第4話 ゲーム開始

教員規約:教師を務める者は、18歳未満の生徒たちの前において模範となる大人の対応、包容力が常に求められる。学校の校内にいる教師陣達を始め、事務員、清掃員、並びに教育実習生もこの規約に含まれるとする。



教育実習課題1;教師の授業の流れを把握すること。



最初の学校案内が終わり、校長先生などにも挨拶を終えた教育実習生は、二限目から割り振られたクラスで、教育の現場を学ぶことになっていた。俺は一時限目が終わった休みの間に、特別学級の後ろに自分が座る机や椅子を運んでいた。配属された学級で、実習生は後ろで授業を見学するのが基本だ。

「あ、先生ー!二限目から先生も授業受けるのー?」

と、最初に声をかけてきたのは可愛らしい感じの・・・・確か葛原綾という名前だったはずだ。

「そうだよ。二限目からよろしくな」

「先生、後ろじゃなくて、教室の真ん中に先生の机持ってきていいよ。その方が、先生も私達のクラスのこと知ってもらえるでしょ?」

「私も手伝います」

そう言って、スポーティな門脇涼とミューシャ・セリーヌは俺の机をヒョイッと二人で抱えて移動した。

「え、ちょ、ちょっと待って!」

「先生、真ん中の方が授業わかりやすいよ!」そう言って、俺の机に頬杖をつく葛原綾。

「俺は授業じゃなくて見学に来たの!俺が真ん中に来たら誰のための授業かわかんなくなるって」

「そんなことないですよ?私達は教育実習生の先生にも興味があるんだから、先生が真ん中にいること自体、私達の勉強の士気も上がりますし」っと、言いながら机にお尻を乗せるミューシャ・セリーヌ。

涼までも、椅子に脚を乗せ、こちらを見ている。

生徒三人で俺の机の場所に座り、”どかせるものならどかせしてみろ”という無言のオーラが半端ない。というより、なんでこんな話の流れになっているんだろうか。

俺が困っていると、教室に戻ってきた生徒二名がやってきた。

「あれ、みんな何やってんの?机でポーズ作っちゃって・・・」

「君たち、藤原麗奈さんと木暮美咲さんだったよね。君たちからも言ってくれないかな?教育実習生の机は、教室の真ん中じゃなくて、後ろにあるべきだと」

「え、そんなことしてたの!?」

「あ、ここは穏便にね、先生、興味を持ってもらえるのは嬉しんだけど、流石に真ん中で授業を見学って言うのがね・・」

そういって、穏便に過ごそうとしたのが俺の最初の失態だった。そう言った後の藤原麗奈の言葉を聞いて俺は絶句した。

「真ん中じゃなくて、先生の机を私達の机に引っ付けるのが常識でしょ!?」

(って、ちがー――う!!!むしろ、悪化しとる―――!!)

「机は実習生の机に両端を囲って、両端に座る生徒は毎日朝にジャンケン!勝った人が先生と授業を受けるのが恒例なのよ」

(って、恒例なのかよ!!違うだろ、普通は教室の後ろで先生たちが授業を見学するもんじゃねえのか!?)

ああ、ここが実習先じゃなかったら俺は総ツッコミを入れてるところだ。大声で喋りてぇ。

「そっか。じゃあ、まずは先生の両端に座るジャンケンをするのが最初の試練ね」

「そうよ。毎朝、このジャンケンの運だめしで、勝敗が決まると言っても過言じゃないわね」

「え、ちょっと・・・?」

(もしもし?お嬢さん方?俺はただ、教室の後ろでのんびりと授業を見学したかっただけなんだが。なんでジャンケンまでする?てか、俺の隣に座るために毎日こんなことすんの?ローテンションでも良くないか?)

「ジャンケンする準備はいい?」

「オッケー!いいいわよ!」

「先生、頑張って隣に座るからね!」

「異議なーし」

「・・・・(コク)」

「「最初は、ぐ―――!!!!ジャンケーン、ポン!!!!!」」

―――かくして五人の生徒による熾烈を極めたジャンケンが行われ、教室の真ん中に教育実習生の俺の机。その右にあいこを繰り返して最初に勝った木暮美咲。左の机には二位となった葛原綾が座ることになった。

「先生、もっと嬉しそうな顔したらどうなの?両手に花だよ?」

「・・ああ。そうだね・・・」

俺は借りてきた猫の様に生徒たちの言われるがままの状態になっていた。

だが、仕方ない。ここの学園の卒業生でもなければ、特学級という特殊な学年バラバラのクラスに配属されたのだ。ここの制度なんて全く知らないのだ。生徒よりも俺は赤子同然だ。

「いいんだろうか、実習生が真ん中に陣取るって・・・」

「いいの、いいの。伊集院先生、よろしくね。お隣さん同士仲良くしてね!」

「先生、教科書がダウンロードされたLPOS貸します。一緒に見て授業受けましょう」

「・・・ああ。ありがとう」

「あ、美咲ちゃん、いいな。伊集院先生、私のも半分見て良いからねー!」

こうして、俺の机の両サイドから教科書もとい、LPOSの立体映像が出ているヘンテコな光景が出来上がったのだが、果たしてこれでいいのだろうか?

高校は卒業しているので、専用の教科書を自分のLPOSにダウンロードしてはいないが、そもそも実習生がJKから教科書の立体映像を見て授業を受けるなど、予想もしなかった。実習に行った先輩たちの話だと、最初は後ろの机で優雅に生徒の授業風景眺めながら先生の授業ポイントをメモしたりすることが多いと聞いたのだが、先輩たちの体験談と違った事の連続で参考にならないとは、一体どうゆうことなのか。

これもこの学園のおおらかさかもしれない、そう考えを改めようとした俺だったが、さすがに教育実習生が教室の真ん中に座るなんて聞いたことがない。

流石に他の先生たちから注意されてすぐに止めるだろう。

(金持ち学校とは聞いてはいたけど、自由過ぎるもんな)

だが、その見解は甘かったと俺は知ることになる。

「はい、チャイム鳴ったから、席についてー・・・・・っと、お、実習生の隣を制したのは美咲と綾か。良かったなー」と言って教室に入ってきたのはサングラスかけた学年主任の男性教諭だ。ちなみに、一時間三十分前に「君は特別学級配属ね」と、俺に声をかけた人物でもある。

「はい、先生!熾烈を極めた戦いになりましたけど、頑張って勝ち抜きましたー!」

「確率という計算を瞬時に行い、頑張りました」

「先生!今回は負けましたけど、次こそは私が伊集院先生の隣に座ります!」

「わかってる、わかってる。毎日ジャンケンで決めるんだろ?机から立ち上がって言わんでもえーよ」

「いいえ!事前に言っておかないと私達の士気に関わりますから!」

「毎回一位にこだわるなー。まあいいや、授業始めるぞー」

「ちょ、先生!!」

「んー、なんだ。教育実習生?早速、う〇こ?」

「違います!!実習生の机が教室の真ん中で見学してもいいんですか!?しかも、生徒さん二人と机を重ねてるんですが・・・・」

「別に授業を見学してるだけじゃないか。間近で」

「近すぎです!」

「そうは言ってもなー。ここのクラスは全学年の生徒が揃ってるから、一年の学任主任の俺でも管轄外だし、特別学級と呼ばれてるだけあって、自由にされてるからなー。渡辺先生にきいてみたらどうだ?」

そう言われたら黙るしかなく、俺は「そうしてみます・・・」と言って、素直に引き下がった。

(クソ――。実習生が真ん中で生徒と同じように授業を受けるなんて聞いてないし、それが公認なんて一体どうなってんだ、特別学級は!)

「ほんじゃ、LPOSの教科書、昨日の続きから開いてー」

不服だが、俺は教科書を素直に両サイドの立体映像を見ることにした。

教え子が今、どんな授業を受けているのか把握するのが教育実習生の最初の一週間の課題なのだ。

(えーと、なになに・・・・・。読めない単語が並んでるな。ここは落ち着いて、次の段落・・・・・。次の段落・・・。あれ?こんなにも英語って、難しかったけ?)

学年主任の男性教諭は、スラスラと電子黒板に英文を書きながら授業を行っている。

他の生徒も、静かに電子ノートにメモを書いてて、授業が行われてるのだが・・・・、肝心の実習生である俺が授業内容がわからなかった。

(ふっ、まあ、俺は高校卒業してるからな。俺が授業を理解する必要はないはず!!)

そんな俺にチョンチョンと横から袖を引っ張る者がいた。

「先生、英語得意?私、あんまり得意じゃないんだよね」

可愛い容姿の葛原綾だった。

「そ、そうだな・・・・(俺も得意というか、この授業についていけてないんだが)」

「先生、この文章の和訳わかる?」

「どれどれ・・」と、指をさされた文章を読んでみるが、もう長い単語の、文字の羅列にしか見えなかった。

(あー、わかんねー!もっと、勉強しとけばよかったー!)

俺が遅すぎる後悔していたが、ふと、その横に座る木暮美咲の存在に気がついた。

大人しそうだし、勉強も出来そうな雰囲気を持っていた彼女に、俺は聞いて見ることにした。

「ねえ、木暮さん」

「はい、なんでしょう?」

「この英文の和訳、わかる?」

「どれです?」

「えっとね、ここの文章」

ツンツンと俺の背中をつつく奴がまた現れたので、後ろを振り返ると、

「先生、前、前!」

「前?」

そこには、教科書をグルと巻きながら仁王立ちしている学年主任の男性教諭がいた。案の定、学年主任の男性教諭から怒られた俺は、罰として教科書の英文を読む羽目になってしまった。トホホ。

俺は指示されるがまま、教科書にある英文を読んでいた。

だが、「—―is・・・・・(なんて発音すんだ?この単語)」

「もっと、堂々と読む!それに、発音が間違ってるぞ」

と、どやされるたびに、周囲の教え子たちは教科書で顔を隠しながら笑いを堪えてる。

「ぷっ、く、く、」

(俺の華麗な教育実習の日々は・・・どこ行ったんだ)

俺が嘆いてる間に、授業終了の鐘がなり、「今日はここまでだな」ということで、第二限目の授業が終了した。

「はあ、つ、疲れた――」

「伊集院先生、お疲れ様――!」

「先生、初日から散々な目に合いましたね」

「誰のせいだと・・・・・。葛原さん、今度から、俺に授業の問題聞かないでくれ」

「えー、どうして?」

「コソコソ話だと、俺が怒られるからに決まってるだろう。ああ、実習の評価が・・最初から減点だ・・・。というか、思ったんだが、さっきの英語の授業、難しくなかったか?高校であんな難しい単語とか習ったかな?」

「ああ、授業のレベルが大学並みだから」

「え!大学レベルって事か!!??なんで!?」

俺の大学にも最初は英語があったが、英語が嫌いな俺は即座に単位を取ると、一切英語とは無縁の生活を謳歌していた。

「ほら、この特別学級だけ学年バラバラだから、偏差値高いし。大学生並みにしないと、基準が揃わないって理由で。」

「けど変ねぇ。綾、そんなに頭は悪くないからこの問題の英文だってわかるはずない?綾、ワザと伊集院先生に聞いたの?」

「そうだよー」

「え、そうなのか!?」

「えへへへ。先生に甘えたくて。まさか、こんなことになるとは思わなかったの。ごめんね、先生」

葛原綾はウィンクを投げて、頬を染めながら笑顔で言ってきた。

(あんな目にあったのに、可愛いいと思ってしまう・・・・・。ああ、情けない)

「いいんだよ、けど、次から気をつけてね」

あっさり美少女の笑顔の可愛さに完敗した俺は涙を呑んで、これ以上怒らない様にした。美少女に声をかけられた男はわかると思うが、すんごい可愛いから、怒りようがなかった。

「さて、次の授業まで休憩に・・・・」

そう言って俺は教室から出ようとした。だが、出来なかった。

なぜなら、生徒全員が俺のシャツを掴んでいたからだ。

「先生、どこ行くんです?」

「ん?休憩に行こうと思うけど?」

「先生はー、ここから出ちゃダメですよ?」

「え、何で?だって、休憩時間だろう?」

「もう、先生、実習生の最初の課題忘れたんですか?」

「最初の一週間は、生徒とコミュニケーションも大事にすべし!でしょ?先生?」

「ぐ!!確かにそうだが・・・!」

「先生が生徒に興味あるように、私達も伊集院先生に興味があるんです」

「興味?」

「はい、先生って、彼女・・・・・いたりします?」

「え・・・?」

俺にとって思いがけない質問だった。たぶん、鏡をみたらきっと俺の顔は朱く、照れた顔をしていたことだろう。

(え、何この質問。生徒が先生に告るというレアケース発生ですか!?)

「先生、適当なこと言ってあやふやにしてもダメだからね!私達、真剣に聞いてるんだから!」

「いや、そもそも関係ないだろう?授業とういうか、その学校に・・・」

「関係なくないです!先生の好きな食べ物とか、好きなスポーツとか、好きな女性の下着の色とか!」

「絶対関係ないだろ!特に最後!!」

照れていた俺は一瞬でなくなり、いつもの俺に戻っていた。

「え!そんな!先生、それじゃあ、女性が作る好きな料理とか、デートは奢りか割り勘派が好きとか、ショートかロングヘアどっち派とか、巨乳、貧乳どちらが好みとか、デートはミニスカ、ロングスカートとか、初心うぶで処女な小娘か経験豊富なお姉さんのどっちがいいかなんてのも聞いちゃダメですか!?」

「早口で全て聞き取れなかったが、たぶん全部ダメだ!!」

(あー、ヤバイ。思いがけない事の連続で受け持ちの生徒たちにさっきから俺、タメ語だー!体裁を整えるためにも早くこの教室から離れないと・・・!)

俺は可愛いはずの生徒から逃げることを考えていた。

「先生、わかりました。じゃあ、最後にこの質問をさせてください。この質問で最後にします」

そう言って藤原が俺に真面目に聞いてきた。

「いいだろう。その質問とはなんだ?」

「先生、ボクサーパンツ派?それとも、トランクス履いてる?」

「それは、セクハラだ――――!!!!」

―――伊集院薫、若干21歳にして生徒からセクハラされた初めての経験だった。




                ♢



「で、あるからにして、ここの化学式はこの計算となります」

化学の担当教師が説明しながら文字、化学式を書いていく。それを黙々と真面目に授業を受ける特別学級の生徒たち。

三限目は化学の授業だった。

俺はというと、最初の授業を行った男性教諭と同様に真ん中の席で授業を見学していいと化学担当の教諭に言われ、大人しく授業を見学していた。それにしても、隣の葛原という子は、授業途中にシャツのボタンを外して手をパタパタと動かし、自分の顔に風を送っている。五月の季節だが、暑いのだろうか?若いと新陳代謝も良すぎて汗をかくと言うし、大変なもんだな。

そんなことをボーと考えながら、俺としては授業が癒しの空間となっていた。授業中は生徒たちから質問攻めに合わなくて平和だ。

(それにしても、高校の授業も楽しもんだな。高校生に戻った感じがするし、一人で授業風景見られて気楽だし)結局、俺は英語の授業の後の休み時間は、ずっと生徒たちから俺に関することについて質問されまくっていた。中には教師としてじゃなく、男として答えにくいものがあって、大変疲れていた。

俺の安息時間となった授業はあっという間に進み、授業終了の鐘が鳴り響いていた。

「じゃあ、授業は、ここまで。また来週」

授業を行っていた教諭は授業を止めて教科書の立体映像をしまった。生徒の号令の挨拶した直後に教室から出よう。俺はそう決心していた。でないと、また生徒たちから質問攻めに合ってしまう。直感だけれども、素直に従った方が良いと俺は感じていた。多分、生徒たちの質問に対する異常なまでの殺気のせいだ。俺の足は出口の方角へと足を出しかけていた。

クラス代表ということで藤原が号令で「ありがとうございましたー」と頭を下げて化学の教諭に挨拶した瞬間に、俺は飛び出した。

(いまだ!!)

だが、

「せんせーい、待ってーー!」

運動神経が良さそうな藤原が俺めがけて俺の胸の方へ飛び出してきた。

他の生徒たちも、そのか細い、白い腕にどこからそんな力があるのかと、思うほど、俺のスーツの裾、ネクタイを掴み、教室から出て行かない様に足止めに必死だ。

「うわ、わわ!!」

「先生、なんで逃げるのー!!」

「逃げちゃダメ―ー!」

藤原が大きすぎず、小さすぎない桃を連想させる胸を俺の身体に押し付けながら俺の両腕が動かぬようガッチリと回り込ませやがる。こいつ等、絶対なんか格闘技習ってるだろと、俺に連想させるものだった。

「捕まえた♡先生もう、逃げちゃいや!」

「逃げてない。先生も休憩に行くのー」

俺は教室の扉へと向かって身体を動かそうとするが、5人の生徒が自分の身体に引っ付いてるのだ。逆に俺は後ろ、後ろへと引っ張られていた。ここは蟻地獄か!

「あん、もう。みんな一斉に飛び掛かるから、ここじゃ全然二人っきりになれないじゃん」

「ねえ、先生の好きな食べ物って、何ですか??わたし、先生みたいな人、タイプだから、先生の好みに合わせたいの♡♡」

「涼だって、先生とどこかへ抜け駆けしちゃおうとしてるんでしょ?ずるいわ。せんせい、わたしの質問も答えて!」

「せんせい、今日のお昼ご飯、私と食べましょう!!」

なんで、ここの生徒たちは俺に過剰と言ってもいいぐらいに生徒からのスキンシップが激しいんだ!?もしかして、こんなことが実習中、毎日あるのか!?

伊集院としても可愛い自分が受け持った可愛い生徒の質問を振り切って教室を出たくはなかった。だが、毎回毎回こうでは、彼も大変だ。それに、教育実習生も実習を行ったレポートを書く等、自分には宿題が山の様にあるのだ。それを書いてまとめるためにも、実習生が集める部屋へと休みたいときもある。

なのに、ここの生徒たちからのアピールは、彼のスーツを掴み、自分の身体を押し付けて誘惑を誘う。 .

「こら、先生の服を引っ張るな。」

一人の生徒が俺の腕をスーツの上から引っ張る。

「えへへへ。先生、昼休みも遊ぼうー♡」

「先生は、やることがあるの。だから、君たちと遊べないの」

ギギギッと腕、足、全身で動かそうとするが、なにぶん、女といえどさすがに5人分に引っ張られるのはキツイ。俺の筋肉は既に悲鳴を上げて、腕なんかさっきからブルブル震えている。

「えー!私達もやることいっぱいよ?先生とスキンシップ取らなくちゃいけないのよ?だから、先生も手伝ってよ」

「そうかい。俺も手伝いたいんだが、こうも両手両足が塞がれちゃ、かかわりあえないよ」

伊集院薫の両腕、両足は、未だに生徒たちの腕でふさがれている。それと、ネクタイも生徒の一人につかまれ、首元がネクタイで苦しかった。この状況では誰の手が自分の首を絞めてるのかまでわからない。

「先生が私たちの質問に答えてくれたんなら、離します」

木暮が眼鏡をくいっと、指で押し上げながらすまし顔で俺を見上げながら言う。

「そうそう。だから、ねえ!教えてください!」

「「「せーの!」」」

「「「好きな女性のタイプ!!!」」」

(・・・。もう、好きにしてくれ・・・・)

明日から俺、筋肉痛決定だな。

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