第287話『制服が届いた!』

せやさかい


287『制服が届いた!』   





 ピンポ~ン……宅配便です



 ドアホンの声にあたしも留美ちゃんもハンコを持ってダッシュ!


 境内の花の世話をしてたおばちゃんに「アハハ」と笑われる。


「今朝の宅配は、うちらが直に受け取るよってに、よろしくね!」


 と言ってあるので、おばちゃんは、山門の前の宅配車に気ぃついてても知らんふりしてくれてたんや。


「どうも、ごくろうさまでした!」


 普段よりも気合いの入った挨拶で荷物を受けとってハンコを捺す。


「さっそく、やるでえ!」


「うん!」


 荷物抱えて自分らの部屋へ向かう。


 リビングにはお祖父ちゃんが出てきてニコニコしてる。


 アハハ エヘヘの愛想笑いを残して、自分らの部屋へ。


 箱を開けるとパラフィン紙があって、それをソロリとめくると……出てきた。



 真っ新な制服! 聖真理愛学院の真っ新な制服が!



「並べてみよ!」


 留美ちゃんが、らしからぬ大きい声で宣言。「うん!」と負けん声で返事して、それぞれのベッドの壁に架けてみる。


 横には、お片付けの時から吊ってある安泰中学の制服。


 三年前、ガバガバやと思てた制服が、新しい制服と並ぶと、ワンサイズ小さい。


「なんか、感無量だね……」


「うん、せやなあ……」


 うちも留美ちゃんも、中学のうちに実質的に親のおらん子になってしもた。


 並の中学生の何倍も劇的な三年間やった。


 幸い、人に恵まれて、こうやって新旧の制服並べてシミジミしてられる。


 思わず感謝のナマンダブが出てきそうやけど、檀家のおばあちゃんらみたいなんで、やめとく。


「写真撮ろうか」


「うん」


 スマホを出して、新旧並んだ制服をパシャリ。


「ねえ、どうせやったら、着てみて撮らへん!?」


「あ、いいわね、やろやろ!」


 最初に中学の制服、次に高校の制服を着て、お互いの写真を撮る。



「うわあ、制服できたんだ!」


 開けといたドアから詩(ことは)ちゃんが顔を出す。



 アハハハハ(〃´∪`〃)(n*´ω`*n)と二人で照れる。


「ねえ、詩ちゃんもやろうや!」


「え、あたしも!?」


 ビックリする詩ちゃん。


 ハタハタと手ぇ振るけど、まんざらでもないのは分かってる。



「わあ、中学のんも残してたんやね!」


「あ、うん……なんだかタイミング失っちゃってね(^_^;)」


「「それでは!」」


 ということで、何年かぶりのJCコトハとJKコトハの撮影会。


 ウフフ アハハ アラ~ モウヤダァ キャハハ


 女子三人でいちびってると、いくら広いお寺でも下の階まで声が響く。


「なにやってんねん……おお!」


 テイ兄ちゃんが上がってきて、ビックリするやら面白がるやら。


 そのうち、お祖父ちゃんもおばちゃんも上がってきて、なんか七五三のお祝いみたいになってきた(^_^;)。



「せや、もっと、きちんと撮ろうぜ!」



 テイ兄ちゃんのイチビリで、三人そろって境内に出る。


 名残の梅と四分咲きの桜。これも新旧めいてて面白い。


 それを背景に、テイ兄ちゃんのプロカメラでパシャリパシャリ!


 そのうち、おっちゃんが檀家周りから帰ってきて「いっそ、記念撮影にしよ!」ということになって、椅子を持ち出して、みんなで家族撮影になった。


 ダミアが「寄せてえなあ」という感じで寄って来るけど、おニューの制服に毛ぇつけられてはあなわんので邪険にしてやる。


「よしよし、わたしが抱っこしてやろう」


 詩ちゃんが高校の制服で抱っこ。


 パシャリ


「うわあ、王女様のかんろく!」


「あ、そういや、ダミアの種類ってマリーアントワネットの飼い猫だったわね」


 せやせや、拾てきた当時は、そんなん言うて喜んでた。


「そうだ、王女さまってば、頼子さん!」


「せや! 頼子さんも呼んだげなら!」


 テイ兄ちゃんのハートに火が付いてしまう。



 蔓延防止規制も解除になったとこなんで、ニ十分後には頼子さんもソフィーを引き連れてやってくる。



「ほらほら、ソフィーも!」


「自分はガードですから」


 ポーカーフェイスで断るソフィーの目の前に、ジョン・スミスがズイっと紙袋を差し出す。


「え?」


「ソフィーの制服だ」


「い、いつの間に!?」


「プリンセスのガードは臨機応変でなければならないのだ」


 

 あたしと留美ちゃんの、ささやかな記念撮影は一時間もたたんうちにお祭り騒ぎ。


 昼前には三年ぶりの『灌仏会 お花まつり』の打合せに来た婦人会のお婆ちゃんらもいっしょになって、ほんまに楽しい一日になりました。


 

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