第227話『オリンピックのち台風』

せやさかい・227


『オリンピックのち台風』さくら      






 オリンピックも感動のちに閉会式!


 むろん、如来寺(うちの家)のみんなもリビングで揃って観たよ。


「正直、生きてるうちに日本のオリンピックが見られるとは思わへんかったなあ……」


 お祖父ちゃんは感動の面持ちで缶ビールをグイグイ。


「みんなでオリンピック見るっていいですね……」


 シンミリしてるんは留美ちゃん。


 うちもいっしょや。


 一人っ子で、親は遅くまで仕事。面白いテレビとか見て「おもしろい!」「感動する!」とか思ても、番組が終わったり、CMに変わった時の寂しさはハンパやなかった。


 家族そろって、みんなでオリンピック。


 お祖父ちゃん おっちゃん おばちゃん テイ兄ちゃん 詩(ことは)ちゃん さくら(うち) 留美ちゃん


 ダミア(ブタネコ)


 金メダル獲った瞬間「やったー!」と七人と一匹で感動すると、感動も七倍! 七十倍! 七百倍かも!


「じぶんらは、もう一回は日本のオリンピック見られるやろなあ」


 お祖父ちゃんは、そう言うと、飲み干した空き缶を抱えて出ていく。


 申し合わせたわけやないけど、みんなも、それぞれ、台所に行ったり、お風呂に向かったり、自分の部屋に行ったり。


 うちは、とたんにもよおしてきてお手洗い。




 スッキリして部屋に戻ろ思たら、仏間に灯り。




 覗いてみると、お祖父ちゃんが手を合わせてる。


 年季の入った坊主やさかい、仏壇に手ぇ合わせてる姿は実に様になる。


 ナマンダブナマンダブ……


 あれ?


 いつもとちゃうと思たら、経机の上にお祖母ちゃんの写真。


 お祖母ちゃんは、うちが物心ついた時には亡くなってたさかい、よう知らん。


 知らんけども、さっき、みんなでオリンピック観たとこや。


 ひょっとしたら、前の東京オリンピックにはお祖母ちゃんとの思い出があるんかもしれへんなあ……。




 今夜は、留美ちゃんとシミジミ語り合おうかなあと自分の部屋へ。


 あ……


 部屋から灯りが漏れてる。


 部屋は留美ちゃんと共用やさかいに、留美ちゃんが先に戻ってるんや。


 襖開けて、語り合おうと思たら、机に向かって宿題をやってる留美ちゃん。


「せや、うちもやろか」


 並んで机に向かったら、シミジミ語るきっかけも……あれへんかった(^_^;)


 留美ちゃんの集中力というか自制心は大したもんや。


 おかげで、うちも休み中に宿題はぜんぶできそう(^^)v




 せや、朝顔、プランターに移しかえならあかん。


 二時間後、そう思て眠りにつく。




 起きてみると、朝から大阪府には暴風雨警報。


 台風10号やったっけ?


 朝顔の移し替えどころか、お散歩にも行かれへん。


「近所の散歩くらいなら行けそうだけどね」


 ポツリと留美ちゃん。


 たしかに、表は風どころか晴れ間の覘くええ天気。天気予報では『しだいに雨風が強くなるでしょう』とベッピンの気象予報士さんが眉を顰める。


 三十分くらいの散歩はノープロブレムやろけど、家の者に心配はかけられへんと思てる。


 ええ子やなあ。


 へプシ!


 感動したらクシャミ……といっしょにオナラが出る。


 スマホで『hepushi』と打ったら『屁プシ』と出てきた。


 なるほどなあ(^_^;)


 


 


 

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