第225話『寝過ごした!』

せやさかい・225


『寝過ごした!』さくら      





 秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども  風の音にぞ おどろかれぬる~




 テレビの女子アナが涼し気に言うたはります。


 秋が来たとはっきりとはわからへんけども、風が吹いて来て(あ、秋や!)とビックリすることであるよ(^▽^)/


 てな意味らしい。


 らしいと言うのは、食卓で、ボーーっとテレビ見てたら、テイ兄ちゃんが問わず語りに言うた呟きやから。




 今朝は寝過ごしてしもて、詩(ことは)ちゃんも留美ちゃんもおらへん。


 二人とも、とっくに朝顔の水やりも済ませて、自転車で散歩に出てしもてる。


『暦の上では、今日から秋です。 これを立秋といって……』


 生まれてこのかた笑顔以外の表情はしたことありません……という感じで続けはります。




 そうか、今日から秋なんや。




 今からでも遅ない、うちも散歩に行くぞ!


 サイクルコンピューターのボタンを押して数値が0になってるのを確認する。


 サイクルコンピューターは、毎回0にしとかんと、昨日の続きから加算していきよる。


 総走行距離はええねんけど、時間やら、その日の走行距離は加算されては、なんぼ走ったか分からんようになるとテイ兄ちゃんが教えてくれて、うちには珍しく三日たっても憶えてる。


 よし!


 指さし確認して出発!


 

 初日は、習慣的に学校の前まで行ってしもて、昨日は郵便ポストの前で原爆の投下時間になって手を合わせた。


 そこへ行くまでの道の八割がたはいっしょやさかいに、まあ、どこかで出会うやろ。


 立秋かと思うと、頬をなぶる風も、こころなしか涼しい。


 よし、ここを曲がったら詩ちゃんと留美ちゃんが居てる!


 勘は外れて、朝の道路に人影は無い。


 時間は……サイクルコンピューターを見ると8:10。


 え、なんで人も車もおらへんねやろ?


 夏休みやさかい、子どもが見えへん。せやろな。こんな朝から散歩にいこかいうやつはめったにおらへん。


 通勤の大人の人らは? 幼稚園の送迎バスて、この時間は、まだ早かった?


 とにかく人が居てへん。


 ひょっとして、異世界とかに入り込んでしもた(;゚Д゚)? レベル1の冒険者になって、どこぞのギルド探して冒険の旅に出ならあかんとか?


 夕べは、遅くまで詰まってたRPGをコンプするまでやってた。


 その祟りか?


 思てたら、子供会の廃品回収の山が見えてきた。


 あ、今日は土曜日か!?


 子供会の廃品回収は土曜日やさかいに思い出した。


 そうか、世間は休みや。


 そう思い出すと、ほとんどがら空きの道が嬉しなってくる。


 もう立秋やし、ちょっとぐらいスピード出してもええよね(^▽^)/


 グングン


 ペダルを踏み込むと速度表示が、あっという間に20キロを超える。


 おし!


 風を切って国道に出る。


 さすがに車走ってるし、ツーリングの自転車で走ってる人も居てる。


 自転車用レーンもあるし、グングンと堺東まで走ってしもた!


 なんちゅうても立秋や!




 四十分も走って家に帰る。


「さくらちゃん、すごい汗!」


 留美ちゃんが目を剥いて、詩ちゃんとテイ兄ちゃんが大笑い。


「せやかて、今日は立秋やさかい(;'∀')」


 アハハハハ


 リビングのみんなが笑います。


 ワア!


 なんの歓声かと思たら、テレビで女子マラソンの実況中継。


 そうか、今日は北海道で女子マラソンの日ぃやったんや。


「マラソン見るんやったら、シャワー浴びといでや」


 ソファーに座ろうとしたらテイ兄ちゃんに突っ込まれる。


 ちょうど廊下にブタネコのダミアがおったんで、いっしょにシャワーしよ思たら、迷惑そうな目ぇされて逃げられてしまいました。


 日本がんばれ!


 


 


 

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