕立ての良さげなスーツに、磨き上げた革靴、それを着ている本人は一ミリも乱れそうにないほど整えた髪にやんちゃさを感じさせるイケメンの顔立ちの男性。

周囲の人達が彼に感じた印象はただ一つ。

≪絶対、ホストの人だ!!!≫

『な、なんで、その恰好!!?』

指さしながら、驚いていう涼に対して、目の前の煌びやかな男は、

『たまたま知り合いの車がとうりがかったから、乗せてもらったんだよ、お前もお礼言えよ』

『あら、安いものよ』

そう言うのは車後部座席に座っている女性、その女性は結い上げた金髪の髪にこれでもかとデカデカと髪飾りをつけ、口元を隠す手全てに宝石の指輪がはめており、成金のイメージを具現化したような人が乗っていた。

黙ってポカーンと見ていた薫だったが、我に返り職務に勤めて言った。

「すみません、門脇涼さんのご家族の方ですか?」

「ん?ああ、そうです。兄です。妹を迎えにきました」

≪兄!!妹!!≫

周囲が密かにざわつきながらも、突然登場したイケメンに、周囲の生徒が色めきたっってこの兄弟に集中している傍にいた薫は視線が痛かった。

『ここにサインすればいいんですね』そう言って、お兄さんはスラスラとペンでサインして、涼は大勢の注目を浴びながら学園から出たのだった。

しばらくして、他の三人はお嬢様らしく、黒塗り高級車で使用人のスーツ着た人達と一緒に帰っていった。

・・・・・今回でハッキリわかった気がする。教育現場は、生徒一人一人個性があるっていうけど、噂どうり保護者もまた職業柄様々、教育現場が

”人種のるつぼ”という言葉、俺は信じよう。

美咲の父親には誤解されるし、涼の兄はホストみたいだし、そして、教員になったら、あんな家族と三者面談とかあるのか・・・・。

(俺、死ぬな)

早急に答えが出た時、カバンに入れてたLOPSが鳴った。

ピコーン、ピコーンと何度も連続して鳴る。

(うー誰?母さんか?)

薫の母親は息子の身体を心配してよく連絡をすることがあり、その連絡がたくさん届いているのだと思った。

だが、LOPSにあったのは本日暴動が起こったことによる暴動に対する注意喚起であり、世界政府が国民に向けた政府の方針の安全性を再び強調する内容の通知だった。

薫からしてみれば、なんだ、と心の荷が解けた。

あー、けど暴動が近いから母さんに連絡を入れないとやっぱまずいよな。

薫は、気怠いが電話ボタンを押し、自宅へと電話を繋げた。

だが、目の前に写るのはエラーの文字、そして疑いたくなる文章だった。

【この番号は使われておりません。再度、番号の確認をお願いします】





皮肉にも、月と共鳴するかのように厚い白の気流に包まれた惑星、地球。

地下都市を覆うドーム型の屋根には、人類のかつての母星、地球が暗い夜空の中いつものように映し出されていた。

孤高の地球をローズ学園で静かに見つめる者がいた。

社殿の宮だった。

珍しく涼風殿から内裏の高欄こうらんという手すりに寄り掛かり地球を見ていた宮に、長い髪に触れるような風が吹いた。

その風に揺れささめく大きな木のかえでに眼を移した宮は話しかけるように言った。


「そなたの弟は頑張っているぞ、良かったな、楓――」





             ♢



参考文献:雑誌Newton、宇宙関連書籍他。(編集の際に記載します)



超新星爆発ちょうしんせいばくはつ・・太陽よりも何十倍も巨大な恒星が、赤色巨星という老いた星となる。その赤色巨星が自分の重力に耐え切れなくなり巨大な爆発すること。質量の関係で、ある天体は星の死となり、新しく生まれてくる星の元になるガスの残骸が残るが、質量などが大きいのは中性子星となることがある。


*重元素・・・鉄よりも重い元素であり、金銀、プラチナなどは、いまだ人類が創り出すことはできず地球の地下資源として採取していた。金や銀は存在自体が他の鉱物とは明らかに別格の存在であり、どのようにできるのかは長年の謎だったが、地球の地殻深く産出できることから、宇宙の成り立ち、星の爆発が関与している事までは分かっていた。宇宙戦艦を作るうえで欠かせない元素だが、その金などが作られるのが中性子星同士の衝突というものだったので、誰も作ろうとせず、暗黙の了解だった。


*ペテルギウス・・地球に比較的近い場所、赤色巨星の星で、超新星爆発するであろうと予測されている星。人類がいた地球歴で超新星爆発は終わっており、ブラットエンド後に人類はペテルギウスが超新星爆発後に散った資源(鉱物)を採取して、巨大地下都市の生活に活用していた。


*中性子星・・・超新星爆発後に大きな重力が残っていた場合に発生する天体。

*ガンマ線バースト・・・核爆発で生じる放射線よりも超強力な放射線。中性子星同士の衝突(キルノヴァ)によって生じるとされる。


⁂話が長いため時代設定などを割愛。宇宙の知識がある方は読まなくてOKです

注:広い宇宙で機械を飛ばすことは巨大地下都市の月で暮らしてきた人間でも難しく、途中で火球、彗星との衝突リスクも背負いながらの宇宙移動は目下の重要な課題で、再び帰還する時間、その採取作業は地球にいたころと変わらず、時間短縮はあまりできておらず、いまだに膨大な時間と資金が必要。

時間の例として、地球や月から近いと言われる火星を往復するのに、地球の科学(西暦2020年)でも、人類は宇宙船での移動で往復、約2年(行くだけだと約253日ほど)はかかる。


補足:ご存じの方も多くいると思うが、強い放射線を浴びると、人類の身体に障害や死に至る。核反応を起こしている太陽のエネルギーをオゾン層と天体距離の関係から地球に届くのはとても小さい。だが、宇宙に行けばより強力な放射線を多く浴びることになり、人体に悪影響または癌の発生、死に至る。

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