第291話『今日から高校生!』

せやさかい


291『今日から高校生!』さくら     





 今日から高校生!



 企んだわけやないけど、早起きしてお風呂に入る。


 朝の色々で、面白いこともあったんやけど、ここからは入学式。


 

 入学式にはテイ兄ちゃんとおばちゃんが来てくれる。


 お祖父ちゃんとかも来たがってたんやけど、新入生一人につき一人の保護者しか認められへんので仕方がない。



 まずは、昇降口の入り口に貼ってあるクラス表を見る。


「「あった!」」


 留美ちゃんと声が重なる。


「同じクラスだ٩(๑^o^๑)۶!」


 一年に一回するかどうかの笑顔で喜ぶ留美ちゃん!


 中学の時と同じく、前と後ろ(うちの苗字が『酒井』で、留美ちゃんは『榊原』やから)の席。


「え、うそ……」


「え、どないしたん?」


「担任の先生……」


「え……あ!?」


 

 一年B組  担任 月島さやか



 物覚えのええ人は憶えてると思うねんけど、月島さやか先生は、二年の時から担任やってもろてる先生。


 新任で、うちらのクラス持ってくれはった笑顔の素敵な先生。


 その特徴的な笑顔から、生徒からはペコちゃん先生と呼ばれてる。


「同姓同名だよね?」


 先生言うてた――うちの近所は月島が多いの。昔から住んでるから辿っていけば親類なんだけどね――


 先生の家は神社やさかい、当然古い家系で、近所が親類だらけやっても不思議やない。


「先生の『さやか』は漢字やったかなあ……」


 教室で待つこと五分、むろん緊張のしまくり!


「「あ!?」」


 思わず声に出てしもて、教室の注目を浴びてしまう。


 せやかて、入ってきたピンクスーツの担任は、まごうかたなきペコちゃん先生!


「担任の月島です。自己紹介とかは後程にして、入学式についての注意をします」


 めっちゃポーカーフェイスというか、アナ雪のエルサが雪の女王になった時みたいな冷たい顔で、事務的に説明する。


 いよいよ時間になって、廊下に並んだ時も、うちのピースサインも無視して、みんなの服装チェック。


 ひょっとして、パラレルワールドからやってきた中学の先生をやってないペコちゃん先生?



 やがて威風堂々のBG……と思たら吹部の生演奏流れるうちに式場へ。



 やがて、全員が揃ったところで教頭先生のMCで入学式が始まる。


 国歌斉唱から始まるのは、小中学校といっしょやねんけど、校歌斉唱でぶったまげた!


 なんと、伴奏のメインがパイプオルガン!


 おお! なんという荘厳な響き!


 今にも、天使さんに先導されて、聖母マリアさんが天下ってきそうな。


 いっしゅん、阿弥陀来迎図を思い出してみたけど、阿弥陀さんには合いません。


 理事長、校長先生始め主だった先生がウィンプル被った修道女姿いうのんも感激!


 仏教界で、こういう場面に耐えられるのんは、去年、お亡くなりになった瀬戸内寂聴さんくらい。



 で、式は進んで担任紹介。



「B組担任、月島さやか。本日4月1日付で、堺市立安泰中学からの転職……」


 MCの教頭先生の解説で、ホンマモンのペコちゃん先生やということが判明!


 なんや、胸がサワサワしてきたとこで、生徒会長の挨拶。


「あ、百武真鈴!?」


 紹介は、生徒会長田中真央やったけど、頼子先輩から話を聞いてたうちと留美ちゃんは、田中真央が『恋するマネキン』の人気声優やということを知ってる。


「さくら、くち、くち!」


 留美ちゃんに注意される。ビックリしたうちは、口を半開きにしたままでした(^_^;)。


 さすがは百武真鈴。きれいな声と読み方やったけど、声優らしさは感じさせへんかった。


 生徒の中には気ぃついてる子ぉも居てると思うねんけど、うちみたいに口を半開きにしてるアホは居てませんでした。



「さくら! 留美! 入学おめでとう!」



 式が終わってピロティーに出ると、我が先輩、頼子さんがお日様みたいな笑顔で待ち構えていてくれました。


 一歩下がったとこには、ガード兼ご学友のソフィーもニコニコの笑顔。


 ソフィーって、ご学友モードでは、こんなフレンドリーな表情するんや!


 いっぱい発見したりビックリしたり。


 ペコちゃん先生のことは、まだ謎やったけど、目くるめく驚きのうちに、酒井さくらの高校生活が始まった!



☆ なんとか、さくらの中学時代を終えて、高校時代に突入することができました。根気よく付き合ってくださった読者のみなさんのお蔭です、ありがとうございます。まだまだ未熟な物語ですが、これからも、読んでいただければ嬉しいです。


                  大橋 むつお 


 

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