第382話『週刊朝日休刊の話題』

せやさかい


382『週刊朝日休刊の話題』さくら    





 ハ~~~~



 お祖父ちゃんがため息ついた。


 なんちゅうか、すでに穴の開いてた風船の口が開いて、盛大な割には勢いのない空気が漏れたような。


「どないしたん、お祖父ちゃん?」


 風呂上がりなんで、頭をガシガシ拭きながらお祖父ちゃんの向かいに座る。


「週刊朝日が無くなんねんて……」


 そう言いながら、うちの後ろを顎でしゃくる。


 振り返るとテレビがユーチューブのモードになってて――「週刊朝日」5月末で休刊――というハッシュタグ。


「え、朝日て、週刊になってたん!?」


 うちは、休刊の文字よりも週刊いう単語にショック!


 年々発行部数が減って経営が苦しいとネットで言われてた朝日新聞、うちは、お寺やけど、珍しいことに朝日新聞はとってない。


 まあ、新聞なんて読まへんけどね。それでも、朝日が大新聞とかクオリティーペーパーとかいうもんや言うことぐらいは知ってる。ネットで、よう言うてるしね。


 その朝日新聞が日刊を止めて週刊になってたいうことに驚いて、その週刊でももたへんようになって、五月からは、とうとう休刊するんか! とビックリしたわけ。


「違うわよ、週刊誌の朝日」


 入れ替わりにお風呂に行こうとしてた留美ちゃんが、あまりのアホさに足を止めて教えてくれる。


「週刊誌のくせにヌードグラビアとか無い週刊誌でなあ」


 缶ビール持って、テイ兄ちゃんが現れる。一本をお祖父ちゃんに渡してテイ位置(お祖父ちゃんの斜め横、定位置と掛けてます)に収まる。


「ほら、女子には檀家さんから貰た水羊羹、どうぞ」


「お、愛い奴じゃぞ諦一は(^▽^)/」


 小さなプラスチックの竹筒に入った水羊羹をくれる。


「せやなあ、電車の中でも広げられる安心の週刊誌やった。お祖父ちゃんが子どもの頃は100万部ぐらい出てたんや」


「お祖父ちゃん、読んでたん?」


「うん、時どきなあ。手軽に話題を拾うのにはええ週刊誌やったさかいなあ」


 坊主は、檀家参りやら法事の時には、話をせなあかん。檀家さんにもいろんな人が居てはるさかい、薄く広く話ができならあかんのやそうです。


「諦一は、しゃべくりのネタとかは、どこで拾うてくるんや?」


「ああ、市政だよりとか、回覧板とか」


「へえ、意外やなあテイ兄ちゃん(^▽^)。ネットのエロ記事とかやと思てた」


「アホか、檀家さんとこで、さくらに言うようなネタで喋れるか」


「あ、ひどいなあ、うちらにはセクハラの下ネタばっかり言うてたわけか」


「面白がって聞いてるのはダレやねん!?」


「あの、週刊朝日で、印象に残った記事はどんなだったんですか?」


 従兄妹同士のエゲツナイ話になる予感がしたのか、軌道修正を計る留美ちゃん。ええ子や(^_^;)。


「せやなあ……倭寇の置き土産とか」


「倭寇って、海賊の倭寇ですよね」


「うん、倭寇がな、中国の南岸とか朝鮮の海岸沿いとかで仕事した後に残していきよるもんがあってん」


「ああ――倭寇参上!――とかの落書きとかじゃないですか? 暴走族とかの落書きをネットで見たことありますけど、けっこう面白かった!」


 留美ちゃんは、意識的か無意識か話題を合わせようとしてる。ええ子や(^_^;)。


「いや、それがなあ、巨大なウンコやねん」


「ウ、ウ〇コ……(=゚Д゚=)」


「ウン、倭寇が去って、船着き場に行くとなあ、大きなぶっとい大蛇がとぐろ巻いたようなウンコが残っててな。こんなごっついウンコ残すのは、どんなごっつい人間やねん!? と、みんなが恐れおののく!」


「アハハハ」


「なに、それ、お祖父ちゃん(≧∇≦)」


「ワハハ、それがなあ、ふっとい竹筒にみんながひり出したウンコを詰めてなあ、ムニュムニュって押し出してこさえるんやてえ」


「あ、こんなふうにか、お祖父ちゃん!」


 ムニュムニュムニュ!


 テイ兄ちゃんは、竹筒を持って水羊羹を押し出しよった!


「ちょっと、風呂上がりの女の子にするような話じゃありませんよ」


 伯母ちゃんが怒ります。


 うちは、お腹抱えて笑ったんやけど、留美ちゃんは真っ赤な顔して俯くだけでした。




☆・・主な登場人物・・☆


酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生

酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。

酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居

酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父

酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる

酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生

酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 

榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 

夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生

ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉

ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長

月島さやか       さくらの担任の先生

古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン

百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長

女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首

江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  

さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)

  

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