第288話『今日もパシャリ!』

せやさかい


288『今日もパシャリ!』   





「「おお!」」



 如来寺のテイ兄ちゃんから送られてきた写真を見て感激ひとしおのわたしとソフィー。


 昨日の朝、テイ兄ちゃんから『制服撮影ナウ!』というメールが来た。


 添付の写真は、三分咲きの桜を背景に後輩二人の新制服姿。


 これは如来寺の境内だ!


―― わたしも行きます! ――


 直ぐにメールを打って、ソフィーと共に如来寺へ!


 もちろんクリーニングあがったばかりの制服持って。むろんソフィーにも制服持って来させる!


「あ、そういう手があったか!」


 着いてみると、さくらも留美ちゃんも中学の制服も着て、ビフォーアフターを撮っているじゃないの!


「あ、高校の写真しか送ってなかったなあ!」


「もう、分かってたら中学のも持ってきたのに!」


「あ、じゃあ、わたしの着てみます?」


「え、いいんですか!?」


 サイズを見ると、わたしと同じ〇号サイズ!



「……よし! じゃあ、お願いします!」



 中学の制服でパシャリ!


 さくらと留美ちゃんも並んでパシャリ!


 高校の制服でパシャリ!


 三人、高校の制服でパシャリ!


「あ、ソフイーさんも!」


 留美ちゃんが叫んで、ソフィーも制服姿でパシャリ!


 五人揃ってパシャリ!


「もう一回、みんなで撮ろ!」


 テイ兄ちゃんが手を挙げて、みんなで撮ったり、組み合わせを変えたり、気が付いたら百枚ほど撮ってしまった(^_^;)


 

 で、その写真が、全部送られてきたんだけど。



 そのうちの一枚がねスゴイの!


―― 矢印をクリックしてね♡ ――


 そう書いてあるので、ポチ! 


 なんと、中学の制服姿のわたしがね、ゆっくりと高校の制服に変わっていくんだよ!


 文芸部三人で並んだ写真もね、まず、わたしが高校の制服になって、しばらくして二人が高校の制服に!


 ソフィーは……来日した時には、もう高校生だから、まんま。


 ちょっと詰まらなさそうにしてるけど、これは仕方がありません。


「でも、殿下の中学の制服は……」


 遠慮した物言いだけど、ハッとした。


「そうだよ、詩(ことは)さんの借り物だ……」


―― すみません、もう一回撮ってくださいm(_ _)m ――



 まあ、春休みだからできることなんだけど、今日も朝になるのを待って如来寺へ。



「あ、あれえ?」


「「頼子先輩!?」」


 中学の制服に着替えると、わたしも、さくらたちもビックリ!


「お、おお……!」


 テイ兄ちゃんも顔を赤くしてビックリ!


 なんと、胸がキツイ……


 昨日はぴったりだったのに……?


「アハハ、まあ、そういうことなんだ(^_^;)」


 詩さんが鼻を掻く。


「つまり、殿下の胸が発育したということです。で、詩さんは、中学の時にすでに、そのレベルに達しておられたということです」


 ジイイイ……


 みんなの視線が詩さんに向く。


「あ、わたしね、中三の春に制服買い直したから」


 なるほど、中三の春には、この発育ぶり!


「あ、いや、カギ裂き作っちゃって、上だけ買い換えたのよ(^_^;)」


 って、結局は発育してらっしゃったってことなんですけど。


「え? え? やだあ、もう、どうでもいいでしょ(#^0^#)!」


 賑やかなうちにあやふやにして、みんなで、お茶会。


「あ、もう四分咲きですよ」


 ソフイーが指差した桜は、確かに昨日よりも沢山花をつけている。


「なんだか、急かされてるみたいだね」


「よし、みんな、がんばろう!」


「「「「おお!」」」」


 お茶をお替りして、みんなで、また乾杯。


 テイ兄ちゃんは檀家周りがあるので中座。代わりにさくらがスマホで写真を撮りまくり。


「あ、そうやったんや!」


 写真に飽きて、さくらが叫ぶ。


「さて、みなさん。今日は何の日ぃでしょうか!?」


 スマホを隠しながら、みんなに質問。


 いろいろスカタンな答えの後に、さくらが、嬉しそうに正解を言う。


「敦ちゃんが、卒業して、ちょうど10年になりました!」


 ええ!?


 みんなビックリ。


 


 そうだよ、わたし、小学校に入ったばかりのころだよ。


「うち、保育所やった!」


「わたしも」


「わたし、三年生かな?」


「アッチャンて、誰ですか?」


 ソフィー一人が分からない。


 それで、みんなでAKBのあれこれをピーチクパーチク。


 ソフィーも今のAKBは分かるので、大いに盛り上がる。




 ひところよりも日が長くなったので、6時前まで、AKBのことやら、昔の事で盛り上がった。


 領事館に帰ると、テイ兄ちゃんからメール。


―― ソフィーの分も作りました ――


 え、どういうこと?


 開いてみると、桜の下に、黒っぽいワンピースのソフィー……あ、エディンバラに居た頃のソフィーだ。


 ソフィーは、先祖代々王室付きの魔法使いの家系なので、公務中は魔法学校の制服めいたのを着ている。


 ああ……思い出した。


 二年前、みんなでエディンバラに行った時、エディンバラ城で、こんなの撮った。


 そうか、ソフィーのとこだけ抜いてハメ込んで、昨日の写真に繋げたんだ。


―― 感動したら、もう一回クリックしよう! ――


 え、なんだろ?


 で、クリックすると……おお!


 ゆっくりと、桜の花びらが散りつつ、カメラが引いて行かれ、わたし、さくら、留美ちゃん、詩さんが同じ制服姿で現れて、まるで仲良し姉妹の集合写真のようになっていく。


 ―― よし、みんな、がんばろう! ――


 昨日のわたしの言葉が滲みだしてくる。


 そして、しばらくすると、言葉は無数の花びらになって散っていく。


 テイ兄ちゃんは、ITオタクだとは思っていたけど、なかなか大したものよ。


―― ソフィーの番号分からないので、頼子さんから送ってあげてください ――


 よし、すぐに転送するぞ。


 ポチ


 クリックして三分待って、図書室に行く。


 この時間は、当番明けで、ここで勉強してるはず。


 見えた。


 書架の陰に隠れた席でニヤニヤしている。


 直接見たら気づかれるので、壁の鏡に映っているソフィーを見る。


 でも、さすがにわたしのガード、直ぐに鏡越しに目が合って、怖い顔。


 写真撮ってやろうと思ったら、気配に気づかれて、もう一つ怖い顔をされた。


 

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